オリジナルの必殺技が欲しい、という話

 格闘ゲームにおいて必殺技といえば、キャラクターごとのコマンドを入力することで出すことができる技のことである。波動拳や昇竜拳と言えば代表的な必殺技で、格闘ゲームをやらない人でも聞いたことがあるだろう。


 格闘ゲームにはレベルアップで新しい技を覚えたり、エディット機能で必殺技を組み合わせたりというようなことはできないので、用意されたキャラクターの技を使って戦っていくことになる。


 では格ゲーにおけるオリジナル必殺技とはなんだ、ということになる。

 それはつまり、キャラクターの能力を最大限に生かすためにプレイヤーたちが開発したコンボやセットプレイのことである。


 MGSめくりゴールドスペシャル、F式やクロダサイクロンのように、開発したり有名な対戦で使用したプレイヤーの名前が冠されることが多い。地道な研究や練習を重ねて、研究成果を発表したり大きな大会で見せ場に成功させることで自分の名前を格闘ゲームの歴史に刻むことができるのだ。


 わたし自身はせいぜい中堅プレイヤーに片足を踏み込めたくらいのところなので、大きな大会に参加するようなことはない。しかし、格ゲーマーとしてはやっぱり自分が考えたオリジナル戦法を名乗ってみたい、という気持ちはある。


 幸か不幸か、格ツクゲーはプレイヤーが少ないので、丁寧に初心者向けの解説があるゲームなどほとんどなく、下手をすると全プレイヤーの半数程度が知り合いということすらありうる。そのため、コンボやセットプレイは自分たちで開発するより他ない。


 私はコンボ練習やコンボ開発が嫌いで、トレモをまともにやらないことは以前にも数度話題にしたことはあるが、そのせいもあって基本的にコンボは他人の借りものをありがたく使わせてもらっている。


 逆に苦手な重ねを補うために、私のトレモ時間はもっぱらフレームを埋める研究に使われている。


 フレームを埋める、フレーム消費、と呼ばれる技術は主に相手がダウンした際に攻撃をわざと空振りして硬直が終わった後すぐに攻撃を出すということを繰り返して、毎回一定の時間を測る技術だ。


 うまくフレームを計算して技を出すことができれば、起き上がりに持続を重ねることで有利フレームを増やしたり普段なら入らないコンボをすることができる。


 起き上がりにきちんと重ねられないと、弱攻撃や投げといった発生の早い攻撃で割り込まれてしまう。重ねは攻勢を維持するのに重要なのだ。


 そういうわけで、私はフレーム表とにらめっこしながら、よりよい始動が起き上がりに重ならないか、と研究をすることになる。


 強力なセットプレイが完成した暁には、「りおんスペシャル」あるいは「りおん式」を冠する技術がwikiに乗る日もあるかもしれない。


 実を言うと、数年前に「りおん式」セットプレイは一度お披露目されたことがある。


 私の動画配信で使ったもので、カラーズパーティーのルーというキャラクターで、


 ブルーファンタジア>2C>前J>低めJC(詐欺重ね)>昇りJB(F式)>カンフーキック!~


 というレシピである。無敵があり発生も早いのでコンボにも暴れにも使える超必殺技から相手のリバーサルを潰しつつ強力な崩しに移行できるというなんとも欲張りなセットプレイだ。


 これが見事に流行らなかった。


 理由の一つは、そもそもカラパがセットプレイでどうにかするよりもコンボを続けた方がダメージが入るゲームということだ。上記のレシピはゲージをすべて使うので、同じゲージを使えばそれなりのダメージを出すことができる。

 わざわざ失敗するかもしれないセットプレイに移行する理由に乏しかったのだ。


 もう一つは、私の練習不足で実戦投入ができなかったことだ。研究成果を発表したはいいが、練習が足りずに対戦中に披露することができず、いざやってみても失敗するというありさまだった。


 特に昇りJBのボタンが早すぎて地上Bブルースプラッシュに化けることが多かったので、このプレイミスをからかいをこめて「りおん式」と呼ばれる始末だった。

 とはいえ、有名プレイヤーともなればそんなミスにさえも名前を冠している。5様ムーンサルトとか。


 そういうわけでいつかは、と夢見つつ、トレモとwikiを見比べて、またセットプレイを考えるのだ。




 最近、3rd豪鬼にて、

 (画面端)滅殺豪波動(地上ヒット)>ダッシュ>移動中竜巻>移動リープ

 という持続重ねを開発したのだが、いかんせん相手は20年以上人気を保っている有名ゲーム。私が思いつくことなど「そこは10年前に我々が通った道だ!」と言われてしまうのがオチだろう。


 私の名前を冠したオリジナル必殺技が世に出るのは、まだまだ先のことになりそうである。

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