第一章の6

 

 竜夫たちが「マロニエ」にもどってから数分たった。

「ソンしたわ。スケット呼んで。スケットなんかいらないほど中藤さんは強かったのよ」

 マロニエのカウンター。

 水割りを飲んでいる竜夫にメグがからむ。

 麗子はカウンターの中。まだ顔が青ざめている。

 メコンが、かいがいしく水割りを作っている。

 メグは麗子にえんりょしている。竜夫をファーストネームでは呼ばない。

「ナイフもってなかったのに。あいつの腕、なにで切ったのよ」

「企業秘密でース」

 ナイフをもっていた。タコ男の落としたバタフライナイフを手のなかに潜ませていた。

「竜夫さんがつよいのはアレだけじゃないのね」

 麗子もカウンターのなかから声をかける。竜夫がメグにあまりモテルので、麗子も竜夫との親密さを誇示した発言だ。さきほどまでの、青ざめた顔に生気がもどっている。

「さあて、なんのことかな」

「あの黒の手袋に秘密があるんでしょう」

 敵のナイフを奪って使ったとは明かさなかった。

 竜夫はグローブをメグにわたす。

 いくらしらべてもなにもない。

 どこにでもある皮手袋だ。

「中藤さん、あんた、どういう人……」

 メグがからんでくる。

「それは麗子ママにきいたら……」

 麗子にはみえない。

 メグが竜夫の股間に手をのばす。

 闘争のあとだ。

 興奮している。

 股間のふくらみ。

 すごい。

 触れさせる。

 そこだけは、節操がない。

 女にふれられれば、いつでも、モツコリ、臨戦態勢となる。

「バアーカ。わたしが知りたいのは……、中藤さんじなくて、いつでも立ってる竜ちゃんの中足、男根、ヂャン。頭のなかまではワカンナイもん」

 メグがママには内密で竜夫のものをさすっている。

 声がすこしうわずっている。だが……ささやき声だ。

 ママヘの遠慮がある。

 竜夫とはまだエッチしてない。

「だてに、童貞守っていたわけじゃない」

 竜夫はそしらぬ顔。

 麗子に微笑む。

「古武道中藤流の師範、なんだ。おやじが」

 だがそれがどういう秘技を習得する武道なのかはメグに語らない。すぐにたあいもないHな話がはずむ。メコンが竜夫におかわりをつくる。ドァが開いた。麗子がカウンターからでてくる気配だ。メグの手がなかばまで開けていたチャックを、音をしのばせて上にあげる。元にもどした。


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