第一章の7
7
餃子連盟の広報部長宮田たちが遅れて駆けつけた。
遅れたというより、あまりにも早く竜夫が敵を倒しすぎたのだ。援軍(すけっと)の役にはまにあわなかった――。
「ここを前線基地にする」
麗子の「マロニエ」の隣が空き店舗になっていた。
午後になった。宮田の指示で、大工がやってきた。
薄い板壁を剥いだ。フラッシュドアをとりつけた。
「こうしておけば、電話はマロニエと共有できる」
それに、マロニエが餃子連盟の支部だとわかれば、西のヤツらもむやみにおそってはこないだろう。そんなことをすれば、正面切って戦いとなる。アイツらをけん制する意味もある。これ以上、ここのママがイタブラサレルのをみているわけにはいかないからな。
宮田は徹底抗戦のかまえだ。
「餃子をおつまみに置いてくれている店を、ターゲットにしてイヤガラセされて、だまっていたのでは、宇都宮餃子連盟のメンツはまるつぶれだ」
いままでも、西のヤクザとはモメテいた。
「餃子はやめて、タコ焼きを、おつまみとして店に置け」というのだ。
タコ焼きがらみの、いやがらせ。タコだからカラミツクのが得意技なのだろう。でも、イヤガラセを受ける側は自衛手段をこうじなければ――。
「イヤガラセにあったらすぐここにテレするように餃子店だけではなく、スナック各店舗に連絡したからな。さあ、いそがしくなるぞ」
宮田が宣言した。タコ焼き屋と戦う。ヤルキ満々の発言をして帰って行った。
西那須野に遷都の計画がある。地元の国会議員。国土交通省大臣の渡瀬國臣もいる。渡瀬は議員生命をかけて国会を那須にもってくと確約している。東京を大地震が襲うとさわがれているいまこそ、絶好のチャンスなのだ。まちがいなく遷都だ。土地のものは、そう信じている。景気はやっと不況を脱しつつあるようだ。でも宇都宮ではまだ不況の波をかぶったままだ。駅前のララスクエアは出店した店が撤退してなんどもいれかわっている。新世紀になってから暗い話ばかりだ。
アベノミックスでその不況も変化の兆しがみえる。新三本の矢――地方創成でだいぶ活気づいてきた。
宇都宮の夜を制するというポリシーで、全国制覇の野望にもえる関西タコ焼き連合が進出してから、争いがたえない。それをコシ抱きしているのが夙川組だ。
宇都宮を制する。首都機能が那須に移ってきたら、遷都が実現すれば、宇都宮の繁華街が歌舞伎町を凌ぐ不夜城、になるのは、だれの目にも明らかだ。大変な事に成る。地価はまちがいなく上がる。駅東ははるかに西那須野に連なっている。西の駅前とちがい、地価高騰の風評がいりみだれ、景気は刺激されている。ここだけは、この地域だけは景気はV字回復している。
「麗子ママは疲れている、竜ちゃん二階につれてってあげたら」
メグが気をきかす。
気をきかしたわけではない。
竜夫の男根のふくらみが気になって……。
頭が白くかすむ。
もう、もう、いや、2階にいったら。すこしヤケルけど。
「うれしかった。ボウヤにおれの女なんていわれて」
敷きっぱなしの夜具にもつれこむ。
「わたしの男、うちの人といえる男には、出あわなかった。だから、うれしかった。おれの女に手をだすな。あれよかったな……」
「これからがたいへんだ」
と竜夫は話題をそらす。
麗子のことばかりかんがえて、寂しい夜を過ごしてきた。もうわかれたくない。ホステスと客という出会いだった。はじめからセックスをした。でもそのあとから……恋がめばえた。遅い春。竜夫の初恋だ。竜夫の初めての女だ。
前のホテルがタコ焼き連合の本部なのだから。と脅かす。ともかく毎月のメカジキ料を払わない。それだけで、ヤクを打って、輪姦されているのだ。危うく、薬づけにされるとこだった。タコ焼き連合が西のヤクザとくんでいることははっきりした。タコ焼き連合がヤクザのダミーなのだ。企業舎弟。ブラック企業だ。
どこか、もっと安全な場所にマロニエを移したら。引っ越したら、と竜夫は忠告する。
「なにさ、ボウヤにここに越してきてもらうから」
それもいいかな。と竜夫は密かに同意している。
麗子は狭いながらも、やっともてた店だ。タコ焼き屋の尖兵にどんないやがらせをうけても「マロニエ」は守りとおす気だ。この店を手ばなしたくない。
ママと呼ばれるようになった。もうほかの店にはホステスとして出たくない。ママの地位を守りたい。
こうなったら、女の意地にかけても、店のノレンは守りぬく。
ママでありつづけたいのだ。だから、この店は手放さない。
竜夫は麗子の肉の花びらを舌でそよがせた。唇でなぶる。女陰は、餃子のようだ。かわいくて、おいしくて、たまらない。いくらでも、たべていたい。
肉の芽がふくらむ。そのとんがりに舌先をあてて強く吸う。
あっいい、それ、いい、ボウヤいろんなことおぼえた……のね。
麗子はあえぎなから竜夫のものに手をのばす。
その腕には紫色のしこりがいくつもできていた。死斑のように見えた。こんなにまでされて、店を死守していた。その店への執着が、ママと呼ばれつづけたいという願いが麗子にこの店を毎晩開かせてる。
「麗子さん、やせましたね」
「麗子ってよんで」
「麗子、麗子」
「あっ、ああい、い、いっ」
「もう、クスリはうつなよ、麗子」
黒々とした。腕のこわばり。注射のあと。さっきから、気になっていたことを口にだす。
「心配してくれるんだ」
「ちゃかさないで、ヤクをやめるんだ。」
「ごめんね、竜っちゃん。タコ焼き屋とのいざこざに巻き込んで」
「返事きいてないよ」
「なにさ、なにしているの、おねがい、じらさないで」
「返事、きいてない」
「やめるわ、もうヤクなんか、やらないから……竜夫のほうがいい……あっだめぇ」
ふくらみきった亀頭が膣の襞をこすりながらブスっと埋めこまれる。快感に麗子の声が上ずっている。
麗子の目の縁には黒い陰りがはりついている。
青白くやつれた麗子を竜夫はきつく抱きしめていた。
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