チチンコ族の生態

 あっという間に街は復活した。壊すのと同じくらいの速さで治すのだから大したものだ。


「よろしく」


 市長とオッペンハイマー君が新社屋になった市役所で「今後はともに生きていこう」という意味を込めて、電話番号を交換した。これにより、右乳首とチチンコ族の同盟が結ばれることとなった。


 怪我が治癒すると怪我をする前よりも強い体ができると誰かが言った。

 右乳首市はあの破壊によって、襲撃前以上の力を手に入れたのだ。


 まず、右乳首市市長。3位。

 そして、アメリカ大統領。2位。

 その大統領を長年支えていた秘書、PN セーター編む男

 世界の頭脳、オッペンハイマー君。

 空飛ぶお婆ちゃん。チチンコ族酋長。

 最強の戦車。巨大ダンゴムシ。


 そして、世界の王。風邪薬のCMをやってほしい人14時間連続ナンバーワン、花山さん。1位。


 この強力布陣による政治集団が結成され、世界中のどの国よりも強い発言権を手に入れた。


「しかし、金がない」


 3位がボソッとつぶやいた。3位は仲良くなったついでに「チチンコ族ってどうやって生活してるの?」とオッペンハイマー君と酋長に聞いてみた。


 翌日。

 漁師の美味しい朝ごはんを食べに行くようなノリで、右乳首市役員たちはチチンコ族の住処にお邪魔することになった。

 チチンコ族は基本的に巨人の脇の下付近に生息しており、昨日の材料の体毛はここの脇毛から獲ったものだという。


「え! 昨日、ここから右乳首市まで運んだのか!」


 市長は驚いた、右乳首市から脇の下までの距離は、車を普通に飛ばして三日はかかる距離だ。おかしいではないか!


「ていうか、市長。我々は今、脇の下に立っておりますぞ!」

「はっ! 本当だ! 一体、どういうことだね!」


 わずか一日もかからず、なぜ市長たちは脇の下にいるのか、それは市長たちがダンゴムシに乗って移動してきたからである。


「なんだって!」と市長は驚いた。

「市長、ワザとらしいですよ」と部下に小突かれる市長。

「いっけねぇ!」と頭を抑得てピエロを演じる市長。そして、「あっ、毛ねぇ!」と又しても親父ギャグ炸裂!

 これまた大爆笑。

 「もう、市長ったら」と、呆れてしまう役員たちであった。クラスのお調子者のポジションを手に入れた市長であった。


 ダンゴムシで来たのには訳がある。単純に金がないのだ。

 金がないので車を運転するお金もない右乳首市。市長の渾身のギャグ、全裸ポリス登場、そして大統領によりパトカー炎上によって、市内の燃料は全て底を尽きたのだった。


「まぁ、笑えたからいいですよ」


 部下たちは、市長の悪ふざけを笑顔で許してくれた。「こいつらとなら、人生二度目の青春が送れるかもしれない」と、その時、市長は密かに思っていた。


 そんなことはどうでもいい。


 あの巨大なダンゴムシ、あれが一生懸命走るとすごい速いのであった。しかも、その一生懸命に走っている姿が、なんとも可愛い。ダンゴムシなんて気持ち悪いと思っていた世間にカルチャーショックを与えるレベルに可愛いのだ。


 そして、チチンコ族の主な収入源が巨人の脇の下の汗から取れる塩。これを製品化し、巨人の周りの国々に輸出することで安定した収入を得ていたのだ。


 塩、毛、ダンゴムシ。


 金のなる木が一気に三本見つかった。

 すぐさま、右乳首市に帰って市長たちは会議を開いた。星占いを見ると、市長の星座はこの日「四葉のクローバーが見つかるかも」と遠からずのことが書かれていた。

 この星占いすごいな。と、スポーツ新聞の名前を手帳に控える市長であった。


「これは大儲けできるぞ」


 市長、大統領、秘書、役員たちは一同、顔を見合わせて下品な笑い声をあげた。

 どうやら、我々は素晴らしい友人を手に入れたようだ。

 右乳首市再生計画は、誰一人一言も喋らず、ただただ会議に出席した面々が、各々金持ちになった自分を想像して、ヨダレを垂らしただけで終わった。













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