第23話 ステファニー・ミュート
「今日は先生方に連絡があります、昨日も転校生がこの高校に新たに入りましたが、今日も新しく転校生が来ます」
へぇ、春休みも近いのに今日、転校生か、僕はそう思っていると、
職員室の中に年配の男の体育教師に連れられ少女が入ってきた。
髪は黄金色で瞳は青い海原、体は北欧神話の神々のように白く、
その少女は年若くなったミューズだった。
彼女はフラフラと視線をあちこち行き来させ、やがて僕を見つめる。
白かった顔は僕を見るとほんのりと赤くなった。
僕は内心ドギマギする。
「彼女の名前はステファニー・ミュートだ」校長先生が言う。「ステファニーさんは海外から来た天才少女で既に何ヶ国語も話せるみたいだ、その内の一つに日本語も入っている。私と話した限りではネイティヴと遜色ない発音だった、ね?」と校長先生はステファニー・ミュートに話を振ると。
「転校生のステファニー・ミュートです、どうぞよろしくお願いします」ミューズの顔をした転校生は赤面した顔で若干緊張したような声でそう言うと、頭をガクッと前へ倒してお辞儀をした。
何処か危なっかしげな少女だった。
僕は彼女に近づく、
「なあ、ミューズじゃないのか?」僕はそう言うと、
ステファニー・ミュートと呼ばれる少女は赤くなった顔を更に赤くして、フルフルフルと首を振った。
「私はミュートと申します、先生」
僕はその少女の担任になった。
朝のホームルームで彼女を紹介すると、僕のクラスの生徒達は、
腐野さんに劣らぬ美少女だわー、とか天才少女ですって!?日本語上手いわねー、とか騒ぎ始めた。
ステファニー・ミュートはちょうど窓の傍の席の一番後ろになった。
抹茶を見ると彼女はやはり死んだ目をしていたが、敵対するような発言はしなかった。
抹茶は可愛い笑顔を作ると後ろの奥の方に座る新たな転校生をしばし見つめていた。
「綺麗な女の子ね、君島先生」抹茶は僕にそう話しかける。
ミューズの顔をした女の子に抹茶は何も気付いていないようだった。
「腐野、ミューズっていう女は覚えてないか?」
「え?誰それ?」抹茶はそう言って不思議そうな顔をしてみせた。
抹茶は首を傾げると、
「う~ん、聞き覚えない名前だわ。あとでステファニーさんに話しかけてみようっと」
ニコニコと笑顔になりながら言う。
あの新たな転校生は一体何者なんだ?僕しか覚えていないのか、ミューズという魔女については。
今日の新しい転校生をまた見ると周りの席の生徒と楽しげに話し合っていた。
授業の鐘がなり僕はクラスを出ていった。
昼休みになり職員室にいて今日は天丼の出前を待っていると、また工藤さんが現れた。
今日は工藤さん以外に二人を連れている。
抹茶と、
ステファニー・ミュート、
工藤さんがドスドスと足音を立てて僕に近づいてくる。その後ろを小動物な内股の歩き方でステファニー・ミュートが、抹茶が綺麗な歩幅を描いてやってきた。
「あんた、ステファニーさんに何かしたの?」工藤さんはそう言う。
『違うの工藤さん!ただ私が一方的に」ステファニーは赤面した顔で工藤さんに言う。
「知ってるか、お前ら、今日の僕の昼飯は天丼なんだぜ?」僕はそう言うと、
「それでは失礼します!!」ステファニーは工藤さんと抹茶の手を勢い良く取ると急いで職員室を出ていった。
「はて、今のはなんだったのかな?」僕は独り言を言うと、大好物である天丼を待った。
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