右って何?

 チチンコ族のことはほっといて、現在、ハムの先端にいるアメリカ大統領も大きな事態に直面していた。


 葛藤。780円。


『矛盾した相反する感情が一人の人間の中に存在するということを否定する人間は、アクセルとブレーキがついた車を見ても笑うつもりだろうか?』


 かの、カレーの甘口評論家のよしおさんは、自身の著書『若者のリンゴと蜂蜜離れ』の中でこう述べていた。


 第二のアメリカを作るべく、元アメリカ国民たちと巨人の上の国土を広げるべく、仲良くハムを敷いていく日々だ。巨人の胸毛で稼いだお金を全て、ハムを買い、ハムに変え、まるでドミノを敷き詰めていくかのごとく、後ろを向きながら右乳首市を旅立って、いくほどの月日が経っただろうか。


 最初は縄文人が田植えを覚えたみたいに、「見て見てぇ」とキャピキャピとハムを置いて行っていたアメリカ人であった。


 しかし、歴史は繰り返す。


 男は田植えに、女は家で。子供はコンビニの前でDS。という日本の縄文時代の文化をそのまま踏襲した雰囲気が、この現代のパットン戦車隊にも生まれ始めた。


 男は外でハムを撒き、女は男が敷く為のハムを針と糸で縫うという方針にシフトしたのである。

 それは大統領も同じであった。


 大統領はお昼になると、世の奥様方と一緒に男が明日敷く為のハムを縫う。最初は針も糸も持ったことがなかった大統領であったが、次第にやり方を覚え、そして徒党を組む『銀狼』という名の主婦たちを、度重なる選挙で淘汰していき、今ではただの無駄話をべちゃくちゃ喋りながら、お昼の情報バラエティが経典という、ハムを縫うだけの主婦軍団を作り上げたのであった。


 そして、大統領も、最初はあぐらをかいてハムを縫っていたのが次第に正座をして縫うようになって行ったという。


「楽しい」


 この瞬間が永遠に続けばいい。市長がクラスのオッチョコチョイ役を幸せに思っているのと同じように、大統領はこのレディス4の司会の柴俊夫のようなポジションに生きがいを感じていたのだ。


「トランプ柄のセーターで謝罪した人?」

「それは柴田勲だよ!」


 日本人の98パーセント、アメリカ人の99.9パーセントが知らないこのマニアックすぎるギャグのみを引っさげ、大統領はハム編み漁師の女会の司会者へと上り詰めたのだ。


 昼にハムを編み、巨人のお肌の海へ旅立っていく男たちに『体毛』と書かれた大きな旗を振りながら主婦たちと見送る。そして、またハムを編む。


 単調に見えたこの日々に大統領は生きがいを感じていたのだ。


 そして問題が訪れた。


 右はいずれ終わる。


 あの巨人の胸毛のど真ん中に咲いていたお花のほぼ手前にまで、アメリカ人は自らのハムを広げてしまったのだ。

 これ以上、ハムを編んだら、完全に右を超えて、左の領土へと足を踏み込んでしまうのだ。


 でも……この楽しい日々を終わらせたくない。


 終電があるのに、飲み会が思いの外楽しい時、でもホテルには行きたくない。そんな三重苦のような状況に冷や汗を垂らす大統領。


 今日も「体毛」という旗を振り、男たちを見送った。


 言わなければ、これ以上ハムを編んだら、左乳首の領土に入ってしまって、またあの『ブス核家族』と戦争になってしまう。


 しかし、


「あ! トランプ柄のセーターで謝罪会見した人だ!」

「それは、柴田勲だよ! おいらは柴俊夫だ!」


 爆笑!


 このマニアック過ぎる笑いのツボを持つ奥様方の笑顔を見た瞬間、大統領の腹は決まった。


 編もう。今日も、そして戦争を告げる、ハムを。だって、楽しいんだもん。


 プチ。


 そして、大統領が編んだハムは、翌日、あの平和の象徴だった花を踏み潰して、右乳首の向こう側、左側へと足を踏み入れてしまったのであった。

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