第18話 女の体内
そしてその後、抹茶はこう言う。
「じゃあ、今から魔法を使って私が住んでいた未来に行くわね」
辺りが輝き始めマグカップから上がる小さな湯気のように抹茶の頭に小さな天使の輪が出来てそこから湯けむりが部屋の天井へとプシューと昇っていく。
「あれ、魔法が完了しない・・・」
もう一回!と抹茶は言って、再び輝く、
また輝く、
そしてまた、
「未来に行けないなんて・・・嘘でしょ」
抹茶はそう言うとぺたりと床に座り込んだ。
女の子座りのその足から先は抹茶の履いた黒い靴下が床と擦れて、その隙間から抹茶の白い百合のような足が透けて見えた。
「どうしよう、もうダメかも。魔力がこれほどになくなってるなんて気が付かなかった」
抹茶は後部からガソリンが漏れる壊れかけの車のように、額から汗をブワブワと拭き始め、その滴が床に落ちていく。
その滴は床に小さな睡蓮の池を形作った。
絶望的な状況だった。
天国の門。
あのゲートの中のものを壊すにはあの女の膣内で射精しなければならない。
抹茶が顔を上げ僕に言う、
「あなた、あの女を堕として」
抹茶は敵の最高位の魔女が楽園に住む神話の女神であるのかのようにそう言った。
「そうしてあの機械を壊して」
見ると抹茶は泣いていた。
薄い血液が通うその抹茶の涙は僕に彼女が持っている心の在り処を教えた。
つまり抹茶はあの女に嫉妬していた。
「いずれはあの女が私を殺すと思う。その前にあの女とセックスしてあの中で射精してウィルス拡散兵器をぶっ壊して」
「それをするにはあの女を僕に惚れさせろと?」
「ええ、あなたなら可能だわ」
抹茶は瞳を強い光を発光させて言う。
その瞳はエメラルド色ではなくあの女と同じ青い海原の色だった。
その瞳を注視しているとなんだか僕はまたあの女と同じ空間にいるようであった。
「向こうからあなたに接触してくると思う。惚れさせなくてもいい、あいつを限りなく欲情させて、あいつとセックスしてメチャクチャにして」
「そんな宇宙の果てに行くようなことが僕に出来るかい?」
「宇宙の果てじゃないは、あの世の入り口よ。そこをぶっ壊すの」
「あの世の入り口か・・・」
「あの女の目的はウィルスを蔓延させて人類を滅亡させることだけど、あのウィルス受けて死んだものはあの女の体の一部になるの」
「そしてあの女と生涯を共にするのか」
「あの女は既に永遠に生きている」
「酸いも甘いも知っているということか、永遠に生きて尚且つ性交をしていないということは、それはもう無理なんじゃないか?」
「やるしかないのよ!」
抹茶がそう言うと、
「それより気持ち良いことを私がさせてあげるわ。私と共に生きるということは天国で生きるということよ」あの女の声が部屋に飛び込んできた。
僕にこの世界の行き末をどうしろと言うのだ。
そして僕はあの女の瞳の中に青い海原に、あの女の体内に放り込まれた。
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