第43話 ホワイトカレー
私は抹茶ちゃんと二人っきりでカレーライス屋さんに来ていた。
抹茶ちゃんが言うにはやっぱり夏休みの初めは辛いカレーでしょ、とのことだ。
窓から光が優しく入り込み、床板は茶色にほんのり黄色がかり、少しお洒落な店内であった。私は初めてここに来る。
私はホワイトカレーの辛口を頼み、抹茶ちゃんはグリーンカレーの激辛を頼む。
「大丈夫、激辛なんて?」私はそう聞いてみる。
「安心して、私辛いのへっちゃらだから!」抹茶ちゃんはそう言い、珍しくブルーの眼鏡をかけておりその眼鏡をクイっと人差し指を伸ばし持ち上げる。
「私も辛口だけど、ちょっと抹茶ちゃんのカレーも味見させて」なんて言う。
「いいわよ!」
「抹茶ちゃん、眼鏡どうしたの?いつもはかけてないようだけど」
「君島先生の眼鏡盗んできちゃった」抹茶ちゃんはピンク色の舌ベラをペロッと出して言う。
「ああ、君島先生は眼鏡時々かけてるものね。普段はコンタクトでしょ?」
「そーよー。今日はコンタクトみたいだから、私が試しにかけてみたの。未来には眼鏡なんてないでしょ?ちょっと古風かも」彼女はそう言ってウィンクする。
私は軽く喉に流すように氷の浮いた水を飲んだ。
その時、店内のBGMが変わった。
みとせのりこのvirge automatique ~疑似少女楽園廃墟Ⅱ~というアルバムであった。
抹茶ちゃんを見るとニコニコしていた。
「ねえ、この曲知ってる?」
抹茶ちゃんは首をフルフルと振り、「ううん、知らない」
「そっか。私音楽好きでこの曲もよく聞くの。明日はクラブよね。さっきまでクラブミュージック聞いてたんだ。今店内で流れてる曲はクラブミュージックじゃないけど」
「詳しく教えて。私音楽詳しくないの。この時代の」
みとせのりこが歌唱する曲を聞きながら私は抹茶ちゃんに今まで聞いてきた音楽を教えてあげる。
抹茶ちゃんはうん、うん、と頷き楽しそうに話を聞いてくれた。
やがて料理が来た。
「いただきます!」
「いただきます」私が言う。
スプーンを手に取りホワイトカレーを食べていく、甘くクリーミな乳製品っぽいカレーで後味がヒリヒリとして辛かった。
パクパクパクと食べていく。
抹茶ちゃんのカレーも味見させてもらう。
とんでもなく辛かった。
カレーを食べ終えてしまうと、店内は私達以外誰もいなかったので、しばらくの間、話に花を咲かせていた。
そしてみとせのりこのアルバムが全曲終わってしまうと、抹茶ちゃんは、
「あら終わっちゃったわね。それじゃあ、帰りましょうか、それともどっかよる?」と私に言う。
私達は席から立ち上がり会計を済ますと外に出た。
「あー、お腹いっぱいだわ。これから抹茶ちゃんの家に行ってもいい?」
「いいわよー」抹茶ちゃんはそう答えた。
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