リターンをとる、という話
格闘ゲームには様々なテクニックが存在し、攻めや守りの場面で読み合いが発生する。テクニックが身につくと、取れる行動が増え、それに対する対策もとられるようになり、より深い読み合いを楽しめるようになる。
しかし、そうやってテクニックを身に着けていくとついつい勝ち方というものを忘れてしまう。練習した技がうまく決まることに集中してしまって、肝心の勝利を取りこぼしてしまうことがよくあるのだ。
格闘ゲームの勝利条件は、言うまでもなく相手の体力を先に0にすることである。つまりたくさんダメージをとる、言い換えるとリターンの大きな択を通すことには大きな意味がある。テクニックの練習ばかりで疲れたときにはそんな基本に立ち返りたい。
遅らせグラップのようないわゆる仕込み系の複合入力テクニックは相手のとってくる選択肢に対して広く対応できることが大きな売りになっている。しかしそういう行動は成功したときのリターンが比較的少ないものが多い。
複合入力で何度も択を通したり、守りを固めたりしていてもリターンが少なければ相手の太い択を一度もらうだけで試合がひっくり返ってしまうことも少なくない。
そういうときこそ基本に立ち返って火力で押し切るゴリラなプレイをちょっと思い出してみるのも悪くないのではないだろうか。
ほとんどの格闘ゲームで最も火力が出る選択肢は飛びだ。ジャンプ攻撃が当たれば着地してから地上始動のコンボがそのまま入る。補正を除けばジャンプ攻撃のダメージ分だけ火力が上がることになる。
だからこそ対空はどのゲームでも重要視されるし、初心者はとにかくジャンプをしたがるのだ。すべては飛びこそ勝利への最短ルートだからである。
例としてSFVの場合、地上コンボは弱始動で150前後、中強攻撃始動で200前後、といったところである。それに対してジャンプ攻撃からのフルコンボは310前後。これだけでどれほど差があるか一目瞭然だろう。
しかしレベルが上がってくれば最も警戒する行動は相手の飛びであり、きちんと上を見て落としてくるようになる。何度飛んでも昇竜拳で返り討ちに遭い、ひどいときはダッシュで潜られて背中からフルコンをもらったりする。
こういうことが続くと、もう飛びは通らないんじゃないか、と思ってしまって地上に足が張りついてしまうことも少なくない。
しかし、だからといってまったく飛ばなくなるのも問題だ。飛びは落とせていればいいが、食らってしまったら大ダメージ、ガードできても密着で飛んだ側が有利になるゲームが多い。守っている側としては絶対に食らいたくない技であることには違いない。
そのプレッシャーがまったくないとなれば、相手の心に余裕ができて、地上戦でも立ち回りに集中されてしまう。結局じりじりと形勢が悪くなるのは間違いない。せっかくの最強の武器を使わないなんて、剣道部が持っている刀を振らずに蹴りばかリやっているようなものだ。
その他にもリターンの大きな技は存在する。わかりやすいのはゲージ絡みだ。普段の地上牽制でもゲージ技に繋げられる場面ならリターンは跳ね上がる。ゲージが溜まったときは繋がる技を牽制で増やしたり、ものによっては自動発動するように仕込んでおいたりできると、相手もむやみに歩いて距離を詰めるのが難しくなってくるだろう。
またゲームによってはキャラクターによってリターンの大きい技が下段や中段に偏っている場合がある。そういうキャラはたいてい逆の択がリターンが小さくなっていてバランスがとられている。
そういうときはリターンの大きい択をガンガン見せていく方がいい。体力の残っているうちに相手に印象をつけておいた方が後々で逆転へのチャンスが巡ってくるはずだ。
プレイヤー自身や対戦相手のレベルが上がってくれば、当然通る択は狭くなっていき、弱始動や投げといった安い択ばかりが通るようになってくる。そのときにしっかりとコンボを入れたり有利な起き攻めに持っていったりすることも大切だが、当たれば大ダメージというジャンプ攻撃を見せて、相手に楽をさせないのも重要なことだ。
ボクシングでも12ラウンドの残り1秒でも顎にクリーンヒットを当てれば逆転KOがあるように、最後まで逆転勝利の可能性をちらつかせることが相手へのプレッシャーになり、勝利を手繰り寄せる力になる。そう信じて今日も昇竜拳を食らい続けたいものだ。
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