ジャンプの後ろの方に載ってた通販が世界を救う

 巨人の胸毛上空をパトロールするチチンコ族の老女達。今日も両脇にダンディな男どもを侍らし、我世の春を謳歌している彼女達。


 ああ、実に愉快、こんな日々が死ぬまで続けばいいのに。


 もはや、左乳首市は世界一の街になった。その圧倒的な資金力を前に世界中どの国も歯向かうことはできないのだ。

 女が女として生きていく、女の理想都市、左乳首市は世界中の男どもが牛耳っている国を超えたのである。


 ついにあのブリーフを旅立ち、脇の下で暮らし、ついに百歳を超えた今、チチンコ族の老女達は自分たちの理想の生き方を見つけたのである。

 男の力に頼らない、女の力で生きて行く。

 そして、世界中の男を奴隷にする世界。


 あの日、右乳首市を旅立った時、もう二度と男の事なんて信じないと心に決めたのだ。

 男なんて獣よ。

 どの男も結局、私の体と年金が目当てなのよ!


 百歳を超え、乳も垂れ、ついに辿り着いた境地。


 男を超えた女達、それが左乳首市である。


 もはや、右乳首市の男どもでは太刀打ちできない最強の兵士と化したチチンコ族の老女達。

 もう、誰も左乳首市には歯向かえないのよ!


「よっ! 良い女!」


 その時、チチンコ族の老女が右側に侍らせていたダンディ男の声をした。老女はイケメンから「かわいいね」とか「美人だね」と言われるのが嬉しいから、呼ばれるときは「良い女と言え」と命令しているのだ。


「良い女とか言わないでよ。聞き飽きたわ!」


 人が悦に浸ってる時に「良い女」とか当たり前のことを言わないでほしい。この数ヶ月、チチンコ族の老女達は「良い女」と言われすぎて、逆に傲慢になってしまったのである。


「あっちから、何かが来ます!」


 と、ダンディ右がブリーフ山の方を指差した。

 あそこにはブリーフ山には、私が置いてきた仲間しかいないわ。


 アイツらが、私達に向かってくるなんて……ありえない。


「何かが飛んで来ます!」


 今度は老女の左側に侍らせていたイケメンが言った。


 なにっ!


 この幸せの時間、ブリーフ山を旅立ち、はや80年、やっとたどり着いた青春。

 それを脅かそうとする奴がまだいると言うのか!


 ブックロス!

 ぶっ苦労する!


 チチンコ族の老女は、遠くから物凄いスピードでこちらに飛んでくる物体に目を凝らした!


「あれは!」


 そして、老眼のおかげで割と遠くにいる段階で、その物体の正体を見た!


 飛んできたのは両脇に美人な女を侍らせて、空を飛んでいる禿頭の中年男性であった。

 そして中年男性をよく見たら、それはあの忌々しい右乳首市の私たちの体を弄んで捨てた、あの最低の市長であった。


「なんで、アイツが!」


 そして、その市長が両脇に侍らせているのは、間違いなく、あの80年前に決別したはずの昔のチチンコ族の仲間である。


「久しぶりね。80年も経って、ちょっと歳をとりすぎたんじゃない?」


 老女に言ってきた若いチチンコ族。しかし、なんでメイド服を着ているのだ。


「あ、あなた達がなんで、その市長の味方をしているのよ」

「私たちは、あなた達を連れ戻しにきたのよ!」

「なんですって!」

「その為に、アメリカと手を組むことにしたの!」

「くっそおおおお!」


 チチンコ族の老女は怒りで拳が震えた。

 アメリカ、資本主義の頂点を極めし欲望の塊のような国。そして、その欲望は全てを飲み込み、尽きる事はない。

 そして、そのアメリカの男どものどぎつい欲望の魔の手は、かつての同胞であったブリーフ山に生息している若いチチンコ族にまで伸びていたのだ!


 これだから男ってのは嫌なのよ!

 私たちの体をしゃぶり尽くしたら、今度は別の女。それも私達よりも八十歳も若い女達。

 本当、男って女の事をベースケでしか見ていないんだから!


「あなた達、その男達がどんな男か知っているの!」


 老女は若いチチンコ族に尋ねた。


「ブリーフ山を旅立ってからのアナタ達の事は聞いたわ。もう、良い加減戻ってきたらどうなの!」


 ブリーフ山を旅立ってから私たちの情報……


「そんなのきっと、そんなの嘘ばっかりに決まってる。そうやって、アナタ達を洗脳して、自分たちの思うように操ろうとしているのよ! 本当に男って獣なんだから!」


 老女はそう言って、市長を指さした。


「その男が、私たちにどんな辱めをしたか、アナタ達は知らないでしょ!」


 市長は両脇に若いチチンコ族の美女を侍らし、この世の春という悦に入った顔をしていた。メイド姿で。


「見なさい、その悦に浸った情けない顔を! そいつはアナタ達を下心でしか見てないのよ!」

「そう言うお前はどうなんだ!」

「なんですって!」

 

