第34話 埋め込まれた歯車

 明くる日の朝、私は抹茶ちゃんと一緒に登校する。

 朝のホームルームで君島先生が私と抹茶ちゃんをチラチラと見てくるのがわかった。


 抹茶ちゃんは微笑んでその視線を受けていた。


 やがて君島先生が去っていくと私は一息吐く。


 今日は快晴だった。

 窓の外からは飛行機が飛んでいるのが見える。

 ジャンボジェット機だ。


 私は一旦イギリスから帰って荷物を持ってくることにした。

 イギリスへ向かう旅客機のパスポートを持っている。

 イギリスへは今週の土曜日に向かう。


 私がイギリスへ帰ることは抹茶ちゃんだけが今は知っている。


 あとで先生にも話さなければ。

 二泊三日で帰る予定だ。

 私の両親は喜んでいたが、直ぐに帰ると知ると悲しそうな声になった。



 昨夜抹茶ちゃんが私のベッドで寝ている時、幽霊からもらった歯車を取ると私のお腹の中に当てた、それはスルリと中に入ってきた。

 

 私は幽霊の一部になった。


 それは抹茶ちゃんには内緒にしてある。


 抹茶ちゃんはスヤスヤとベッドで眠っている。

 私もまたそのベッドに入ると眠った。



 昼休み君島先生に一人で会いに行く。

「ああ、ステファニーさん。風邪はもう大丈夫なんだね?」

「はい、大丈夫です。それで先生、今週の土曜日にイギリスに一旦帰ろうと思います。荷物を取りに行くためにです」

「ああ、そうかい何日くらいイギリスにはいるんだい?」

「二拍三日いようと思ってます。水曜日くらいには学校に登校できそうです」

「わかったよ、ステファニーさん。楽しんできてね」

「ええ」私はそう言って笑顔を作ると、なんだか先生は訝しげに私を見つめる。


「君もしかして、あ、いや。まあいいや」

「なんです?」

「ミューズになってないか?」

「ええ、私はあなたの夢を信じていますし、私がミューズであることも理解しました」

「それじゃあ、抹茶は」

「その為の荷物をイギリスから持ってくるのです」

「終わりが近づいてるってことか」

「始まりでもあります」


 その時、君島先生は出前が来たことを他の教師に知らされ出前を取りに行った。


 私はその場を後にした。


 クラスに帰ると生徒たちが私に群がってきた。

「ステファニーさん、イギリスに帰っちゃうんだって?」

「でも直ぐ帰ってくるんでしょ」

「直ぐ帰ってくるんだ、それならいいや」と言って生徒たちは私から離れていった。


「お土産買ってきてね」抹茶ちゃんが近寄ってきてそう言う。

「あなたには特別なものを持ってくるわ」

「それって?」

「魔法」

「魔法ってどういうこと?あ、私が未来からタイムマシンを使ってきたことはみんなには言わないでね、念を押すようだけど」

 私はクスリと笑うと自分の席に戻っていった。

 

 私も昼食を摂る。

 抹茶ちゃんも席を近づけて一緒に食べた。

 工藤さんと雪子さんも一緒に。


 私の腹の中に埋め込まれた歯車も喜んでいるだろう。

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