右乳首市 最強への道
体毛に 渡辺篤史が 泣いちまう
あのダンゴムシの群れの襲撃から、まだ一日しか経っていないにも関わらず、破壊された右乳首市は、すでに平常運転に戻っていた。
「ごめんなさい」
ダンゴムシの子供は死んでいなかったということが分かり、街を無駄に破壊しやがってこの野郎! って、ことでオッペンハイマー君を先頭にチチンコ族、そしてダンゴムシが、正月に「今年も我が社をよろしくお願いします」って社員全員で挨拶するみたいに並んで、「ごめんなさい!」と右乳首市の人々に頭を下げた。
「ごめんじゃないでしょうが!」
市長が「いいですよ」と言おうとしたのに、その言葉を消し去って花山さんが今度はチチンコ族たち全員に怒鳴り散らした。
まだ行くか、この女。
市長は、あれだけ怒鳴った後にも関わらず、相手の落ち度を蔑ろにしない彼女のストイックさに驚愕した。
きっと、歯磨き粉はチューブを折り曲げても最後まで使うタイプだな。と、市長は怒鳴ってる最中、暇だったので、花山という女をそう分析した。
考えてみれば金がなかったのだ。許してたら、大変なことになっていた。あっぶねぇ。
「どうすんの! こんなに街を壊しちゃって!」
花山さんの誘導尋問にオッペンハイマー君はまた泣きべそをかいて答えた。
「僕たちで弁償します」
イエス!
市長は「その言葉を待っていたぜ」と、近くにいた人のお腹をグーパンした。「グフォッ!」と殴られた男は腹を抑えたが、どうってことない。市長はこの街で一番偉いのだ。
大統領だった。
そんなこんなで、どんなもんだと、チチンコ族たちによる「ゴメンね修理ちゃんの儀」が始まった。いや、誕生したと言っても過言ではなかった。
チチンコ族のお婆ちゃん達、ダンゴムシ、そしてその天才的頭脳で的確に指示を出す泣き虫。
まずダンゴムシがどこからか建物を修理する材料をダッシュで取りに行く。そして、それを加工するお婆ちゃん(大工の嫁)。その加工した柱を空を飛んであっという間に組み立てているお婆ちゃん。
「うおおおお!」
市長達は、あっという間に建築されて行くビルや民家に度肝を抜いた。
「なんだ、あの黒い素材は!」
お婆ちゃん達が運んでいる見たことのない黒い材質の柱。それは、巨人の体毛である。
体毛は太くて丈夫に育ったくせに、風が吹けばそっちにナビく、という弱かったあの頃の気持ちも忘れないギャップが持ち味の材質である。
まずお婆ちゃんがぶっとい体毛を切断してビルや民家の大きさにする。それをお婆ちゃんが運んで、地面にまず置く。そこから四次元乳裏からノミやハンマーを取り出し、地面に置いた黒い塊を建物の形にくりぬいて行く。
人間3Dプリンターと言わんばかりの彫り名人達が30分くらいで一件の建物を完成させて行く。
しかも、そんな名人級のババァがゴロゴロいるという。
巨人の体の上で生きて行くには、高速で家を作る技術が不可欠なのだ。環境がお婆ちゃんを進化させたのであった。
「おい、エロい姉ちゃんの彫刻を床の間に作ってくれ」
市民からそんな注文がつけば、すっごいエロい彫刻を床の間に彫ってくれたりもすると、至れり尽くせり。
やれ2×4だの、シルバニアファミリーだのが霞んでしまう。しかも、家は柱も使っていないので、災害にも強いときた。
体毛すげえ! 渡辺篤史が「素晴らしいなぁ」って絶賛する柱すら与えないという、お宅訪問泣かせだが、この技術は売れる。
しかも、お婆ちゃんは朝が早かった。翌日の朝の3時にみんな起きて、もう昼の前には襲撃前よりも豪華な街が出来上がっていたという。
そして、街のど真ん中には立体テレフォンカードができた。
「こんなんで、街の人が本当に許すと思うのか!」と市長は完成後に怒鳴り、最後に無理やり作らせた立体テレフォンカードだ。
立体なので、前までは1方向からしか見れなかったテレフォンカードは東西南北どこからでも市長の笑顔が拝めるようになった。
そのせいで、日差しが当たらない住宅街がさらに増えてしまった。
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