 市長がいきなりキリッとした表情で老女に言い返した。


「お前だって、両脇にイケメンを侍らせて、こんな悦に浸った顔をしていたではないか!」


 そう言って、市長が老女に見せたのはOH!HANAYAMA!のコクピットについていたドライブレコーダーに写っていた悦に浸ったチチンコ族の老女達の情けない姿であった。


「こんな情けない顔を晒しておいて、よくも偉そうなことが言えたものだな、チチンコ族!」

「ぐっ!」


 百聞は一見にしかず。

 チチンコ族の老女が100の言葉を話そうと、ドライブレコーダーに写っていた白目を剥いて両脇のイケメンに抱きついている写真には敵わないのである。¥


「チチンコ族! 花山さんは返してもらうぞ!」


 市長がキリッとした顔で言った。


「そうわさせないわ! あんた達に女の苦しみがわかってたまりますか!」

「だったら力尽くといかせてもらおう!」

「望むところよ!」


 その言葉を合図に、市長とチチンコ族の老女との激しい空中戦が始まった。

 しかし、市長が両脇に侍らせていたチチンコ族の美女は物凄い速度で空中を飛び回り、旋回、老女側のチチンコ族を圧倒した。

 空を飛ぶスピードは圧倒的に若いチチンコ族の方が上であった。


「くらえっ! チチンコ族!」


 そして、市長は己の禿頭を老女のチチンコ族に向かって発射! それは太陽光線を市長のハゲに集め、レーザーのように発射した!


「きゃああああ!」


 その怪光線が直撃した老女チチンコ族は撃ち落とされて、地面へと落下していった。


「うそ! 1号がやられたわ!」


 その市長の圧倒的な強さを目の当たりにした周りのチチンコ族の老女達は、市長の予想外の強さに恐れをなしたのである。


 市長の予想外の強さ、その理由は市長が首からぶら下げていたペンダントにあったのだ!


 昔の男性向け週刊誌の後ろの方のページには、怪しい通販グッズが数多く売られていた。

 やれ、洋服が透けるメガネやら、それを飲むだけで3キロも痩せる魔法の薬やら、現代の科学技術を遥かに凌ぐ商品の数々。まるで未来。


 しかし、そんな中でも一際目を引く商品があった。


──幸せを呼ぶペンダント──


 ペンダント……童謡の女の子がつけているアクセサリーNo.1のあのペンダントで機は熟したと言わんばかりに、満を辞して男性ホルモンの霧に包まれた摩周湖、男性向け雑誌で売りに来たのである。

 勝ち目のない負け戦だと思いきや、ところがどっこい、アチラさんもちゃんと男性ホルモンを攻略する奥の手を毎回用意しているのだ。


 浴槽いっぱいに張られた札束。

 その札束風呂の中に入った幸運のペンダントを首からぶら下げているサングラス姿の男。

 そして彼はいつも両脇に美女を侍らせている。

 それを見た我々読者は、毎回、名画を見た時に受ける衝撃のような違和感を覚えるのだ。


「なぜだ? サングラス越しでもブサイクとわかるこの男が、何故、両脇に美女を二人も侍らせているのだ? F1レーサーですら世界最高のライバルを倒して1位にならなければ、お呼ばれされないのに……何故、こんな平凡な男が」


 その時、全男の視線は男の胸元に集中する。


 これか、この幸せを呼ぶペンダントのおかげなのか!


 それが分かれば、話が早い。早速、注文だ!


 そして、男達はお風呂で美女を侍らせる冴えない男に憧れて、電話を鳴らしたのだ。それが不幸の始まりだとも知らずに。


 そして、時は流れた。


 数十年の眠りから目覚め、今、あの時の幸運を呼ぶペンダントの男と同じ幸せを手に入れた男が、この地球上に現れたのだ!


 それが市長である。


 この冴えない禿頭の親父が、美女二人を両脇に侍らせ、我世の春を謳歌しているのだ!

 それによって、市長の首にはあの「幸運を呼ぶペンダント」がじんわりと現れ、そして市長は無敵の力を手に入れたのだ。


 そう、強いものが勝つんじゃなくて、勝ったものが強いのと同じ理論で、首にかけた男に幸運が訪れるペンダントじゃなくて、幸運が飛び込んできた男の首にじんわり現れるのである。


 だから、通販のアレは嘘だったのである!


「とう! とう! とう!


 我世の春を謳歌している市長は「空も飛べる気がする」というスピッツの名曲を己の体で体現したことにより、幸運を呼ぶペンダントを手に入れ、無敵の力を我ものにしたのだ!


「とう! とう! とう!」


 次々とOH!HANAYAMA!ですら手も足も出なかったチチンコ族の老女達を市長はあっという間に倒してしまったのであった。








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