ブリーフについて思うこと

 ここでブリーフについて考えてみよう。


 思春期の少女は、自分の弱い本当の気持ちを隠すために心に仮面をつける。本当は怖いのに、好きな人に大人に思われたくて、仮面を付ける。十代前半の沖縄、九州、四国、中国、西日本と中部、東日本、東北、北陸、北海道の女にはそういう習性があると言われている。


 それと同じように、ブリーフを履くことで男は股間に仮面をつけると言われている。これはライオンを捕獲するためにサバンナに入るべく、拳銃をリーゼントヘアの中に隠す密猟者のようなものだ。

 サバンナに入った後は、リーゼントの真ん中がパカっと割れて、お弁当と拳銃を取り出す。


 つまり、ブリーフというものの向こう側には絶えず、怪物が待っているのだ。

 だからこそ、ブリーフはシルクに限る。

 壁の向こう側で息を潜めるモノが怪物であればあるほど、それを遮る壁は柔らかく肌触りの良いものを選ぶのは当たり前だ。


 死亡フラグという言葉がある。

 生きそうな言動をとっている人間は、むしろこの後、死ぬ可能性が高い。

 それと同じようにブリーフが柔らかければ柔らかいほど、その向こうのモノは大変な怪物なのだ。


 ブリーフを登る間、大統領は絶えず、布の向こう側から強烈に放たれている殺気をビンビンと、アレなだけにビンビンと感じていた。


 ブリーフの縫い目は職人さんが丁寧に縫ってくれていたので、アスレチックとかにあるネットを上っていくアトラクションみたいにアメリカ人は続々と上っていった。

 ブリーフは巨人の股間の元気具合によって伸びたり縮んだりを繰り返し、その度に、普段からのトレーニングを怠った軟弱者がネットから振り落とされて、地面へと落下して行った。

 そうしたら一機を失って、またスタートから最初からである。

 

 しかし、その落下した人間を振り返る者は誰もいない。アメリカ人は道なき道を進む国民。視線は絶えず上を見ていたからだ。そもそも、日頃から鍛えていないヤツが悪いのだ。アメリカ合衆国の国民としてあるまじき蛮行だ。


 アメリカにある諺が一つだけだ!


──ピザ食って働け! コーラ飲んで働け!──


 いらっしゃいませ、ご主人様。


「ん?」


 その時、大統領はどこからともなく聞こえて来たジャパンの秋葉原で聞いたメイドのような声に辺りを見渡した。


 あれは……秋葉原で、日本の総理とメイドVS大統領と秘書で日米首脳会談の一環で四人麻雀をしていた時の事だった。

 この麻雀にアメリカは安全保障条約、日本は総理の血が賭けられていた。


 秘書の詰め込みが功を奏し、開始早々、大統領の配牌は大三元のテンパイが出来上がっていた。これで秘書が予定通りに次のターンで詰め込めば、アメリカは日本の総理を血を手に入れる事ができ、日米の安全保障条約を有耶無耶にできる……予定だった。

 一個前のマリオカート対決では、メガネが割れた秘書が逆走してしまい予想外の惨敗を喫し、日本にディズニーランドをあと五個作る条約と日本のプロ野球選手を大リーグに輸入する条約を結んでしまっていた。ミッキーも本場アメリカで飼育された天然物を連れていくことになっている。


『ディズニーランドは思春期のニキビじゃない。なんで日本に夢の国が六個もあるんだ?』とワシントンポストには大統領を非難する記事が載った。


 マリオカートは負けたが、これ以上は負けるわけにはいかない。


 しかし、秘書が大統領に大三元の牌を詰め込もうとした、その時だった……


「それ、ロンですご主人様!」


 大統領が「ロン」というより前に横から大三元を奪って行き、ゴミみたいな1000点の役で上がったあのメイド。

 おかげでアメリカは日米安全保障条約をメイドが経営していた秋葉原のよく分からないメイド喫茶と結ぶ羽目になってしまった。

 その店で酔っ払いがお店の女の子にセクハラするたびにアメリカ軍が出動しないといけない面倒くさい条約を結んでしまったのは大統領の政治の歴史においても苦い経験だ。

 しかもアメリカの税金で賄われると来た。


『天下の米軍がなんでメイド喫茶のケツモチをしているんだ?』とワシントンポストにはまたまた大統領を非難する記事が載った。さすがの大統領も「そりゃそうだ」と新聞記事に納得した。


 なぜ、あの日本のオタク街での苦い思い出をブリーフから感じているのか? 


