プレイヤーを固める、という話
敵を
格闘ゲームにおいてはそれを「固め」と言う。攻撃を相手にガードさせ、攻めの起点を作ることを言う。ここから有利フレームをとって打撃や投げをしかけていくことになり、密着で有利フレームをとりやすいキャラは固めが強い、と言われることが多い。
とはいえ、それだけをやっていてはパターンが少なくなってしまい、いずれ対応されてしまうことになる。かといって、一か八かの一点読みを繰り返していては、勝負は
ならばどうすればいいのか。
プレイヤーを固めてしまえばいいのだ。
とは言ってもプレイヤーを直接攻撃するわけにもいかない。オンライン対戦なら相手は世界のどこにいるかもわからない。某FPSではテロ組織の一員だと通報して対戦相手にリアルアタックをしかけた事件があったが、そういう意味ではない。
中間距離の立ち回りを考えてみよう。この時の攻防は相手に接近するためにジャンプやダッシュ、少し歩いて差し、相手の接近を追い返すための置きや差し返し狙いの攻撃などが考えられるだろう。
そのとき、もし対戦相手が完璧に対空をこなし、ダッシュを止め、差し返してきたとしたらどうだろうか。
相手はエスパーで自分の心を読み取っているんじゃないのか。なにかチートでも使っているんじゃないか。よくできたAIと対戦しているんじゃないか。そんなありもしない不安に駆られる。そうなるとこっちは下手な動きがとれず、安全にしゃがみガードを徹底して様子を見ることになる。
さて、ここで視点を対戦相手に移してみよう。自分は今、攻撃を当てていない。それなのにさっきから相手はしゃがみガードをしたまま動かなくなった。まさにプレイヤーを固めることに成功したのだ。
何もかも不安で動けない相手は簡単に近づいて投げられる。グラップだけを必死に入れるようなら打撃で崩せばいい。心理的に固まったプレイヤーはとっさの行動を考えて行う余裕がなくなっているから、本人の癖が反映されやすくなっている。
とにかくガードに終始する、小技で暴れる、無敵技で暴れる。
そういった癖をしっかりと確認し、それを崩す選択肢をぶつけてやれば相手の防御を突破するのは簡単なことだろう。
最近は中遠距離タイプを好んで使っている自分としては非常に大切なことだ。
中遠距離が得意なキャラはその性質上、近距離戦は弱く設定されていることが多い。五分五分か少し有利な状況くらいでは発生の早い小技や無敵技で簡単にひっくり返されてしまう。
ただし最速発生で負ける状況でも、相手が心理的に固まっているなら話は別だ。数フレーム反応が遅れれば状況がガラリと変わる格闘ゲームにおいて、ためらいは勝敗に大きな影響を与えるものだ。反対に自分は心に余裕ができて、相手の行動が手にとるようにわかることもある。
とはいえ、この心理戦には大きな穴二つがある。
一つは、勝とうとして行動する相手には通用しないのだ。
以前に「負け筋を潰す、という話」というテーマで語っているが、ガードを固めるということはつまり負ける要素を少なくすることで勝利を手繰り寄せる戦法である。負けないことを考えている相手ならこちらが対応力を見せれば固めることができる。
しかし、勝ち筋を突き進む相手にはあまり効果がない。飛びを通せば勝てると思っている相手は対空されても飛んでくるし、ダッシュを通して密着すれば勝てると思っている相手は前進を止めてくれない。通らば勝ち、とばかりに急に昇竜をパナしてくる可能性もある。ならば固まるまであるいは体力がなくなるまで対応し続ければいい。
しかし、そう考えるともう一つの問題が出てくる。相手のすべての行動に後出しで対応するのは困難だということだ。ここまで理想的なことばかり語っているが、実際の対戦において相手の飛びをすべて対空で落とし、ダッシュを置きで止めて、不用意な置きにしっかりと差し返してお仕置きするなどというのは不可能と言っていいだろう。相当練度に差がある場合は別だが、そんなに差がある相手ならそもそも対戦が始まった時点で相手は固まっているようなものである。
しかし、相手の行動を読んでしっかり追い返していると画面上で相対するキャラクターを完全に支配しているような一種の征服感を覚えることができるのも事実だ。この対戦は自分が盤面を握っているという感覚は、格闘ゲームで感じられる達成感の一つなのではないかと思うのだ。
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