第2話 会議会議会議

 国際会議に集まった仲良したち。会議では巨人を今後、どういてこますのかが話し合われていた。


「あの、ウンコどうする?」

「どうするって流すだろ。うんこ」

「海だからな、もう最後まで流れてるだろ。うんこ」


 うんこうんこ。


 会議はウンコの話なので、うんこの話が中心になったので、うんこの話がほとんどであった。


 これに異を唱えたのが、眉間にシワを寄せさせたら、アンタが大将、ドイツは会場に飛び交う「ウンコ、ウンコ」という言葉にイライラしていた。

 しまいにゃ、「今、ウンコを止められなければ、我々がウンコだ」と言い出す国まで現れた。


 なんて下品な。誰だ、今の発言は? あ、日本だ。


「君たち!」


 ゲルマンの雄、ドイツ人が怒った。


「お前たちは、何年生だ! ウンコ、ウンコってここは小学校ではないぞ。もっと高貴な言葉で会話をせんか!」


 おぉ! おぉ!


 確かに。


 ドイツの発言に各国の偉い人は納得した。


 目から鱗であった。


 盲点だった、さっきからウンコの話ばかりをしていた。


 ウンコなどはしたない。ここに集まったのは、世界各国の智の巨頭ではないか。

「我々は、運ではなく、智でここまでのし上がったんだ」と日本が言ったら、ドイツが睨んだ。恐ろしいやつである。


 うーん。うーん。うーん。


 会議は平行線に運行した。「こっこっこっ」と時計の針の音だけが部屋に響く。

 ウンコの話がしたいのに、ウンコと言えないのではどうしようもない。

 「カレーでも食うか?」とインドが気を利かせたが、そんな気分じゃない。このままでは南米は巨人のウンコにやられてしまう。


 なんとかウンコの話をしなければ。


 各国のエリートが頭を抱えた。


 そして、この難題を切り裂くように手をあげたのは我らが日本だった。


「なんだ日本、まだ私に歯向かうというのか?」


 ドイツが三度立ちはだかる。この国がいる限り、下ネタは厳禁だ。


 日本は咳払い一つで、話を始めた。


「えぇ、我々の国にはビーチクという言葉があります」


 日本の語り部にドイツの表情が緩んだ。


 ほぅ。ビーチク。これは風流ですな。


「これは乳首をビートたけしが言い換えたのが始まりの、放送禁止用語をうまくオンエアーさせるための手法であります」


 ほぅ。


「てことで、ウンコをウンコと呼ばず、コーウンと呼び、もう一捻りして『幸せ』と呼ぶのはどうでしょう?」


 なんだと……日本、お前。


 ドイツの頭にお花畑が広がる。ピンク色のやつ。そこを家族と駆け抜けるドイツの偉い人。

『幸せ』

 この男の最も好きな言葉の一つである。


 ウンコを『幸せ』と呼ぶ。なんて素晴らしいアイデアなのか。


「さらに」


 日本は続けた。

 ドイツは驚いた。まだ、何かあるのかこの国は! さすがあの焼け野原から20年たらずで世界のトップに躍り出た経済力は伊達じゃない。


「幸せでは、少しキャッチーではないと思うので『ハピネス』と呼ぶことにいたしましょう」


 ハピネス。


 会議室に爽やかな風が吹いた。


「お父さん大好き」


 ドイツ人の頭の中で娘がそう囁いた。ハピネス。ドイツ野郎の最も好きな言葉の一つだ。

「確かに我慢したウンコをするときはハピネスだぜ」と、どっかの国が呟いた。厳粛な場にそぐわない発言に、みんな、無視した。

 無視したけど、みんな、心の中で「わかる」と呟いた。


 ということで、巨人のウンコは『ハピネス』と呼ぶことに決まった。


「で、」

 議長が言った。

「なんの話だっけ?」


 その言葉に一同、顔を見合わせたけど、「さぁ」と誰も覚えていなかった。


「いいじゃないか、ハピネスなら」


 ドイツの顔に笑顔が戻った。


 よかった。








 

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