第46話 有限か、無限か

 私は家に帰ると夕食も摂らずに眠ってしまった。

 起きた時は午前0時12分だった。

 喉が渇いたので冷蔵庫からドリンクを出す。

 いつもと同じミネラルウォーターにラベンダーの香料を足したそれを飲む。


 コクコクコクと喉を鳴らす。

 大分私は疲れていたが、睡眠を取りそれは回復している。


 明日からはどうしよう、なんて考える。


 イギリスに帰っても良いのだけど。

 ふと両親に抹茶ちゃん達を招待しなさい、と言われたことを思い出す。

 そうだわ、抹茶ちゃん達と一緒にイギリスに行こう。

 私の研究室を案内してあげよう、なんて思う。


 私は水を飲むとまた眠った。

 


 翌朝、電話の着信音で目覚めた。

 もう十時であった。

 誰からの着信かな、と思い電話を取り上げるとディスプレイには抹茶ちゃんと書かれてあった。

 それに出る。

「もしもし」

「ステファニーさん?後で未来神社に行ってみない?君島先生がどうしても行きたいんだってさ」

「いいけど、どうして?」

「あそこに隕石が落ちたでしょ。それで君島先生が何か思い出しそうなんだってさ」

「そう。じゃあ支度しとくね」

「私の家に集合ね。時間は十二時。私の家でご飯食べてから行こうね」そう言って電話は切れた。


 そうね、未来神社。

 あそこに世界が変わった日に隕石が落ちた。

 君島先生ならそれを思い出すかもしれない。


 君島先生は有限の世界か、無限の世界か、どちらを選び取るのだろうか。


 私はこの世界以外の時間を支配している。

 私が元々、世界を永遠に変えた理由はこうだ。

 人々はあの世の世界を段々と信じられなくなってきたのだ、だから私は現実の世界にあの世の世界を作った。いわば永遠とも言える、楽園の花園の世界。

 王女はそれを拒んでいる。

 なぜだろうか、私にはわからない。

 でも、私は王女のそういう所がとても好きだった。

 私に反発するもの、神に反発するもの、私はそれを許す存在だからだ。

 人を許し、好きになる。

 私はまた君島先生を思い浮かべる。

 それは本当に私の初恋と呼べるのだろうか。

 初恋。

 ああ、初恋やいずこへ。



 私はシャワーを浴びてから服を着る。

 今日は神社に向かうということなので、紫色の半袖のボタンがついているシャツに水色のズボンにする。

 そして私は自宅を後にした。

 やはり外は夏の陽射しでとても暑かった。

「猛暑、猛暑、朝から猛暑」私はそう独り言を言うと、抹茶ちゃんの家へと向かった。

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