第10話 二話に一回会議してるね
イギリスが女の子なってしまった。
国交復活に向けて、アメリカは最後の手段として、ザリガニによって斬られた逸物、通称『元大統領』を木箱に入れ、記念に作った『元大統領』という地酒と一緒にイギリスに送り返すという作戦に出た。
しかし、これにイギリスは『イギリスからでもモロッコは見える』という一言のみで返事をした。
これはモロッコで改造手術を受けたカルーセル麻紀さんへのリスペクトを込められ、「もう男に戻るつもりはない」というアメリカへの決別の意味も込められていた。
しかし、そんな日本人ですらわからないマニアックなメッセージ、アメリカがわかるわけなく。イギリスの返答はCIAの暗号班に回されたが、解読不能。
最終的に、イギリスに直接意味を聞くという、なんともお互いに気まずい展開になってしまった。
ついに追い詰められたアメリカは、決死の大逆転作戦『友達以上恋人未満作戦』に出ることを決意した。
その作戦の布石を打つため、アメリカはまたまたまた会議の場に赴いた。
アメリカが会議に呼んだのは国ではなかった。
それは、胸毛を剃るなと喚く、人権団体の面倒臭い幹部たちである。何かにつけてケチをつけてくるこの女たち。胸毛の前に立ちはだかる人柱。
敵に回せば、厄介きわまりなく。味方になれば、鬱陶しいことこの上ない。パートのオバちゃんの最終進化系のような女三人組。
まず、いい歳こいて、愛だの恋だのばっかりうつつ抜かすインドネシアの少女漫画家。
次に、事あるごとに「テーマは愛です」とほざき、自分の全裸の等身大パネルを被災地や恵まれない子供達に送りつけることで生業を立てる芸術家。
最後に、その二人になんとなくついて来てしまっている、ロシアの連れション評論家。『尿意にも社会主義を』がベストセラーになった。
誰が呼んだか、ブス核家族。上からお父さんブス、お母さんブス、子ブス。
それと対峙するアメリカの王。
この一番下が一本で立っているジェンガ並みに気難しい三人と交渉をすることを選んだアメリカ大統領。まさに背水の陣である。
「胸毛は剃らせません」
まずはお父さんブスの先制パンチ。
「テーマは決別です」
と、いきなり大統領にいつもと同じ全裸の写真を渡してくるお母さんブス。
「胸毛を剃る話をしに来たのではありません」
しかし、ここでアメリカが意外な攻勢を見せた。どういうことだ?
「胸毛はもう剃りません。そう決めました。ですから、今回の要求は二つ。まず、巨人に生えているギャランドゥは剃らせていただくということ。
それを剃らねば、手術にならないのだから」
大統領の言葉に、三人はヒソヒソと話し始めた。
「ねぇ、おしっこ行こ」「さっき行ったでしょ」「終わるまで我慢しなさい」
会議と全然関係ねぇ内容だった。
「そしてもう一つは、胸毛からの人柱の撤退です。あそこに人がいてはギャランドゥの爆撃もできません」
大統領とお父さんブスが睨み合う。
「本当に、胸毛は剃らないのですね?」
「ええ」
大統領は頷いた。
「わかりました」
交渉は成立した。
胸毛は剃らないのと引き換えに、手術をするギャランドゥは剃る。それで交渉は成立した。
しかし、和平に見えたこの交渉、これはアメリカの作戦であった。そう、これこそが『友達以上恋人未満作戦』なのであった。
翌日。
胸毛を守るための人々は、トラックに乗り込み胸毛を離れ、約束通り左乳首の拠点に戻って行った。
右乳首に陣取っていたアメリカ乳軍(巨人の上に長期滞在を余儀なくされたために臨時で作られた軍隊。カルシウムが豊富そうな軍隊)は、大統領からの勅令を受けた。
「ホワット!」
目を丸くした軍人たち。顔を見合わせ、集められた爆撃隊員たちはヒソヒソと話し声をあげた。
「いいから、やれと言っているんだ!」
「しかし!」
大統領の「祖国の家族は元気かなぁ」という怖い目によって脅された兵隊たちは『OH! HANAYAMA』乗り込んで行った。
そして、昨日の交渉で合意をしたにも拘らず、ギャランドゥから胸毛までを全て焼き払ってしまったのであった。
なんたること!
アメリカの暴挙に世界が湧いた。
そう、これこそが『友達以上恋人未満作戦』であった。
その全容を説明するべく、アメリカ大統領は、怒り狂ったブス核家族と欧州の大統領たちが揃った会議場へとやってきたのであった。
次回、また会議!
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