2. 小6の頃……
学校に向かいながらの会話で、なんとなく状況を把握する。
うちらの回りでは、俺となつきの性別が違うくらいでそう変化は無さそうだ。
推論だがーー
過去に戻ったのはオレンジの夕焼けの日への強い思いだと思う。
これは分かる。
問題は女の身体の方。
もし男のまま過去に戻った場合、好き勝手やりたい放題、女つくりたい放題。
回りの人生変え放題のおそれがある。
それで、歴史の修復機能(?)とかで女になったのではないか。
実際、俺は肝心のなつきにさえ、どういうスタンスで接するか考えてしまう。
ある意味その手は正解なのか。
だが、俺の思いで戻ったなら、その結果如何で元の世界に帰れるのではないか?
とにかく半年後に向けて、なつきとの関係は良好な方が無難だろう。
まあそんなこた無くても、育んでいきますけれども。
「じゃあ、僕、先行くね」
学校まであと少しの所で、なつきが小走りに去って行く。
「うん、わかった……
ねえ! 帰りも一緒に帰ろうね」
なつきは振り返らず、大きく右手を振ってから、
校舎に向かって、元気よくダッシュしていった。
俺はその後ろ姿を見つめながら、
胸がギュッッと締め付けられるのを感じていた。
同じだった。
同じ場所だった。
昔、この場所から俺は……今のなつきではなく俺が……
同じ様に別れて、1人学校に向かって走っていた。
今風に言えば、スクールカースト上位のなつきに最下層の俺が一緒にいることで、迷惑をかけたくなかった。
いや、何かあって、一緒の登下校が無くなる事が怖かった。
俺は低学年の時まで、いじめられっ子だった。
ポッチャリして(デップリではない)、色白で、女みたいな顔つき。
それで名前がともかである。
いじめられない訳がない。
「白ブタ」「おかまブタ」「白かまブタ」
キッチン用品かっての。
4年生の時、男気のあるアネゴ肌の子が仲良くしてくれた。
そのお陰で女子グループとよく付き合う様になり、自然と改善されていった。
まあ、男扱いされてなかったんで、女子の一部みたいな感じだ。
それでもいいきっかけだった。
人とふれあい、お喋りし、笑顔を取り戻す。
ボッチではダメだ。卑屈になる。
ひとりで考えて答えが出ない物は、どれだけ考えても出る訳がない。
人と接して怪我したって、次怪我しない糧になる。
でも、まあ、俺も自分だけでは、なにも出来なかっただろう。
全てはアネゴ、平川ミキのおかげだ。
なつきは大丈夫だろうか。
あいつは「美少女顔」なんで俺とは違う。
クラスの女子からキャーキャー言われているかもしれんが。
取り越し苦労ならいいんだけれど……
とにもかくにも、心配してても仕方がない。
ちょっとクラスに馴染んだ頃に、様子を見に行ってやろう。
なつきとは、小中一度も同じクラスになった事がない。
よってあいつは、1組か2組だ。
ああ、そうだ、俺は3組だった。
6年3組だ。
20数年ぶりの6の3だ。
あぁ……アネゴ、
平川ミキとも、久し振りに会えるんだ……
ー第二話 おわりー
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