勝利への道筋を立てる、という話

 格闘ゲームはどうやったら勝てるのか、という質問に対して答えるなら相手の体力ゲージを先にゼロにする、という答えで間違いない。しかしそんなことは誰もがわかっている。ではその方法をいったいどうすればいいのか。今回は体力を減らすまでの過程について考えてみたい。


 基本的に格闘ゲームにおいて体力が減る場面は二つである。攻撃を受けたとき、必殺技をガードしたときである。一部の通常技に削り効果がついていたり(コーディーのナイフ所持時など)、自分が攻撃することで体力が減ったりするキャラクターもいる(GGのABAやUNIのカーマインなど)。逆に体力が回復する場面は一部の必殺技(ストⅢのエレナのヒーリング)やゲーム内の共通システムによる(餓狼伝説のジャストディフェンスや北斗の拳の自動回復など)ものがある。


 体力が減るときの原因の大半は攻撃を受けたときである。立場を変えてみれば勝利するために必要なことは相手に攻撃を当てること、ということになる。では次にどの攻撃を当てるか、だ。


 少し大袈裟な例えになるが、読み合いを制して発生の早い弱攻撃を単発で三度当てたとしよう。しかし一度の読み合いに負けて相手の強攻撃を一発もらってしまった。このとき体力は間違いなく自分の方が不利になっているはずだ。これをもう少し敷衍ふえんして説明してみよう。


 一度の読み合いに勝った後のダメージは基本的にその後に続くコンボの総火力といって間違いない。つまりコンボを落とさない前提で考えるならよりダメージの出る始動技を相手に当てれば多くの体力を奪うことができる。では強力な技を何度も繰り返していればいいかというとそういうわけにはいかない。相手も危険だとわかっている以上警戒をしているし、そもそもそういう強力な技はたいていの場合当てにくいように発生が遅かったり判定は弱かったりするものだ。稀にそうではないものもあるが、そのときは対になる選択肢が弱く設定されているはずだ。万能な技など基本的にないのである。


 つまり相手との読み合いを制するにはリターンの低い選択肢をあえて選ぶ必要もあるのだ。その割合を決めることが勝利への道筋を立てるということであり、ひいては自分の格闘ゲームに対する姿勢を決めることになるだろう。


 まずは大きなリターンを求めて行動するタイプだ。相手が選んだリターンの小さい選択肢は甘んじて受けると決めてしまって、自分の最大火力の選択肢を押しつけていく。体力が高く、ハイリターンの割には攻撃が通りやすい投げキャラを使う場合はこういったプレイも十分考えられる。五回殴られる前に三回投げれば勝てる、というような大雑把な考えでもいいかもしれない。丁寧に対策されると思ったようにいかないこともあるが、攻撃が通ったときの爽快感は大きい。また自分から積極的に仕掛けていくことになるので、試合を握っているような気分が味わえるだろう。


 逆に読み合いでの勝利を優先するというタイプもある。たとえリターンが低くても読み合いに勝ちさえすれば相手の体力は減り、自分は減らないで済む。これを繰り返して徐々に有利を作っていくという考えだ。相手の行動をしっかりと把握して整理することが必要で人読みも重要になってくるが、技を押しつけているときには感じられない格闘ゲームの奥深さを体感できるだろう。


 もちろんこの二つの考え方は相反するものではなく、場面に応じて切り替えた方がいい。体力に余裕があるのならリターンを求めていくことでよりプレッシャーをかけることができるし、自分が画面端に追い詰められたときはリターンよりもまずこの場から抜け出すためにも読み合いに勝てるように行動すべきだろう。


 格闘ゲームのダメージにも乱数はないので同じ状況下で同じ攻撃を当てればダメージは一定である。つまりどれだけの攻撃を当てれば相手が倒れるのかを事前に知ることができる。その内訳を決めるのがまさに勝利への道筋だ。


 例えばゲージ技を当てれば三割、リターンの大きな択を通して四割、残りの三割は見切りにくい投げを中心に当てていく。といったものや、強力な通常対空を使って二割、繋がらないが発生の早い小技を刻んで一割、反確のとれるゲージ技で四割、残りの三割はコンボでとれるように始動技を強引にでも狙っていく。といったようにキャラクターの特性と自分の力量とを相談しながら自分なりの理想的なゲーム展開を決めてみるのはどうだろうか。実際にプレイしていると理想には一割も届かないことがままあるのだが、その違いも含めて考えてみると今後の立ち回りや練習する必要のある要素が見えてくるかもしれない。

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