刺し返す、という話

 格闘ゲームの技術が高まってくると、一番ダメージの大きい飛び込みが通らなくなってくる。コンボ火力が高くなる始動から順番に警戒するのは当たり前のことで、こうなってくるとお互いに地上に足をつけて有利な距離を手にするために打撃の応酬が始まる。


 地上戦の基本は置き、刺し、刺し返しだ。


 接近するための歩きやダッシュを止めるように技を先出ししておくのが「置き」。


 歩きなどで相手に近づいて攻撃を当てるあるいはガードさせるのが「刺し」。


 そして、相手が出した技の空振りの硬直を狙って攻撃を当てるのが「刺し返し」ということになる。


 刺し返しは当たらなかった技に対してカウンターのように技を当てる方法なので、私は長い間置き技に対して使うものだと思っていた。しかしこれは刺し返し、という言葉通り、刺しに対しても有効に活用できるのだ。


 今回はちょっと簡単な刺し返しについて考えてみたい。


 前述した通り、刺し返しは当たらなかった技に対して攻撃するので、当てにくる刺しに刺し返すという言葉はやや違和感がある。もし刺しをガードした後に反撃ができるならそれは反確ということになる。


 ただ困ったことに何もしなければ当たらない技、つまり置きに対して刺し返すのは難しい。


 まず相手がいつ置き牽制をするか、というのは簡単にはわからない。何度も対戦を重ねれば癖もわかってくるだろうが、そうなれば相手も対策をしてくるだろう。読み合いにはなるが、当然技術が必要になってくる。


 それに対して刺しはどこで行われるか比較的わかりやすい。まず当てることを前提に攻撃するということは当然間合いの中に入ってこなければならない。それにできるだけ早く当てるために先端当てを狙ってくる。


 また刺しにいくということは当然攻勢に出るためにするのだから、振る技もコンボの始動技や硬直差がいいものが多くなる。


 つまり相手が出す間合いや出す技を特定しやすいのだ。


 きちんとキャラ対策をして相手の強い技を知っていれば、早い段階で相手がキープしたい距離がわかってくるはずだ。


 それがわかればやることは決まってくる。相手の得意な距離に一歩踏み込んできたらすぐに下がる。すると相手の刺し技は空振ってしまう。そこに刺し返すのだ。


 この行動のいい点はこちらから相手の空振りを誘うことができること、つまり技が出るタイミングを予想しやすくなること。そしてもう一つはこちらから誘うことによって相手の刺しを抑制することができることだ。


 タイミングが予測しやすくなるということは対応するときに意識が集中できる。大足のような全体動作の大きな技を誘うことができれば確認して刺し返すこともできるだろう。焦って昇竜なんて撃ってくれたときには最大反撃から大きなリードを奪うことができる。


 そして何度もこの刺し返しを成功させれば相手も対応を変えざるを得なくなる。刺しにこなくなるということはこちらから攻め込むときに相手の刺しに噛み合うということが少なくなって地上戦を優位に展開することができる。


 刺し返しの難点としては技が当たったところでそのままコンボに移行しにくいということがある。相手の攻撃の先端を当てるように刺し返したところで食らいモーションは元々相手がいた場所、つまりいつもより遠い場所になることも多い。


 ロック系の技や投げ技、引き寄せ効果のある技なんかがあればその後のコンボが安定する。また前回話した突進技のようにリーチの長い技で追撃できると楽になる。


 そういう技がないキャラの場合は刺し返した後のセットプレイまで一緒に練習しておくといいだろう。刺し返された相手と狙って刺し返した自分側ではとっさに判断しなくちゃならない情報量が違いすぎる。多少のフレーム差はごまかせるので、たまにはフレーム差を忘れてずうずうしく歩いて近づいて投げをしかけたりするのもいいかもしれない。


 刺し返しが狙えるようになると、地上戦での考え方が広がって、間合いの意識がはっきりとしてくる。今の距離で有効な技は何か、ということを考えているとそれだけで落ち着いた対応ができるようになってくる。


 その分定石から外れた行動に意表を突かれてしまうことも多くなるが、相手の癖を見抜いて早く対応できるようになれば、格闘ゲームの奥深さにまた一つ手を伸ばすことができるようになるだろう。

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