第36話 ロマンティックな永遠

 目を覚ますとまだ窓の外は明るかった。窓際にいた男の子はもう飽きたのか窓から目を離し、携帯ゲーム機をしていた。


 私はヘッドホンを外した。

 途端に飛行機のエンジン音がしてくる。

 若干、頭がクラクラすると私はトイレに向かう。



 お昼時になりCAが食事を運んでくる。

 私は隣の席の女性に、

「お昼ですけど、何か食べますか」と肩を揺さぶって聞いてみる。

「いらないわ、着くまで寝てる」

「着くまでって半日かかるんですけど・・・」

「大丈夫よ安心して」そう言うと彼女はまた眠ってしまった。


 私は飛行機での昼食を摂っている。

 ハンバーガーにフライドポテトである。

 まあ、普通のファーストフード店くらいの美味しさかなと思いながら舌鼓を打っている。



 やがて飛行機はイギリスへ到着した。

 隣の席の女性は本当に到着するまで眠っていた。

 到着すると彼女は、

「おはよう、じゃあねご両親には良くするのよ」と言って降りて行った。


 私も手荷物をまとめると出ていく。



 イギリスのロンドンの空港はやはり日本の空港と同じでガヤガヤとしており、エアコンはやや弱めにかかっていた。


 私は小さく伸びをすると、体を浮かせてジャンプさせる。

 今日の私の服装は深い藍色のベルベットのコートに黒色のスカート同色の靴下とローファーである。

 空港で手続きを済ましてしまうと、出口に私の両親が手を振っていた。

 私もそれに手を振り返し、二人に近寄っていく。


「ステファニー、会いたかったよ」パパが私の肩に手を置きそう言ってくる。

「私もよステファニー、でも直ぐ帰っちゃうんでしょ。なんだか寂しいわねえ。夏休みになったらまた来なさいよ」ママが言う。

「二人とも久しぶり」私はそう言うと、空港の出口に行き、三人でそこから出た。


 久しぶりのイギリスの屋外はカンカン照りで日本に劣らず暑かった。

「いやー、暑いわねイギリス」私はそう言う。

「今日は特に暑いのよ」ママが言った。


 イギリスの空気は透明でやはりそこは夏だった。


 私達は三人して駐車場に停めた、車に入り家へと向かった。

 久しぶりに乗る我が家の車内の匂いは薔薇の芳香剤の匂いがしていた。

 それが私の鼻をくすぐる。



 家に着くと私は自分の部屋に入り、電話を取り研究室に電話する。


「えっと、私だけどイギリスに着いたわ。これから研究室に行く」

「ああ、ステファニーか!科学者として復活か!?」

「ただ荷物を取りに行くだけよ」

「なんだ、そうか・・・」私と同じ科学者の彼はそう言う。

 続けて彼は、

「それで何を取りに来たんだ?」

「機械の心臓部」

「機械の心臓部だって?勝手にそれを持って行っちゃダメだろう」

「どうしてもそれが必要なの」


 私がそう言うと彼は一旦黙り込み、

「どうしても、必要なのか?」と聞く。

「ええ、どうしても」

「じゃあ、バレないように心臓部のレプリカを作るよ。それで良いかい?」

「構わないわ。でもここにいるのも後、三日だけなの、その間で出来る?」

「全然出来る。じゃあ出来たら君にメールを送るよ」

「ありがと、じゃあね」

 私はそう言って電話を切った。


 機械の心臓部。


 私はそれを手に入れようとしていた。


 永遠を手にするために。


 或いは彼に永遠を与えるために。


 ここは暗闇のトンネルの中。


 ロマンティックな永遠へと続く。

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