第35話 里帰り
私がイギリスへと向かう時、君島先生と抹茶ちゃんと工藤さんと雪子さんが見送りに来てくれた。
成田空港から飛行機に乗る時に君島先生が話しかけてくる。
「向こうでは楽しんでくるんだぞ」
「ええ」私は答える。
「お土産はあんまり高いものじゃなくて良いからね」工藤さんが言う。
「向こうは日本と違って涼しいんでしょうね。是非お土産話を帰ったらして下さい」雪子さんが言う。
最後に抹茶ちゃんが、
「そう言えばあの時ステファニーさんが言ってた魔法って何のこと?」
「楽しみにしてて」私はそう言うと飛行機の搭乗口へ入っていく。
飛行機の中に入り、私は小さくあくびをする。
興奮で眠れなかったのではない。
私は緊張するとあくびが出るのだ。
それはまた恋のドキドキとは別だ。
キャビンアテンダント(CA)にコカ・コーラをもらうと一息つける。
私はそれを飲んでいると隣に座った年配の美しい女性が話しかけてくる。
「あなた一人でイギリスに行くの?日本語は話せる?」英語で話しかけてくる。
「日本語は話せますよ。私の家がイギリスにあるので」私は日本語で返した。
彼女はそれに笑顔になると、
「良かった日本語話せて、私英語はあまり上手じゃないのよ」
「とても丁寧な発音でしたよ」
「そう?ありがとう」
私はドリンクをまたストローで一口飲む。
「それじゃあ、里帰りにイギリスに行くのね」
「イギリスに帰って荷物を日本に持って帰るんです」
「荷物をわざわざ取りに行くの?送ってもらえば良いじゃない」
私はそれに笑顔を作ると、
「私はそれに手を触れたいのです、そしてそれを持ち帰る。日本へと」
「そうなの、あ、私には赤ワインをちょうだい」と彼女は通りかかったCAに言う。
「やっぱり、機内には酒よね。それじゃあ、私眠るからおやすみー」
「おやすみなさい」
私は本を読むことにした。
先にBGMを選んでしまうことにする。
携帯音楽プレーヤーで選曲する。
RadioheadのIn Rainbowsにした。
それを聞きながら本を選ぶ、と言っても少ない本しか持ってきてないが。
一曲目の15stepを耳で聞きながら本を選ぶ。
やがて飛行機は出発した。
イギリスへ。
私の被ったノイズキャンセリングヘッドホンが飛行機のエンジン音を遮音し、音楽を再生する。
私はそれを聞きながら本を読んでいるただの乗組員。
少し遠くに見える窓を見ると、小さな男の子が窓に顔を貼り付けていた。
窓の外には雲の上の光景があった。
「ああ、永遠か」私は独り言をいうと、本を閉じて、目を閉じて、眠った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます