第32話 太陽が齧った月
私は自室のマンションの三階から見える月を見ていた。
月は黄色く朝食に太陽が齧ったように欠けていた。
私はみんなと遊び終わったあと家に帰っていた。
私は帰った後、手元にあった英語で書かれた専門書を読んだ。
心理学の本である。
それとなく先生の夢の話を思い出しながら読んだ。
しかしながら私は先生の夢は現実で起こったことだと信じていた。
なぜならその方が私にとって都合が良いからである。
「さて、今日も寝ちゃいましょうか」イギリスから持ってきた大きなテディベアのぬいぐるみにそう話しかける。
今日は暑かったのでエアコンで冷房をかけている。
それは静かな音で作動し、涼し気な弱い風を送ってくる。
私はぬいぐるみを抱きしめるとベッドの中にもぐりこみ、目を閉じた。
「君島先生、私を楽園へ連れて行って」私はそう言うと、眠ってしまった。
翌朝のアラームの音で目が覚める。
今日もまた暑い、寝汗をかいていた。
私は手早く顔を洗い、歯磨きをしてしまうと朝食にシリアルを食べて学校に向かう。
マンションから出ると幽霊がいた。
幽霊は金色に輝き、そこだけ夕暮れの中のようであった。
それが朝陽と別離して存在している。
私はまたそれに近づく。
触れるとそれはひんやりと冷たかった。
幽霊は私に何かを差し出す。
何かは歯車のようであった。
少し大きな歯車、空のグラスの底程の大きさだった。
私はそれを受け取ると幽霊は消えていった。
歯車は私の手に残った。
それを握っていると私はこの世界の一部になったように感じられた。
森羅万象の一部。
八百万の神の一部。
あるいはそれは楽園のお花畑の。
私は胸がムズムズとすると一旦家に引き返し、学校に連絡して今日は休むことを告げた。
高熱が出ていた。
何かのウィルスに感染したんじゃないか、とこの時私は思う。
あの幽霊のせいで。
私はアレルギーは持っていないが、一年に五回程風邪を引く、今回もただの風邪かもしれない。
はぁー、はぁー、と荒い呼吸をしていると抹茶ちゃんから電話があった。
学校の帰りにお見舞いに来るらしい。
正直有り難い。
私はベッドに入り眠ることにした。
ぬいぐるみをだっこする。
ペタリと頬をぬいぐるみの頬に付けるとぬいぐるみは犬の毛並みのようにふわふわとしていた。
「おやすみ」私はそのぬいぐるみの頬にチュッとキスをするとまた眠った。
幽霊にもらった歯車は机の上に置いてあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます