第49話 糸引いた唾液切れる10cm
私と抹茶ちゃんは私の自宅のマンションに着き玄関の扉を開け中に入る。
早速私はエアコンの冷房のスイッチを入れる。
「結構広いんだね、ステファニーさんのマンション。エレベーターのボタンを見た限りでは十五階建てで、部屋の中も広々としてる。素敵だわ。それにステファニーさんの幻想的な雰囲気が室内にも表れていて家具なんかもちょっとファンタジック」抹茶ちゃんが靴を脱いで部屋に入って奥に進むなりそう言う。
「一応、私はお金が充分にあるから家具なんかはオーダーメイドで作ってもらってるの。ここの部屋、陽射しが良いでしょ?それで決めたのよ」
「ふーん、そうなんだ。
ね、飲み物ちょうだい。喉乾いちゃった」
「わかったわ。ラベンダーの香料を足した水を飲ませてあげる。私がいつも飲んでるやつ」
私はそう言って、冷蔵庫に向かい水の入った瓶を取り出し、食器棚からグラスを二つ机の上に置いた。
抹茶ちゃんはその机の椅子に座り込み、座り心地を楽しんでいる。
「このクッションいくらしたの?すごいふわふわ」
「う~ん、いくらだっけな。覚えてないわ」
「そっか。あ、水ありがとうね」私が渡した水を抹茶ちゃんはゴクゴクと飲んでいる。「凄く冷えててほんのりラベンダーの香りがしてとても美味しいわ。魔法の水みたいだわ」
「魔法とは快楽、って言葉抹茶ちゃん知ってる?」
「知らないわ。どういうこと?」
「私達が使える魔法は機械仕掛けなのはわかるわね?じゃあなぜ魔法が使えるかというと人間の持つ快楽をその機械でもって増大させて抽象的な欲望の形のようなものを私達は具現化することが出来るのよ」
「魔法のメカニズムってこと?」
「そうよ。なぜ快楽かというと、未来の世界では快楽が追求されていったじゃない?それはわかる?」
「うん」
「その快楽がもたらすメロディのようなもの全てを集めた集合体、それが機械仕掛けの神であったの。それがつまり私が見ていた過去と全ての世界であり、私なの。それを抹茶ちゃん、あなたが使った魔法でもって壊しちゃったのよ。その関係性を」
「う~ん、身に覚えないなあ」
「じゃあ、思い出させてあげる」
私はそう言って自分のグラスに注いだ水を一口口に含み飲み込む。
グラスを机の上に置く。
真剣な眼差しで抹茶ちゃんを見ると、抹茶ちゃんは不思議そうな顔で私を見る。
そして彼女も手に持っていたグラスを机の上に置いた。
夏休みのはじまりの日である。
私もまた王女と同じくらいのつまり最高位の魔法使いである。
神である身分ではなくなったが、つまり力はほとんどなくなったが、王女程の魔力は未だ持っていた。
私はその魔力を抹茶ちゃんにたった今使った。
私の青い海原の色をした瞳と抹茶ちゃんの全宇宙を秘めた瞳の視線が交錯する。
私は一方的に抹茶ちゃんに魔法をかけた。
抹茶ちゃんはただそれを受け入れている。
そうして魔法をかけながら私は抹茶ちゃんのピンク色の花弁めいた唇にそっと口づけをする。
それは契約の儀式の始まりである。
魔女が他の人間を自分の配下にするためにする契約の儀式。
抹茶ちゃんは気付いているのか、それとも何も気付いていないのか私には定かではない。
彼女から唇を離すと、唾液が糸を引いて私と抹茶ちゃんをつなげた。10cm程でそれはぷちりと重力により落下して私の水色のズボンにかかった。
抹茶ちゃんは下を向いて私の水色のズボンにかかった唾液を見ている。そして、
「ステファニーさん、私のこと好きだったの?もしかしてレズビアン?」彼女はそう言った。
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