 そもそも日本とは恐ろしい国だ。

 欧米のメイド文化を自国に持ち込み、もはや独自の文化に変えてしまった。

 それに対抗するべく、アメリカも日本の寿司をアメリカでブームにしようとしたが、上手くいかない。それを見た日本人は『これのどこが寿司なんだ! 笑わせるな!』と嘲笑してくる。

 アメリカ人は不器用だけど、頑張り屋さんなのだ。日本の寿司をどうにかアメリカの文化に馴染ませようとしているが、日本のようにうまくいかない。


 何なんだあのメイド文化は、そもそも原型を全然整えていないのに、愛嬌があるではないか。もはや、メイドは日本の文化ではないか。

 そう言えば、ラーメンも中国が日本に奪われたと泣いていた。日本、恐ろしい国だ。


──いらっしゃいませ、ご主人様──


 その時、再び大統領は確かにメイドの様な声が聞こえた。欧米のメイドではない、日本のアキバにいるメイドの声だ。


 なんだこの声は?


 大統領が辺りをキョロキョロと見回したが、何もいるはずがない。何故ならそこは真っ白な世界のみが広がる巨人のブリーフの山の中腹である。

 しかも、まだ頂上には程遠い、一合目にも到着していない麓なのだ。上を見ても布、下を見ても布、右を見ても左を見ても布しかない。何かがいるはずがない場所なのだ。


──いらっしゃいませ、ご主人様──


 しかし、やはり、声がする。気のせいではない。


「おい、何か声がしないか?」


 大統領がすぐ下にいた誰かに聞いた。


「いえ、別に」


 一番近くにいた市長が答えた。なんでコイツはいつも私の近くにいるのだ? どう考えてもランクでは下の下の男のはずだ。しかし、何が災したか、今ではこの男が自分、秘書に注いでアメリカのナンバー3の位置にいるという。


「私の秘書はどうした?」

「アイツはもっと下です、大統領! 私の方が早く登って参りました!」


 市長は元気に答えた。

 市長は大統領に恩を売ろうと、絶えず秘書の真上を陣取り、登ってくるたびに秘書の顔を蹴って、顔面にオナラをしていたのだ。

 そのおかげで、秘書は何度登ってきても市長に下へ落とされる羽目になり、大統領から大きく離れた遥か下にいたのであった。


「私でよければ、なんでもやります! 大統領! キスしましょうか!」


 威勢だけは一人前だ。しかし、スペックが5流のコイツでは話にならん。


 もっと私とIQが近い、まともな人間と話がしたいと大統領は思った。しかし、コイツ以外の他のアメリカ人は遥か下。大統領の域にまで登ってきているものは市長しかいなかった。


 なんで、こいつ以外はあんなに下にいるんだ?


 なぜなら市長が下にいる奴を蹴りまくっていたからだ。文字通り、他人を蹴り落として大統領の側近まで上り詰めた男、市長。


 敵とは絶えず、外ではなく内側にいるものなのだ!


──いらっしゃいませ、ご主人様──


 まただ。また声がする。


「何か聞こえただろ、今?」

「はい! 何も聞こえませんでした!」

 

 コイツ、元気に「はい」とだけ言うイエスマンな癖に、意見は私の逆と来た。一番役に立たん男ではないか。


「お前じゃ話にならん! 誰かいないのか!」

「私しかいません! 私を頼ってください大統領! なんでも『はい!』って元気に返事をします!」

「そんなヤツ、役に立つか!」


 大統領のイライラが募る。

 私が疲れて幻聴を聴いているだけなのだろうか?


 大統領の心に迷いが生じ始めた。


 その時、


「いらっしゃいませ、ご主人様」


 やはり聞こえた。

 大統領はその声がした方を見る。


 上。


 アメリカ合衆国の国民が絶えず見続けて来た方向、上。


 つまり、この声は大統領にこう言っている。

『まだ上を目指せ』と。

 一体、どういう事だ? 世界一の経済大国だぞ?


 まだ上に行けというのか?


「まぁ、いい。とにかく行くぞ!」

「お供します、大統領!」


 二人は声のする上を目指し、ブリーフを登る。





 







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