あの時こうしとけばというターニングポイントに戻れるとしたら君ならどうする？ ただし､性別変わるけど｡

第？？話

エピローグ──あれから何年経ったやら

　辺りは白い魔法の靄（もや）に包まれている。

　足下はふわふわして、雲の上に立っているようだ。

　本来の世界は、うっすら奥に見える中世ヨーロッパの石畳。

　しかし目の前はただ、白く淀んでいる世界。

　全然縁もゆかりも無い土地だが、何だか懐かしい光景だ。

　葉月！　なあ葉月！

「ん？　何？」

　久し振りじゃないか？　この感じ。

　そうだなあ、110年ぶり位じゃないかなあ。

「え？　そうだっけ？」

　おいおい、俺達の出会った時にそっくりじゃねーかよ！

「忘れたわよっ、そんな大昔！」

　俺達が本（・）当（・）に（・）出会った現実世界、いや自世界では、まだひと月と経っていない。

　だがその他の世界、他世界では出会う前に半年、出会ってからはもうかれこれ100年以上経っている。

　全ての発端はあのキスだった。

　初めて２人で交わした、病室での淡い恋のベーゼ……

　あろう事か、そこで奴は舌を入れやがった。

　中２のクセにっ。

「自分だって喜んでたクセにっ！」

　喜んだよっ、超喜んだ！

「こっちには百戦錬磨の熟女がついてるのよ、んん!?

　……ごめん、お母さん。

　レディーが舌出したのよ」

　……そ、それのせいで、今の状況だ。

　葉月の中にあるなつきの力が、体液交換で俺に伝わり、その瞬間に次元移動だ。

　俺は最初、10年後に飛ばされた。

「あれは、とん吉の娘にヤスコってつけさせた、自分の責任でしょ！」

　それはまあ、そうなんだけど。

　俺の迂闊な一言で、とん吉が娘に康子と命名した未来……

　それは巡り巡って、日米開戦、核戦争を引き起こす未来！

　たかが名前ひとつの違いが、ドミノ倒しよろしく、連鎖、増幅、核爆弾である。

　俺の時は「あの方」のサポートがあったらしく、少々歴史の変化があっても大丈夫だったらしい。

　今度からは俺と葉月だけで解決を目指さねばならない様で、初回の任務は完遂に10年近く掛かってしまった。

　その後何度も未来や過去、他世界に異世界と、矢鱈コキ使われている。

「仕方ないでしょ、それが私達の使命なんだから」

　よく言うよ。

　実際働くのは俺だけだっつーの。

　お前は夢に出てくるだけだろ。

「あら、毎晩妻として、夫の帰りを待ってるつもりなんだけど」

　あうっ！

　それは素直に嬉しいよ……

「そう？　じゃあ、今回はちゃちゃっと終わらせましょう」

　ああ、そうだな。

　自世界の方でも時間を進めて、早く名実ともに夫婦になろう。

「バ、バッカじゃないの。

　……たまには嬉しい事言ってくれるじゃない」

　なつきの奴め、なにが５年位待っててあげる、だ。

　ふつう100年もおあずけ食わすかあ？

「あら？　それはちゃんと、待ったが出来てる人が言える台詞でしょ」

　いやいやいやいや、そんな直接的な事を言ってるんじゃ……

「この間だって、パーカーに半ズボン姿になったら、興奮して鼻の穴３倍に……」

　わかった！　悪かった！　ごめんなさい！

「なつきくんで興奮してるのが腹立ったのよ」

　ほんと、ごめん。

「まだ、なつきくんの事忘れられない？」

　バッカじゃないの。

　もう俺の胸には、２人のなつきなんかに割けるスペースは無いよ。

　今までの100年、これからは1000年だろうと、俺の心は全て葉月､お前のもんだよ。

「ともか……」

　葉月……

「うん？　

　お母さんがね……なつきなんか、そう、ふ～ん、だって」

　めんどくせーなあ！

　高次元の存在じゃねえのかよ！

「うふふ、後で執成（とりな）しといてあげる。

　はい、いってらっしゃい」

　言うと葉月は目を閉じ、顎をすこし上に突き出す。

　俺は軽く葉月を抱きしめ、唇を重ねた。

　行ってらっしゃいのキスは、この空間からの目覚めのキスになる。

　そしてこの体液交換によって、俺の身体能力がアップされるのだ。

「ほんと、役者辞めてもその解説ぐせ、全然治らないわね」

　悪癖みたいに言うなよ。

　自世界でウェブ小説書いてるから、役に立ってんだぜ。

「初耳なんですけど」

　そうか？　結構前から書いてんだけど……あ!?　いけね！

「何？」

　タイトル変えてなかった、内容全く違うのに。

　何にしよう……

　うちのかみさんがロリでツンデレ神様で。とか。

「何よそれ！　内容はともかく、長すぎない？」

　そうか？

　でも今の方がもっと長いぞ……

　こんなタイトルだ。

　あの時こうしとけばというターニングポイントに戻れたら君ならどうする？　ただし、性別変わるけど。

ー　完　ー