第50話 新章スタート
ステファニーさんと抹茶が無垢な行為をしている頃、僕、君島楽譜はと言うと夏休み初日で家の中でステファニーさんから電話があった後眠っていた。
つまり夢の中、これは夢の中の話である。
夢の中でもやっぱり僕は高校教師でその学校はやはり風読高校であった。
僕の夢の中では高校は現実の夏季休暇の間だけ開校しており生徒が登校してくるようだ。
夢現だから多少は間違いがあるかもしれないが少なくとも僕は学校へと通っている最中であった。
僕は抹茶と一緒に登校している。
隣にはステファニーさんも共にいた。
ステファニーさんはこちらの世界では大きなマンションに住んでおり(十五階建てだ)僕も一度招待されて行ったことがある。彼女は両親と住んでいる。兄弟姉妹はいないようだ。
彼女はちょっとおバカな一面もあるが、比較的成績が良く友人への面倒見も良い。
それに対し、抹茶はと言うと・・・
「ねえ、君島先生。今日から学校じゃない?」と言って抹茶は言葉をとぎって、「あら、永い夢を見ているような顔をしているわ。こちら側が本当の現実なのよ」
抹茶は幼女の裸体の青白い背筋のような欠けた月の青白い口の裂けた笑顔のようなちょっと恐ろしいようなことを言う。
「こっちが現実だって?待てよ、これは夢じゃないのか?」
「あら、これが夢だって自覚している夢なんてないじゃない。あなた大丈夫?」
「夢だと自覚している夢もあるのよ、抹茶ちゃん。それは明晰夢と言ってね自分で自由自在に夢の中を作り変えることが出来るの。ちょうど世界の神のように」とステファニーさんが大人っぽい(お姉さんボイス)で微かな振動のある声で言う(その声は腹底から出ているようでピリっと空気がスパイスで揺られて色染められた)。
「へぇ、そうなんだ。でもこれが夢だとしたら本当の現実は?」抹茶が聞いてくる。
「本当の現実?君には未だ早いよ」僕はそう言うと笑顔を作った。
「えぇー、教えてよ君島先生」
「わかった、じゃあ少しだけ。その世界では抹茶と僕は同棲しているんだ」僕はそう言うと抹茶は顔を赤くして少しだけ怒った顔をする。照れ隠しだろうか。
「そんなのありえなーい、ふんっ」ふんっと言って抹茶は顔を僕から逸らす。「ねぇ、ステファニーさん」
「そうね、そんなのありえない」ステファニーさんもそう言う。
「その世界では君は未来の王女なんだ。それでだね、未来からやってきたんだよ。なぜかって?それは忘れちゃったよ」
「肝心なところで忘れてるのね。それで同棲って言うけど、もしかしてしちゃってるの?あれとか・・・」
「君は何しろ全裸でこの学校に着たからね」僕はそう言うと抹茶は更に顔を赤らめた。
「サイテー。君島先生の本当の現実こそ夢じゃない」抹茶はそう言って、ステファニーさんの片手を握って走って僕を追い越して行った。
「じゃあね、先に行ってる。たまってるんじゃない?」抹茶は後ろ向きに言って、ステファニーさんと一緒に駆けていった。
後には一陣の風がひゅるりと淋しげに残った。
僕は一人取り残され、夢から目覚めようと現実での瞼を開けようとした。中々楽しい夢だなとその時思った。
しかしいくら瞼を開けようとしても目が覚めなかった。
あれれ、おかしいなと思い、片頬をビンタしてみる。
効果がない。
もう片頬もビンタしてみる。
効果がない。
今度はつねってみた。
効果がない。
ナンダコレハ。
僕は夏休みの開店休業中の夢の中へ置き去りにされた。
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