第21話 ハナヤマティアーノ ロナウド

 一方その頃、花山さんは。


 次々と搬送されてくる怪我人たちに、花山さんは病院狭しと駆け回る。


「花山さん! 新しい患者さんです」


 また、チチンコ族の爆撃で怪我をした人が運ばれてきた。


 とうっ!


 横の廊下から突っ込んで来たストレッチャーをハードルのように飛び越え、次の廊下から突っ込んできた車椅子のおじいちゃんを、側転→バク転→バク宙→ベリーロールで飛び越えた!


「うわあああああああ!」


 そして、最後の横から、ドラマ『ナースのお仕事』の観月ありさみたいにドジな財前教授が、キャスター付き台のボブスレーで突っ込んで来た!


 朝倉あああああああああああああ!


 財前教授の顔面にナースヒールのかかとを駆使したドロップキックを食らわし、花山さんが走る!


 人の命を助けさせたら世界一。


 どんどん、どんどん助けちゃる。


 もはや、この逆境を楽しんでるとさえ思える。


 壁にめり込んだ財前教授は「ず、ズビバベン」と言って力尽きた。

 そして、「テンテンテテン テンテンテ テンテン テンテンテテンテテン!」というナースのお仕事のあの呑気なBGMがかかってコマーシャル。


 ロビーはすでにコードブルー状態。


 大きな怪我から小さな怪我まで、治療の優先順を色で分けるやつを貼ったりしている。


 花山さんは患者とナースの波をかき分けて、二階から、階段の下に見える救急搬送のストレッチャーへ走る。


 しかし、その間に、怪我人たちが大勢いるロビーがあって走れない!


 うおおおおおおおおおおおおお!


 たまたま、上から垂れ下がっていた誰かの小腸 → 誰かのカテーテル → シャンデリア とターザンのようにぶら下がってジャンプを繰り返し、下のロビーを飛び越える。途中のコインも忘れずに全部取る。


 しかし、距離が足りない。


 はっ! 


 下から自家発電関がマワシを投げた。マワシは木の枝に引っかかり、花山さんはその回しに飛び移って、ジャンプ!


 振り子の勢いを力に乗せて、ロビーの窓ガラスの飴細工になってる部分に花山さんが突っ込んだ。バリーン! と飴でできたガラスが割れ……そこは本物のガラスだった。


「花山さん! そこ本物ですよ!」


 ジャッキーチェンで見た大NGシーンの再来。頭から血を流しながら、自家発電に親指を立てる花山さん。


「礼を言うわ、横綱」


 花山が来た。ストレッチャーが救急車から出て来た。レッツゴークールランニング。


 自動ドアが開くのすら待ちきれず、ガッシャーンとストレッチャーごと突っ込んだ! ガラスが割れ、警報機が鳴り響く。地獄絵図にさらに色を添える。


 しかし、すでに手術室はいっぱいだ。


「これ以上は給料外の仕事になるから、手術はしたくありません」


 このクソ忙しい時に、金持ちのボンボンのクソ野郎どもがストライキを始めやがった。


 手術室前にゴールキーパーが立ちはだかり、その手前には外科医がラインで並んでDFラインを形成している。


 手術待ちのストレッチャーは次々とDFとキーパーに弾き返させる。人の命をなんだと思ってやがる、クソ野郎がぁぁ!


 花山さんがキレた。


 花山さんが他の患者さんたちを掻き分けて前線に走る。


 そして、オフサイドラインギリギリのDFの間のスペースに入った。


「こい!」


 花山さんが「俺にボールをよこせ!」の頼もしいジェスチャー、他のナースからストレッチャーのスルーパスがきた。


 これに花山さんは反転しDFを置き去り。キーパーと一対一。


「うおおおおおおおおおおおおおお!」


 手術室に入れまいと前に飛び出したキーパー。これに花山さんはストレッチャーの上に乗っかり、キーパーごと吹っ飛ばす。


 勢いそのままに、桃白白のような体制で花山さんと患者さんが乗ったストレッチャーが次々と手術室に入っていく。


 花山さんの活躍のおかげで、死者は0人だったとさ。




















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