第47話 出動

 私の黄金色の髪が夏の太陽に当たりキラキラと輝く、それを私は片手で肩のほうに押しのける。

 そうして歩いていくと抹茶ちゃんと君島先生の自宅があった。

 どうやらそこは貸家らしく、君島先生は借りている立場のようだが。

 私はそこのインターフォンをポチリと押した。

 ちょっと遠くの玄関の奥でピンポーンと間延びした音がした。

 家の窓辺には風鈴が吊るされてあり、今日は風があまり吹かないので音は出ていないようだが、風鈴はオレンジ色の金魚のマークが可愛らしく描かれてあった。


 やがて抹茶ちゃんが出てくる。

 抹茶ちゃんは登山に行くかのような重装備で分厚そうな迷彩の長ズボンに同じく迷彩の肘までまくったジャケットを着込んでいた。ジャケットのボタンは全て閉じられてある。

「抹茶ちゃん、どうしたの?」私はちょっと笑いそうになりながらそう言う。

「出動よ!!」

「は?」

「未来神社に出動よ!行くわよ楽譜。早く来なさい」抹茶ちゃんは玄関の奥にいる君島先生に後ろを振り返ってそう言っている。

「抹茶ちゃんそれじゃあ、重装備なんじゃないかしら。何も登山に行くわけじゃあるまいし」私は冷静にそう言う。

 その時風鈴が鳴った。

 その音に釣られたのか君島先生も玄関に出てくる。

 君島先生は半袖の白いワイシャツにクリーム色のズボンを履いていた。

「今、靴履くから待ってろ。全く抹茶はなんでこんなに朝からハイテンションなんだ?」

「だって、私と楽譜が...あれ、なんだっけ、あそこで私達行ったわよね。私がこの時代に着いた直ぐ後に」

「ああ、行ったとも。だけど...なんで行ったんだっけかな?僕も忘れちゃったよ」

「二人とも忘れちゃっていると」

「そうみたい」抹茶ちゃんはそう言うと、口をすぼめて腕を組んで片手を片頬に置き、足をクロスさせ考えるポーズをした。「うーん、覚えてない・・・」

「とりあえず行ってみるか、未来神社」君島先生がそう言うと、私達は未来神社へと出発した。

 なぜか抹茶ちゃんはでかいリュックサックを背負っていた。

 私も君島先生も手ぶらなのに。

 まあ、いいか。



 未来神社に着くと社はもうズタボロになっていた。

 そこには人気がなく、大きな石が社の屋根に突き抜けた跡が見え、賽銭箱は横に倒れて中に入っていた小銭が床にこぼれていた。

「まさかこんな有様なんてな。普段はここには訪れないけど、子供の頃よく遊びに来たんだ」君島先生が言う。

「私は多分、来るのが二度目だけど。ホントグチャグチャになっちゃってるわね」抹茶ちゃんが言う。

「そうね、未来神社。ここにいた神様はどうなってしまったんでしょうね」私がそう言うと、二人が私の方へと振り向いた。

 そのまま二人は無言で私を見つめる。

 私は二人をゆっくりと交互に見ると奥の方へ入っていった。

 土足でも大丈夫だろうか、と思うがそのまま進んでいく。

 境内の中へ入った。

 隕石の落ちた場所へと近づいていった。

「大丈夫?ステファニーさん、そんな奥まで行って?」

「大丈夫だと思うよ。もうここに警察の人とか来て一度通った後だと思うから」

「いや、ここはかなりグラグラになってるぞ。無理しないでなステファニーさん」


 私は奥へと進み、境内の床に落ちた隕石を見つけた。

 大きさは楕円形で一番長いところで2m程あり、短いところでは80cm程だった。

 私はそれに触れてみる。

 何も感じない。

「ねえ、抹茶ちゃんこれに触れてみて」私はそう言って後方の彼女を呼び出す。


 おそらくこの隕石は抹茶ちゃんの魔法だから彼女が触れることによって何か思い出すことになるだろうと私は予想する。


「わかった、触ってみるね、ステファニーさん」

 抹茶ちゃんは恐る恐る青白い手のひらでそっとそれを撫でた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る