第40話 崩壊現場

 私の恋した相手は君島楽譜という教師である。

 二十五歳、私は十七歳である。

 彼を初めて見た時、心がドキリとした。

 それは奇妙な切なさを持って私の心に忍び寄り、ぐさりと棘を刺した。

 その棘は未だ離れない。


 初恋の痛みを私は永遠に忘れないだろう。


 彼も気付いている私の気持ちを。



 私は学校へ向かうと学校の門の前に工藤さんがいた。

「おはよう工藤さん」私はそう言うと、工藤さんは、

「あなた抹茶ちゃんと何かあった?抹茶ちゃんが昨日の夜電話かけてきた、魔法が使えるようになった、なんて言うのよ。それはステファニーさんにもらった力だって」

「それから?」

「彼女、私の部屋に瞬間移動して来てみせた。あれは本物よ」

「実は私も魔法使いなのよ。抹茶ちゃんが魔法が使えるようになったことはイギリスからのお土産にあげたものよ」

 私はそう言うと、工藤さんは悲しげな目になり、

「私達、友達よね?」と言う。

 私はそれに頷くと工藤さんはようやく笑顔になった。

 しかしその笑顔は切なさを秘めていた。


 私は二人して学校の中へ入っていった。



 隣の席に座った抹茶ちゃんが言う。

「ステファニーさん、私魔法使いになっちゃったけど、これからもよろしくね。あと、魔法が使えるということはみんなには内緒よ」と言って軽く赤面しながら言った。

「わかってるわ」


 君島先生が教室に入ってきて私に言う。

「とうとう始まったのか」

「そう、永遠が」

「機械仕掛けの神、か」君島先生はそう言うと、遠い目になり窓から見える空を眺めていた。


 私はその横顔にそっとキスをした。

 教室が騒然となる。


「みんなも私の一部になる?」私と先生を見つめる生徒にそう言った。


「ステファニーさんと君島先生って付き合ってるの?」

「違うわ、君島先生は抹茶ちゃんと付き合ってるの」私が言う。


 更に教室が騒然となった。


「先生ってそんな人だったんですか!!」雪子さんが怒髪天を衝く勢いで言う。


「悪いかい?」


「サイテーです!工藤さんが言ってたことは本当だったんですね!」雪子さんが君島先生に近寄り手を挙げる。

 私は雪子さんの手を持つと、

「ダメよ雪子さん、先生でしょ?」と言った。

 雪子さんはキッとした目線を私にも向けてくる。


 私はその目線に魔法をかける。


 全ては私の思い通り。


 雪子さんは無表情になり自分の席へと戻っていった。


 君島先生は驚いた顔でそれを見送っていった。


「僕はやっぱり君が怖い」君島先生はそう言うと教室を去っていった。


 辺りにはその魔法に包まれた生徒たちがただ呆然といた。



「大丈夫、みんな安心して!」私はそう言うと、みんなに魔法をかける。


 隣の席を見ると抹茶ちゃんが泣いていた。

「私が王女としてもっとしっかりしとけば!」抹茶ちゃんがそう言って嗚咽を漏らす。

「神に逆らえる王女がいると思って?」私はそう言うと抹茶ちゃんは無表情になり、死んだ瞳から菫色の瞳になった。


 私は世界を創造していく。

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