第一章の4
4
メグから、連絡があったのは、つぎの土曜日だった。
「麗子さんみつけたわよ。ゴホウビにTボンステーキでもごちそうしてよ」
メグがデートの場所として指定したのは、JR駅裏。ホテルKOBE。レストラン。『六甲』。一昔前のように駅裏とよぶには抵抗がある。開発されていた。毎年コンクリートの巨大な墓石のようなビルが建つ。このホテルKOBEのとなりが『夙川ビル』だ。関西系のネーミングのビルが群立するということは、資本があちらなのだろう。大阪からもどってきた竜夫にはピンとくる名前はかりだ。
醜悪な高層ビルの乱立をしかし、市民は都市化現象と歓迎する。雑木林を切開き舗道を造成し、あとになっておざなりにの街路樹を植える。こんなことを、もう半世紀以上もつづけている。街の緑化キャンペーンだという。そこへきて、厚労省大臣渡瀬國臣が宇都宮を地盤としている。那須を新首都圏にとPRしているので都市化に拍車がかかっている。
首都圏移転もありかな。と、市民はウワサしている。
竜夫には、街が関西や東京の資本にレイプされているとしかおもえない。
「宵の口からいいのかよ」
「バーカ、そういうことじゃないの」
食事がすむ。メグに部屋に誘われた。さらに、窓辺に誘われる。いま輝きだした夜のネオンをあびて、道の真向こうに飲み屋街があった。プレハブらしい二階建ての長屋だ。屋根に『酔族館』とネオンの看板がかかげてある。
「右から三軒目の『マロニエ』にいるわ。あの店のママが麗子さん。でもね、すこしおかしいのよ」
マロニエは栃の木。だから県花に選ばれていた。知名度が島根県と最下位を争ったので県名を日光県とかえてしまったいまでも、県庁通りに鬱蒼とした見事なマロニエ並木があるのは古き県名のなごりだ。まさかマロニエの木まで植えかえるわけにはいかない。竜夫は記者らしい解説をじぶんでしながらたどりついた。だから、マロニエという店名の店がおおい。
どこにでもある、いかにもパブらしい木の扉。
扉にマロニエとプラスチックの看板がかかっている。
竜夫は胸をときめかせて扉をおした。
どこもおかしなところはない。どこにでもある、ありふれたスナックだ。
「いらっしゃい」
5人もならべば満席となるカウンターから、「いらしゃい」と定番の声がかかった。麗子ではなかった。
「ママなの?」
「ワタシはチンママ」
かすかな、外人訛りがかわいい。
「それいうなら、チイママだろう」
「はいってくるなりなによ。メコンにごちそうしてくれなければ、教えてあげないわ」
「メコンちゃん、お客さん困らせないで」
厨房から簾をわけて女があらわれた。
わすれもしない、麗子だった。前髪がすこし乱れてひたいにかかり頬骨が高くなった感じだ。すこしやつれていた。
「もしかして、ボウヤなの」
「ニーヨークはなくなっていた」
竜夫は恨みごとをいった。
「なにさ、携帯もいれてくれないで」
「大阪と宇都宮の距離は安サラリーの身には遠すぎた」
麗子の声をきけば、会いにきたくなる。東海道、東北と新幹線を乗り継つぐほどの金に余裕はない。それで、ただひたすら、がまんした。会いたい。会いたいと悶々とした日を過ごしていた。
「わたしも、金に恨みがある。サラ金の返済ができないで、東京に逃げていたの。もどってきてから、まだ半年なのよ」
麗子の顔をみたらうれしくて、すこし眩い。恥ずかしい。
「ぼくは、2年ぶりで、また宇都宮勤務になったので……挨拶しょうと……」
「あら……わたしのどこにアイサツしてくれるの」
小声でささやく。
二階に竜夫は誘われた。麗子はさっさと裸になる。フトンが敷きっ放しにしてあった。
甘酸っぱい、麗子のセクシーなにおいがフトンにはしみこんでいた。
「なによ、はやく脱ぎなさいよ。その気できたんでしょう」
麗子は肉がおちていた。下腹部の肉がたるんで、深い横皺がなんぼんもできていた。顔よりも体のほうがやせほそっていた。
肌が荒れている。二の腕に青い痣がある。
竜夫は見ないことにした。メグがなにかへんだ、といっていたのは、このことなのだろう。からだに精気がない。
麗子は背をむけた。まえから、ジロジロやつれた肉のたるみをみられるのをきらったのだろう。背中を向けたまま竜夫またいだ。
「こうすると……タッチャンのコレよくみえるものね」
前技なし。はやくも、起立した男根をにぎってしごきだした。背中をまるめて、顔をふせ、肉筒をスポット口に含む。
