キャラの強みを生かす、という話

 格闘ゲームにはそれぞれプレイアブルキャラクターが用意されていて、その中から一人を選んでプレイすることになる。当然外見以外にも技の性能や体力、スピードなどでキャラは差別化されている。その中で自分に合うキャラを探してゲームを始めるというのは当然の流れだろう。


 さてキャラにはそれぞれコンセプトがあり、ゲーム開発側が想定しているプレイスタイルがある。古くから伝統的にある波動昇竜を主体とした『飛ばせて落とす』タイプ。逆に有利の多い技と中下段を駆使する『固めて崩す』タイプ。さらにシューター、投げキャラ、スピードキャラといったコンセプトは長い格闘ゲームの歴史の中で形成され、慣れてくれば一度動かしてみればだいたいのタイプ分けをすることができるだろう。


 実際にプレイが進んでいくと、プレイヤーによって様々なテクニックやスタイルが発見されて元のコンセプト通りにいかないことがよくあるが、とにかくそのキャラにはそれぞれ強い技やプレイスタイルというものがたいてい用意されているものである。たまにすべての面において弱い、と称されるキャラもいなくはないのだが。


 つまりキャラの特性に合わせてプレイングをしていくことが、そのままキャラを生かしてゲームを楽しむことに繋がっていくのだ。


 もちろんバランスのとれたキャラも用意されていることが多く、どの距離でもやれることがあるがそこそこの性能に収まっており、相手に合わせて柔軟に対応する、というコンセプトのキャラも存在する。そういうキャラはたいてい主人公に設定されているので癖がなく、とりあえず初プレイで選択されることも多い。


 その中でも比較的どこかに特化した性能を持つキャラは扱いに困ることが多い。やるべきことが明確であるがゆえにやることが単調になりがちで、相手にも狙っていることがバレやすく立ち回りで困らされることが多い。また得意な距離なら好き放題できるが、苦手な距離はとにかく辛く苦汁を飲まされる。


 特化キャラで一番わかりやすいのはやはり投げキャラだろう。近づいて強力なコマンド投げで相手の体力を奪っていくという近距離戦に特化したキャラだ。距離が離れてしまうとどうすることもできないが、投げられる距離にいれば発生の早いコマンド投げで強力なプレッシャーをかけられる。


 しかし、前回に話した通り投げは対策が明確でなかなか通らなくなることもあり、最近の投げキャラは飛び道具無敵技や対空投げといった投げ対策を咎める手段が用意されていたり、打撃も強めに設定されていたりすることが多くなっている。


 現在私が練習しているキャラは投げはそれほどでもないが連続した中下段択を相手に押しつけることによって強引に崩しを成立させよう、というキャラである。その代わりに技の発生が遅く無敵技にも乏しいため切り返しが辛く、前のめりに戦っていくタイプのキャラだ。


 こういうときに意識することはどうやって崩すか、ということではない。特化している部分は有利に戦えるのだからそこはやや強引で雑なプレイでもなんとかなることが多い。それよりも大切なのは有利な場面にまでどうやってもっていくか、ということである。


 このキャラの場合はとにかく自分から手を出すと発生負けすることが多いので、小技暴れのような雑な手段では返り討ちに遭ってしまう。かといって相手もそうそう大きな不利を晒すことはないのでガードしていてもジリ貧になる。そういうときは半端な技を一切切り捨ててしまうのが肝要ではないかと考えている。


 つまり一番ローリスクローリターンな行動とハイリスクハイリターンな行動を相手にしっかりと見せていくことだ。ローリスクの極み、つまりガンガードでこらえることとターンを入れ替えられるハイリターンなダウンがとれる技で暴れるという二択を入れていくのだ。小技暴れでは多少追い返したところで大きな有利にもっていけないのであれば、ハイリターンな択を通して、その後の展開で今までの借金を返していく、というスタイルが案外通用する。


 もちろん失敗すれば手痛い反撃を受けるのだが、相手としては強引な手段をとってくる、ということを意識せざるを得ない上に、中段技と違って足払いなどは決して見てから反応できるものではない。自然と様子見をする機会も増えて相手の攻め手を緩めることにも繋がる。そうすれば相手の固めや崩しを冷静に見極めることも容易になってよりガードのリスクを下げることができるだろう。


 キャラにはそれぞれ強い部分が存在し、それに向かって対戦全体を構築していく必要がある。太い勝ち筋を強引に手繰たぐり寄せる必要のあるキャラならばなおさらのことだ。そのためにはまず辛い部分をどうやって乗り切っていくかということに目を向けなければならない。


 どうしても強い部分に目が行きがちで、練習もそこを中心にしてしまうものではあるが、せっかくの練習が対戦で使えないのではどうしようもない。自分が相手を圧倒するシーンを頭に浮かべながら苦手な部分に少しずつ取り組んでいくしかないのだ。

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