第17話 天国の門
目を覚ますと瞼の裏がピンク色でチカチカとしていた。
「起きたのね、あの魔女の名前はね」
「ちょっと待って目がチカチカする」
「え?あの魔女のかけた魔法は解けたはずだけど?」
「なぜかあの女とキスがしたくなる」
僕は息が激しくなり、抹茶は慌てて僕のおでこを触った。
「熱があるみたいだわ。もしかしてあの女にキスされた?」
「ああ」
「私とあの女の分のウィルスがあなたの体内に入って暴走してるのだわ、ちょっと待ってね」
抹茶は両手の親指で僕の目をこじ開けると顔を近づけエメラルド色した瞳を僕に向ける。
段々と瞼の裏で明滅していたピンク色が薄れていった。
「水を水道から汲んでくるからそのまま寝ていて」
抹茶が僕を離れて水道に向かい水を汲んでくる。
「これを飲んで気分を落ち着かせて」
差し出されたそれを僕はゴクリと一口飲み込んだ。
それはあの女の口の匂いと同じジャスミンの匂いがしていた。
「この水からあの女と同じジャスミンの匂いがする、体が引きずり込まれるようだ」
「ここはあなたの家よ!どこにも行かないわ!どうしましょ、どうしましょ」
抹茶は慌てた顔をしてフラフラと室内を行ったり来たりする。
僕はお花畑にいるような気分になり、口をだらりと広げて口角からよだれを垂らしていく。
魔法とは快楽、あの女のウィルスも快楽。
ウィルスが快楽なら死ぬこともまた快楽なのだろうか。
僕は天国行きの片道切符を手にしていた。
僕は段々とお花畑にいる気分が拡張され、幻覚が見え始めた。
或いはもう一つの現実。
ゆめまぼろし。
そこにはあの女が切り株の上に座っていて穏やかな風が吹く花畑の中、一糸まとわぬ姿で自慰行為をしていた。
僕はそれを見ているとなんだかあの女の子供になったような気分になり、僕もそれを真似する。
僕が自慰行為を始めたのを女は見つけると、女は自分がしている自慰行為をやめて僕に近づいてきた。
女は僕の性器に手を触れる。
柔らかいたんぽぽの綿毛のような感触だった。
それをゆっくりと上下に動かす。
右手は僕の性器に、そしてゆっくりと左手を動かすと自分の膣内へと指先を入れる。
女の北欧神話のような純白の体から体内へと続くその指先を眺めていると、僕はその女の秘部が天国に続く門に思えた。
「そうよ、ここの先にウィルスマシーンの心臓部があるの。私を止めたければただ私とセックスして私の膣内で射精すれば良いのよ。それでマシーンはショートして壊れる」
女はそう言って自分の秘部を広げる。
「どう、世界を救いたい?」
「僕はその門をくぐって天国に行きたい」僕はお花畑の中そう言った。
「じゃあ私の中に入りなさい」
女は草の上で寝転んでいる僕に重なると体がドロドロと溶け始めた。
「私と一つになるのよ」
「ああ、これが天国に続いていくのか」
「でもそれは未来へとは続いていないわ!」突然抹茶の声がして僕は現実に引き戻された。
僕はゼーハーと思い切り呼吸をし飛び起きた。
さっきまでの僕の部屋が見えた。
瞼の裏はもうピンク色に光っていない。
僕はグラスの水を恐る恐る飲み込む。
普通の水道水の味がした。
「あなた死ぬところだったのよ」抹茶がそう言って僕を泣きそうな目で見つめた。
「ごめんよ、君にも見えたのかい?あのお花畑が」
「見えたわ。あの女の呪縛の中に私達はいるみたい。もう私は魔力であの女には・・・」
「そう、なの、か」
「あの女があなたに触れたことにより、私とあなたの間に通っていた線を介して私の魔力を弱めたのよ。もうあの女の遊戯に付き合わされざるをえないわ」
抹茶は下を向いていたがやがて僕の方を向き、
「そうだ!また新しい最強の機械を使って私の魔法を復活させましょう!」
「最強の機械って言ったってどこにあるんだい?」
「未来に戻るのよ。あなたも来て」
「その前に一発やろうや」僕はそう言った。
「あら、あなた今日は積極的なのね」抹茶はそう言うと僕に抱きついてキスをした。
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