画面をよく見る、という話

 格闘ゲームに限らず、初心者、中級者、上級者といった区分がつけられることはよくある話だ。様々な要素を総合的に判断して、そうでありながら観測者の主観が大いに混じった形で表現されるその言葉は、時にいさかいに発展することもある。しかし、今回はあえて私の考える格闘ゲームの熟練度の基準の一つを述べてみたい。


 それは画面のどこを見ているか、ということである。


 初めて格闘ゲームをプレイしたとき、どこを見ているかと言われれば、ほぼ間違いなく自分が操作するキャラを見ているはずだ。自分の押したボタンとキャラの動きが把握できていないのだから当然なのだが、これがプレイしていくうちに見るところが変わってくるのだ。


 まず自分のキャラに慣れると次に視点は相手のキャラへと移動する。自分のキャラの動きがわかったのだから今度は相手の行動を見て自分の行動を選ぶようになる。こうなってくると初心者を卒業して初級者、という辺りだろう。相手のキャラを気にするようになると自然と自分が使っていないキャラについても強い攻撃やキャラの長所、短所を理解できるようになり、より格闘ゲームを深く理解しようとし始める。


 特に相手の反応を見るようになると人読みができるようになってくるので、読み合いがさらに面白くなってくる。相手がよく使ってくる技に気がついたらその技を潰せる技を積極的に振っていく。それこそまさに読み合いの最初の一手であり、これにどういう風に対応していくかを考えるのが格闘ゲームの醍醐味である。


 さらに進んでいくと、今度はゲージを気にするようにしてみる。ゲージとは画面に映っている様々な情報だ。0にすれば勝利できる体力ゲージ、強力な超必殺技を発動するために必要なスペシャルゲージ(各ゲームによって呼び方は様々)、相手が気絶するまでがわかるスタンゲージ、ガードクラッシュまでがわかるガードゲージ。それぞれのゲームによってシステムが違い、画面に表示されるゲージも様々であるが、折を見てこれらのゲージを確認しておけば今後の方針を立てる際に役に立つ。


 相手の体力が少なければ溜まっているゲージは次のラウンドに回すことができる。もう少しでスペシャルゲージが溜まりそうなら次のコンボ中にゲージが溜まりきり、超必殺技でコンボを〆られたりキャンセルシステムを使ってコンボがまだ伸びるかもしれない。スタンゲージやガードゲージが溜まっているならコンボや固めをスタン値やガークラ値の高いものに変更して有利に対戦を展開できる。


 では、いつ確認するのかという話になってくるが、常にキャラクターが動いている格闘ゲームで基本的によそ見は厳禁である。考えなしにゲージを確認すればその間に無防備になり、相手の攻撃を無抵抗に喰らってしまうかもしれない。とはいえゲージはアナログ表示なので一瞬でも見ればその長さからだいたいの値を把握できる。試合の中で攻防が止まる一瞬を見計らうことが中級者への階段なのだ。


 ではそれはいつなのか、具体的に考えてみよう。まずは自分または相手がダウンしたときである。足払いなどでダウンしたキャラは一定時間無敵のまま倒れ、その後起き上がる。ここに合わせて倒した側は攻撃をする(起き攻め)のだが、格闘ゲームの中では比較的プレイヤーが落ち着ける時間となっている。特に吹き飛ばすような攻撃でダウンした場合は攻め側は満足のいく起き攻めを仕掛けにくい場合があるので、そういうときは落ち着いてゲージを確認して今後の方針を立てていきたい。


 次に前々回述べた確反のときである。確反は読み合いなく一方的に攻撃が当たるので、確反の技を振りつつ、ちょっと視線を上や下に向けて必要なゲージを確認する。この後のコンボの方針も決まってくるので体力や必殺ゲージが基本になってくるだろう(確反は相手が攻めてきているときの切り返しなのでスタンやガードは関係ない)。ここからのコンボで一気に相手を削りきればテンションも最高潮。思わずガッツポーズも出てしまうくらい格闘ゲームで興奮する瞬間になる。


 そして最後にコンボ中である。コンボは練習すればするほど身についてくるので難易度の低いコンボは画面を見ずともできるようになる。超上級者なら目押しの猶予0Fコンボも見ずにできる、という人もいるようだが、基礎的なコンボだけでも十分だろう。コンボは相手を倒しきるか起き攻めを有利に運ぶために足元でダウンさせるかの違いで〆が変わることもあり、先にゲージを確認しておけばその判断も出来る。


 そして最後には間合いを見切り、二人のキャラの関係性を把握する境地に至ってくるのだ。なかなかに遠い話だが、楽しく続けていれば自然と見えてくるはずだ。

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