第7話 都市を滅ぼせるくらいに強い魔法
「あら起きたの。あなたを寝室に運んで布団を敷いて体の上に布団をかけておいたわよ」
僕は起きると夕方過ぎであった。寝ぼけ眼で目をこすると抹茶の方を向く。
彼女は相変わらず体操服姿でピッチリとした赤色のズボンから覗く百合のような足をぺたりと女の子座りで畳の上においていた。
僕は口を開きかけたが、喉がカラカラなことに気がついた。
「水を持ってきてもらえないかい?」
「水道水でいい?」
「ああ」
抹茶はその場を去るとキッチンにドスドスと足音を立てて向かっていった。
女の子と二人きりの静寂が気になる。
僕は少し緊張していた。初めて風読高校に赴任してきた朝のように。
今ここにいるのは我が校の生徒ではなく未来から来たという機械仕掛けだか色仕掛けだかを使ってくる美しい女の子だった。
透明なコップに汲んできた水道水を抹茶は持ってきて僕に渡す。
僕はゴクリとそれを飲んだ。
外では未だ雨音がしていた。
その音に僕の喉を鳴らす音が混じる。
抹茶は僕の喉を注視していた。
僕は水を飲み込み、鼻で息を思い切り吐くと空のコップを畳の上に置いた。
「魔力が貯まったので仕返しに行きましょうか。それかセックスでもしましょう」
僕はその言葉にあまりにも気持ち良い感覚で夢現状態になり失神してそれからこの布団にいることを思い出した。
思わず心臓の音が跳ね上がる。
「仕返しとセックスは等価なのかね?」
「いや、男の人は性欲が貯まると何するかわからないって母さんに聞いてたし」
「それは誤解ですよ・・・」
「じゃあ、仕返しに行くわよ」
「仕返しって言ったってピストルを持っている人間を相手にどうするんだい?それも二人の」
「だから魔力が貯まったって言ったでしょ。やっとこの世界に順応出来たの。伊達に王女をやっていないわ。私は魔女として最高位の人間なの」
「魔女に位なんてあるのかい?」
「言ったでしょ、魔法は機械仕掛けだって。瞳に魔術の光の模様を当ててその人の魔法力を引き出すの。それによって位は違ってくる。そして私は王女。最高位の機械仕掛けの魔法使い」
「君は機械で出来てるのかい?」
「私は機械じゃないわ魔法の部分が機械なの」
「ふーん、よくわからないけど、君の使う魔法は強いってこと?」
「都市を滅ぼせるくらいにね」
「そんなに強いんだったら仕返しなんてしなくていいじゃないか」
「王家に反発する人間は抹消するの。私がこの世界に着いた直後は体がこの世界に順応してなくて強い魔法は使えなかったけど、今はバリバリ使える。多分向こうもそれを知ってるからどこかに隠れてるんじゃないかしら」
「わざわざ探すのかい?僕はもう少し寝たいな」
「ふーん、じゃあ私も一緒に寝ようかな」
「予備の布団があるよ。それを出してあげるから使いな」
「そうじゃなくてあなたの布団で眠るのよ」
抹茶はせかせかと僕の入っている布団に入ってきた。僕は慌てて布団から出ようとするが彼女の手が離さない。
腰だけ起き上がっていた僕は布団の中に引きずり込まれる。
そしてまた抹茶の顔を間近で見ていた。
「それじゃあ寝ましょうか」
また僕は力が入らなくなっていた。
喉がまた乾いてきた。
僕が喉が渇いてきたのを察したのか抹茶は唇をすぼめるとつばを貯めて僕の口の中に口移しで入れてきた。
僕はアルコール0%のドリンクによる酔いを感じた。
抹茶は口移しを終えると口元に付いた涎を拭って瞳を閉じた。
「おやすみ」抹茶はそう言って眠ったようだ。
僕もなんだか頭がトロトロとしてきて抹茶の中に引き込まれるように眠ってしまった。
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