第13話 サイテー
僕と抹茶は修復されて元通りになった家でコンドーム無しのセックスをし終えた。
僕らは汗ばんだ裸の体のまま自分から落ちる体液を畳の上にポタポタと落としながら、セックス後の高揚感を味わっていた。
抹茶を横目で見ると死んだ魚の目をしており、時折エメラルド色に発色する。
僕は生きた機械を連想した。
今や僕は彼女の中で動く機械仕掛けの歯車の一つになっている。
彼女の体内に埋め込まれたタイムマシンの心臓部なんかと共に。
その時僕の寝転んでいる部屋の掛け時計の鐘が鳴った。
それは十一回鳴った。
午後十一時になったということであった。
僕は一人で起き上がるとシャワー浴びに浴槽に向かおうとした。
立ち上がると腰だけ起き上がった抹茶が僕の左手をつかむ。
「どこに行くの?」
「シャワーを浴びようと思って」僕は疲れた体でボンヤリしたままそう言う。
「私はもう眠いの、ねえ、このまま寝ない?」
彼女の提案はどこか退廃的な趣を兆していたが僕はまた畳の上に寝転び目を閉じた。
僕の体に抹茶が密着してくる。朱鷺の背びれのような柔らかい感触を持った彼女は僕の胸を枕に眠ってしまった。
「すーすー」と抹茶の寝息が聞こえる。
それから抹茶は、
「あ、そう言えばあなたに眠る魔法をかけるのを忘れていたわ」と言って至近距離で僕を見つめその瞳をエメラルド色に発光させ僕に魔法をかける。
僕はその瞳を見つめながら眠ってしまった。
翌朝起きると僕はまた自分の体に新たな匂いを感じていた。
その匂いは睡蓮の匂いだった。
その匂いを嗅いでいると、僕はまた瞼が重くなり、また眠りの世界に落ちていった。
今日の仕事のことなど僕は忘れてしまっていたのだ。
だが眠ったのはほんの一瞬だけだった。
抹茶が肩を揺さぶってくる。
「今日は仕事行くの?今は朝六時よ」
「ああ、行かなくちゃ」僕は張り付く瞼を思いっきりこじ開けると平手で自分の頬をビンタした。
「あたしもあなたの学校に編入してもいい?」抹茶はそう言う。
「十七歳だし構わないが、入学費は?」
「魔法で札束作ればいいわ」
「それは犯罪だよ、抹茶」
「それじゃあ黄金でも作る?」
「それなら大丈夫だ」
「わかった、今日は錬金してそれを札束に変えてくるわ。換金所はわかる?」
僕はその場所を教えるとシャワーを浴びて学校へと向かった。
なんだか久しぶりの学校の気がした。
一日休んだだけなのに。
そもそも教師が学校サボっていいのか?
良いわけない。
僕は学校に入り受け持ったクラスの授業を進めていき、昼休みの休憩時になった。
僕は出前に中華そばを頼み、それを楽しみに待っていると職員室におかっぱの女の子、工藤粉子が現れた。
僕はそれを無視出来ず、工藤さんの方に向かっていくと、工藤さんは
「サイテー淫乱教師・・・」と言った。
「それは否定しないけど、僕に何か用があったんだろう?」
「今日欠席した風見優香ちゃんなんですけど、昨日から連絡出来ないんです、何か知りませんか?」
「いいや、知らないよ」
「その子に先生のことを聞かれたんです。どこの家に住んでいるかとか。それで知っていると思って」
「ちょっと待って、その子って」僕は昨日抹消された少女の外見を工藤さんに言う。
「そうです、その女の子だと思います」
昨日抹茶に殺された女の子がここの生徒だったのだ。
僕は胸をドキリとさせ、足が震え始めた。
その足の震えを隠そうと内股になる。
「あの、先生、また固くなってるんですか?私相手に?」工藤さんはそう言うと股間を睨みつけてくる。
「あのね、この前も言ったけど人の股間を睨みつけるものではないよ」と僕は言った。
「サイテー!!」僕は工藤さんにビンタされ、工藤さんは去っていった。
職員室は一瞬騒然となり、近くにいた同僚の教師に
「どうしたんですか?君島先生」と言われる。
「いや、あの・・・」僕はそこで足の力がへなへなと抜けて床に座り込んだ。
「大丈夫ですか!?」先生がそう言って僕の肩に手を触れる。
「大丈夫ですから、心配しないでください」
「僕はサイテーな教師だ」僕は小さくつぶやいた。
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