第30話 慣れた制服

 次の日も学校だった。私は着るのにも慣れてきた制服に身を包み、授業を受けている。


 こっそりとノートに昨日書いていた小説の続きを書いていく。


 大丈夫、先生には見つかっていない。


 私は授業中に小説を書くことにスリルを感じていた。


 ふとスマートフォンがふるふると震える。

 私はそれを机の下に隠しながらポケットから出して液晶を見つめる。

 イギリスの研究者からのメッセージだった。

 そこにはまた研究に戻らないか、と書かれてあった。

 

 私はそのメッセージを無視して学校生活を楽しんだ。


 ノートに書いていた小説は一旦やめにして、授業の黒板に書かれてあることを書いていく。


 私は昨日出会った機械仕掛けの幽霊のことを思う。

 私が研究室で作っていたもの、それは永遠を生きられることを夢見るただの物体だった。

 それはミイラ化された生き物と同じであり、その機械は未だ作成途中であった。


 そして私のもとに幽霊が現れた。


 何かの兆候なのだろうか。


 私はおもむろに抹茶ちゃんのいる右側の席を見る。

 抹茶ちゃんとは席が隣同士であった。

 

 抹茶ちゃんが私の視線に気付き、ニッコリと微笑む。

 彼女はロングヘアであったがどこか涼し気なサラサラとした髪をしていた。

 私もそれに笑顔で応じるとまたノートに黒板の文字を書いていく。



 やがてその授業が終わり抹茶ちゃんが話しかけてきた。

「明日の集合場所覚えてるよね?」

 そう私達は明日、遊びに行くのだ。

「それは覚えてるけど、ねえ、抹茶ちゃん君島先生は来られないの?」

「え?君島先生にも来てほしいの?」

「うん」

「そうねステファニーさんは君島先生にぞっこんだもんね」

 私はその発言に顔が赤くなる。

 抹茶ちゃんはちょっと意地悪なところがある。


「わかった、君島先生も一応呼んでみるよ」

「ありがとう」

 私は赤面した顔のままそう言うと、慌てて机に開いていた書きかけの小説をパタリと閉じた。



 週末の彼女たちと遊びに行く日になった。

 

 私は内心ドギマギしていた。

 もしかしたら君島先生が来るのかもしれないからだった。


 私は自宅でホットコーヒーを飲んでいた。

 ホットコーヒーはブラック、私はこの苦い味が好きだった。

 豆の香りをスーッと私の体内に取り込む。

 

 機械仕掛けの神を作る時のように。



 集合場所の駅前に着くと、未だ誰も着いていなかったが、直ぐに後ろから声がした。

 抹茶ちゃんに連れられ君島先生が歩いてきた。


「なんで、女子高生の遊びに僕も付き合わないといえないんだい?」君島先生はそう言っている。

 私は満面の笑顔を作ると、

「今日はよろしくお願いします、君島先生。あと抹茶ちゃんも」

「おはよー、ステファニーさん」抹茶ちゃんが言う。

「まあ、僕は一日、棒になるよ」

 私にそれに高揚とした笑い声を小さくあげると、工藤さんが雪子さんを連れてやってきた。


 全員揃った。

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