「ああ、これよ。これ、なつかしいわ、あいたかった」
真っ白な尻がゆれる。
ビンビンにボッキした男根。にぎって膣口にあてがう。
尻が下がってくる。肉球のあいまに竜夫の幹がうめこまれるのがみえる。
彼女の秘部はまだうるおっていない。こそばゆい。きしむような感じ。
きつい、さざ波のようにくりかえすしめ具合がたまらなくなつかしい。
この膣がおれを男にしてくれた。
あのときのめくるめく快感。
いまもこのぼくはおぼえている。
「あっ、やっぱりふとい。ボウヤのって……ずぶといわ」
背中をみせたまま麗子がいう。声がふるえている。
「ながい。ながすぎるぅ」
くるりと、男根を膣にくわえたまま、からだを回転させる。
「あっ、しばらくぶり」
麗子と竜夫の顔があった。
「会いたかったよ」
「わたし、覚えてた。ボウヤのこれ、忘れられなかった」
それで、よくみたくて、後ろ向きで挿入したということらしい。
「やりたかったよ。麗子さんと」
「麗子でいいわ。あっ、まだ……おおきくなってる。……これ、欲しかった。欲しかった。おくまでとどくのよ。あんたの……」
おおきすぎる……」
麗子は挿人感をむさぼる。なんども竜夫をぬきだすと、またいれる。そのつど、うるおいがましてくる。ヌラッとはいるようになってきた。麗子は、まだはいってくる。はいってくる、とよがりながら泣き出した。
竜夫がうごきだした。
両手を乳房にのばす。
はりがなくなっていた。
悲しかった。無性に寂しかった。
ぐっと握るとはねかえされるような弾力があったのに。
だがふっくらとしている。大きめの乳首を指でもてあそぶ。
腰をゆったりとつきあげる。
麗子はわけのわからない呻き声をあげながら尻をうねらせた。
くわえこんだ男根を味わいながら腰をピコピコそらせる。
ああ、この膣のしまり具合。
ぬらぬらのきゅうくつな肉のヒダの秘洞。
肉の穴。だんだん感覚表現が卑猥になる。
イイキモチだ。ああ、麗子とやりたかった。
おれのはじめての女。
いつのまにか、人称がかわっている。荒々しい行為をすると《俺》になる。おれに性のよろこび、快感を教えてくれたかわいい女。
「あっ、ボウヤ、ボウヤ。ホシイ。ホシイ。ホシカッタよ。タツオ……いく、いくわ、いいいい。もうだめ。あっあああ」
竜夫は童貞をささげたときのようにこうふんした。
男根をはげしく抽送する。肉壁がこきざみに痙攣した。
竜夫はぐんとのぼりつめた。
根元のあたりから精液がのぼってくるのがわかった。
すごい快感だ。そのまま筒先にきて熱い粘液がいっきにはぜた。
びくびくっとなんども射精した。放出してもかたく膨張したままだ。
なんどでもまだまだつき入れることができる。
麗子の快美をうったえる声がとぎれとぎれにつづく。
膣がぐっとひきしまった。……ふいに弛緩した。
麗子は絶叫してはてた。
竜夫はまだ精液を膣の奥にうちこんでいた。
「もう、ウブナ、ボウヤじゃないわね。タッチャン、すごくうまくなった。わたし、もうかなわない」
「麗子さんの教育がよかったから」
「天性のものよ」
麗子もさもなつかしそうにまだ萎えていない男根を手でささえてほほをよせてきた。……だが前の麗子とどこかちがう。
どこがちがうのかはっきりとはいえない。
男根によせたほほからは、肉がこそげおちていた。
その横顔を見ていてなにか妙な違和感を覚えた。
乳房や下腹部の肉のたるみはさらにひどい。
はりがあり艶やかな肌だったのに。哀れだった。どうなっているのだ。
「どうして、もっと早く帰ってこなかったのよ」
麗子が恨みがましくぼそりといった。
不意に下の店でもののこわれる音がした。
メコンがなにか叫んでいる。
言葉にはならないが、なにかトラブル発生を、その声は告げている。
余韻をたのしんでいた麗子がとびおきた。
「タコ焼き屋の押し売りよ。わたしがお店にタコ焼きおかないから、いやがらせ、されてるの。アイツラ西のヤクザよ。逃げて、タッチャン……からまれたら、悪いもん」
西のヤクザだからといって、ビビる、竜夫ではない。でも、ぼくが顔をだせば、ことを荒立ててしまう。
「どうしてタコ焼を置かないんだ」
おら、おら、おら。
おかしなアクセントだ。怒号をあげてメコンを脅している。
竜夫は麗子の誘導にすなおに従った。
裏口の非常階段をおりた。
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