独り冬夏に有りて、青々たり 4
「……紐?」
「紐」
今まで貰ったことのないプレゼントに、獅子屋も反応に困っているようだ。
千尋はイタズラを成功させた子供みたいに笑いながら、もう一本紐を取り出した。
獅子屋のものは朱色をメインにした紐で、千尋のものは紺色をメインにしている。
ファスナーのような模様が特徴的で、目が細かい。
「真田紐って言うんだ。戦国時代に真田家が刀の柄とかに巻いて使っていたらしいよ。櫛田さんから袴にするって連絡あったから、これで襷がけに出来ないかなと思って」
「……へー、袴」
「お前、ライン読んでないんだろ。櫛田さん、返事がないって言ってたぞ」
獅子屋は自分のスマホを確認すると、何事もなかったかのようにポケットへ戻した。
「そうか。袴か」
「一先ず、ジャージで舞台に出る羽目にならなくて安心した」
「そうだな。……なあ、千尋。書かないか」
「書きますか」
机の上で考えているのが退屈になってきて、二人は席を立った。
使わせて貰った机を元の位置に戻しながら、イメージを膨らませていく。
「そうだ!」
声が重なって、思わず顔を見合わせた。
お互いの表情が、宝物を見つけたかのように輝いている。
二人は教室を飛び出した。
つづく
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