第23話 仲良しシャトルラン
「処刑だぁ!」
うおおおお! 花山さんに向かって行く市長たち。
「させるかっ!」
と、そこに割って入ったのは、花山さんに治療させた怪我人たちであった。
「折るぞ折るぞ、折るぞ!」
必死で抵抗する怪我人の市民たちのギプスを掴んで、奴隷になりたくてたまらない市長の心無い言葉。市長も奴隷にしてもらうために必死なのであった。
やはり怪我人では勝てない、市長たちはこの防衛ラインを突破した。
もう、彼女の前には誰もいない。
「かかれぇ!」
最後の突進を見せる。奴隷まであと少しだ。
市長をはじめ、役員たちの脳裏には「きっと俺だけは、チチンコ族に気に入られて、いいポジションに入っちゃうんだろうなぁ」という、誰にも言わないけど、みんな同じ、とても都合のいい未来を想像していた。
「俺、おばあちゃん子だったし」と市長はさらに深淵まで潜っていたという。
が、その時、
「市長!」
部下が空を指差した。何かがこっちに飛んでくる。
「なんだ、あれは!」
鳥だ! 飛行機だ! ……あ、飛行機だ!
それは、数日前に元アメリカを飛び立って、消息を絶っていた、大統領が乗っているOH! HANAYAMAであった。
すでに燃料は尽きて、死んだものと思われていた大統領だったが、秘書が入れていた魚肉ソーセージを食べ、どっかの人に魚肉ソーセージと燃料を交換してもらい、そして魚肉ソーセージを紐で吊るして方位磁石にして、ついに巨人の乳首にたどり着いたのであった。
「花山ああああああああああああああああああああああ!」
「あれは大統領!」
市長は、自分より身分の高い人を瞬時に見分ける能力によって、マッハ文朱の速度で飛ぶ戦闘機のコクピットの大統領を肉眼で捉えた。
そして、大統領は胸毛を爆撃するための爆弾を、アメリカの最後のお金を花山さんを守るために投下し始めた。
ババババババン
「退避ぃ!」
さすがに爆弾では叶わないと、市長たちは最初のスタート地点にまで戻された。
「おのれぇ、大統領!」
歯軋りで見上げる空。が、後ろからの声に市長はビクッとなった。
「なんで、戻ってきた?」
振り返るとオッペンハイマー君とダンゴムシがギロッと市長たちを睨んだ。
「お前たちが処刑されたいのか?」
ギロッ!
「かかれぇ!」
ふたたび、花山さんへと突っ込む市長たち。
しかし、
バババッババババッバババン
「退避ぃ!」
「どうした?」
ギロッ!
「かかれぇ!」
バババババババッババババン!
「退避ぃ!」
ギロッ!
「かかれぇ!」
ババンババンバンバン!
「退避ぃ」
と、何度もやっていると問題が一つ発生した。
不謹慎ながら、なんかちょっと楽しくなって来てしまいました。市長をはじめ、走っているみんな、すでに半笑いであった。
次第に「誰が一番、ギリギリまで爆撃に近づけるか?」みたいな暗黙の勝負が始まってしまうくらいに、このシャトルランをみんな、楽しんでいた。
そう、市長たちはみんな、仲良しなのだ。
しかし、もっと大きな問題が一つ発生した。
「楽しそうだな?」
ギクッ。
楽しんでいるのを、オッペンハイマー氏にバレてしまったのであった。
油断して「ゴール!」ってスキップ気味に呟いて帰ってきたのがいけなかった。
「次戻って来たら……わかっているだろうな?」
「は、はい!」
市長たちは、緊張の面持ちで一列に並んだ、これが最後のシャトルランだ。
「笑顔で行こうぜ!」
市長がみんなを励ますために言った一言であった。そして、誰が言い出すでもなく、みんな、隣のオッサンと手を繋いだ。
キモい。だけど、友情は美しい。
うおおおお!
爆撃が待っていると知っていながら、おじさん達は走った。
すると奇跡が起きた。
風に飛んできた巨大テレフォンカードが突然、市長達の目の前の地面に突き刺さった。
そして、テレカは花山さんの方へと傾き、市長達の前に倒れかけだが、奇跡の坂が生まれた。
「走れえええええ!」
しまった!
テレフォンカードの上を全速力で駆け上っていく。大統領の爆撃は交わされた。
パラシュートで緊急脱出する大統領。そして、市長のハゲを目印に走る!
「光あれええ!」
花山さんめがけてのビーチフラッグ。市長が先か、大統領が先か!
二人同時に花山さんに飛び込んだ!
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