格ゲーを聞く、という話

 格闘ゲームの戦いは目で見える技と読み合いが主であるという話は何度もしてきたところではあるが、それを補助、補完してくれる存在がある。それがボイスやSEである。格闘ゲームにおいては攻撃をした時や受けたときにキャラクターがしゃべり、攻撃が当たったり、ガードしたりすると相応の音が鳴るようになっている。


 ゲームとしての雰囲気づくりとして必要なことなので当然なのだが、これは対戦中にはいろいろな場面を認識するのに使えるのである。


 まずはコンボである。長いコンボになってくるとレシピもさることながらコンボの繋ぎタイミングを覚えるのも大変である。できるまでたくさん練習しろ、という声も聞こえてきそうだが、練習中もボイスやSEを参考にしながら覚えると繋ぎが覚えやすいので個人的にはオススメだ。


 元々格闘ゲームのボイスやSEはゲームセンターという騒音が多い場所を想定して作っていることもあり個性的なものが多い。「ジョインジョイントキィ」や「てやコン」に代表されるようにボイスやSEを元ネタにした俗語も多い。特徴的なボイスと騒音が合わさり、本来ならありえないような空耳がもてはやされることもある。


 私は特にコンボゲーをやるときはボイスやヒットSEをリズムにして覚え、そこからタイミングを掴むようにしている。あまり上手くないのでこれが結構助かっている。たとえばGGのソルの基本エリアルである「JS>jc>JSJHS>SVV追加」(これが格闘ゲームをやらない人には呪文か文字化けに見えるらしい)なら、「オゥオゥテェヤーヴォルカニックヴァイパーベシッ」である。プレイしたことがあるなら聞き慣れたボイスだろう。動画などで確認した後に同じタイミングでボイスが出るようにボタンを押すと上手くいくようになる。


 次に相手の技を認知するときである。格闘ゲームではキャラクターが技を出すときに技名などを言うことが多い。崩し技の中段などのボイスを知っておくと見えてなかったけど聞こえたのでガードできたということが起きるのだ。


 たとえばヴァンプリのサキにかかと落としという技がある。中段技なので崩しに使われるのだが、かなり早い段階で聞きやすい「まいります!」というボイスが入る。これを聞いてから立ちガードやリフレクト(ガード硬直が大きく減る特殊ガード)をするのである。


 サキのかかと落としはぱんつを見るのに忙しいのでボイスだけで対応できるのはありがたい。ボイスが出るのが早いのでリフレクトしたつもりが早すぎて逆にカウンターヒットをもらってしまうのはご愛嬌あいきょうだ。


 そして最後にヒット確認をするときだ。攻撃がカウンターヒットしたとき、通常ヒットしたとき、ガードされたときでSEはかなり違っている。エフェクトや文字で出てくる視覚情報以外に聴覚情報も足せば、より確認の精度が上がってくるはずだ。特にカウンターヒット限定の始動コンボがあるキャラやコンボを入れ込むと反確になるキャラを使っているときは少しでも確認精度を上げていきたいので、常に意識していく必要があるだろう。


 逆に自分が防御側に回ったときにはガードのSEが鳴ったので反撃を入力し始めたり、攻撃を受けたことがわかったのでバーストなどの防御システムを使う、といったようにより早い段階で対応をはじめることができ、それが有利に対戦を展開させてくれる。


 反確がある技や単発ヒット確認から超必殺技が入る技、ヒットとガードで連携を変える必要がある技、ガード不能だが対応策が用意されている技という風に早い段階で認知したい技は山のようにある。事前に知っておける情報とボイスを連携させておけば、いざというときに目では追えなくとも耳が追ってくれるということもあるかもしれない。


 ボイスやSEは格闘ゲームを華々しくしてくれる要素であると同時に対戦中にプレイヤーに様々な情報を伝えてくれる役割も担っている。プレイ中はついつい画面を見ることに集中してしまってなかなか思うように音が聞こえてこないものだが、それぞれの製作者が考えて作り、選んだボイスやSE、そしてBGMは格闘ゲームを楽しむうえで切っても切り離せないものになっているはずだ。


 たまには必死に練習するのを少し休んで、ゆっくりとそういった音を聞くことでまた格闘ゲームの違った楽しみ方を見つけてみるのも面白いかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る