ランクマッチ、という話

 格闘ゲームと言えば対人戦こそ最大の魅力だろうと思うのだが、長い格闘ゲームの歴史の中で対戦方法は少しずつ変わり、ゲームセンターでのアーケードからネットワークを介したオンラインマッチへと主戦場を移している。


 ネットワークの高速化に伴って、きちんと環境が整っていればいつでも誰とでも対戦することができるようになった。


 同人ゲームはプレイヤー人口も少ないので、対戦となるともっぱら同じ相手との連戦になるのだが、商業ゲーとなれば数万人規模のプレイヤーがいて、旬を逃していなければ様々な相手と対戦することができる。


 各ゲームによって用意されたモードはいろいろとあるが、メインとして用意されているモードはランクマッチだろう。ランクの通り対戦成績によってプレイヤーの格付けがなされ、より高みを目指す格闘の求道者たちの指標になり、あるいは初心者たちにとっては同格の相手と対戦しやすいというメリットもある。


 それを悪用した初心者狩りのような一部心無い行為もあるが、その話は以前に書いているので今回は置いておく。


 ランクマッチは自分のプレイヤーとしての実力をゲーム側から判断されるわけなので、対戦は真剣勝負で行われるし、自分自身にも言い訳ができない。対人戦というコンテンツにおいて最上の戦いができる場としてはいい環境だと思う。


 しかし、私もいくつかのゲームでこのランクマッチをプレイしているわけだが、一戦の重みも増してくるわけで、いつまで経っても妙に緊張してしまうものだ。ただでさえ大事な場面でコンボを落とす癖があるのに、ランクマッチではさらにその頻度が増す。さらに負けると悔しさも数倍で、連敗すると泥沼にはまることもある。


 格闘ゲームを楽しむというコンセプトのこのエッセイにとっては、ある意味で対極にいる存在なのかもしれない。


 とはいえ、格闘ゲームのおもしろさは単純な勝利だけではない。真剣勝負の中でこそ成長した部分が見えてくるし、反応できる行動が増えて相手の動きに対応できると新しい目標も生まれてくる。


 結局のところ格闘ゲームは自分の成長を楽しむものだ。RPGでキャラクターのレベルが上がったり、新しい特技や魔法を覚えていくのと同じように格闘ゲームではプレイヤーが新しいテクニックや技術を身に着けていく。その成果を一番体感できるのは真剣勝負のランクマッチなのだ。


 コンボの精度はトレーニングモードである程度確信が持てるが、実戦で使えると喜びも増す。対空への意識や牽制の振り方、空中喰らいで安く逃げた相手を追いかけるといったアドリブは実際にいろんな人と対戦してみなければわからない。


 それにCPUとは違い、対人戦ではこちらが知らないテクニックを相手が使ってくることもある。勝つために調べて練習した技を見せてもらうことができるのだ。同キャラ戦になると、キャラ差がなく実力がはっきりとわかる上に、自分の新しい目標としてコンボやセットプレイを知ることができるのだ。


 同人ゲームのような人口の少ないゲームをやっていると、どうしても人読みの部分が多くなってくる。牽制や対空がうまくなったと思ってもそれは人読みで出しているだけかもしれない。


 多くの相手と戦って、それぞれに得意不得意が違い行動パターンも変わってくる中で対応したり相手の癖を早く読み取ったりすることができると、自分自身が強くなったと感じることができるだろう。


 時には真剣勝負に取り組むことで新しい課題が見つかったり成果が確認できたりするもので、格闘ゲームの深みにはまっていけるのではないだろうか。

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