同人格闘ゲーム、ヴァンガードプリンセス

 『ヴァンガードプリンセス』と聞いて、知っているという方は少ないだろう。少なくともこれまでに挙がった格闘ゲームのタイトルと比べれば知名度はかなり落ちると思われる。同人ゲームなのだから仕方のないことではあるのだが、このエッセイを通して多くの人に知ってもらいたい作品でもある。形は違えど、創作という分野においてこれほどの熱意が注ぎ込まれたことを感じられる作品は多くない。そういう部分も執筆をする私の心を射止めたのかもしれない。


 『ヴァンガードプリンセス』(以下ヴァンプリ)はスゲノトモアキ氏が2D格闘ツクール2ndで製作した同人格闘ゲームである。ツクール自体が古いため、現在市販されているPCならばほとんどすべてでプレイ可能と言ってもいい。たった一人で製作しながらそのクオリティは商業作品に劣らず、これが無料でプレイできるとは恐ろしい、とゲームライターが舌を巻いたほどの作品だ。ダウンロードして起動してもらえればわかるのだが、まずキャラクターが美しい。そして滑らかに動く。丁寧なドットを1フレーム単位で精密に描いていて、トレーニングモードでキャラを動かすだけで楽しくなってくる。


 そしてスゲノ氏のこだわりとフェチズムを感じさせるチラリズムの数々。特に主人公『忽那ゆい』の全動作の中でたった一枚、1フレーム(0.01秒)だけに見える黒スト越しのチラリズムにはエロなどという無粋な言葉では決して表現しきれない熱い造詣ぞうけいを感じずにはいられない。ミニスカートからチラリ、ロングスカートを振り乱してチラリ、大きく入ったスリットの隙間からチラリ。ありとあらゆる場所で発生するチラリズムには中段は見えなくてもぱんつは見逃すな、という言葉すら浮かんでくるほどである。


 話を戻すと、このキャラクターのドットだけでも素晴らしいのだが、ゲーム自体も面白い。まずはキャンセル猶予の長さである。格闘ゲームでは通常のボタン攻撃をコマンド必殺技で硬直をなくす、というテクニックが存在する。この入力が初心者には案外厳しいのである。ゲームや攻撃によるが、猶予は数フレーム(1フレームはゲームの単位で商業格闘ゲームでは0.016秒)から数十フレームというところで手に癖がつくまで練習しないと様々な状況を脳で処理しながら行う格闘ゲーム中に正確に入力するのは難しい。しかしヴァンプリではキャンセルがかからない代わりに前動作硬直中に次の行動を先に入力することで最速で技を出してくれるというシステムになっている。


 このおかげで初心者も簡単にキャラクターを思ったように動かすことができ、やったと思ったことが画面上で起きない、という格闘ゲームでは誰もが通る道を簡単に越えることができるのだ。


 続いては奥深い2体2のゲームシステムだ。メインとなるキャラクターにマスコットのような小さなキャラクターがサポートキャラとしてついてくる。いわゆるストライカーと呼ばれるゲームシステムは他にもあり、『電撃FC』でも採用されている。大きな違いはその利用回数だ。他のゲームでは一度サポートを呼ぶと使用不可能になり一定時間のチャージが必要になってくる。また呼び出す際には動作が必要になり、その際はメインキャラが硬直してしまう。


 しかし、ヴァンプリのサポートは最大5までゲージを溜めることができるゲージがあれば連続してサポートを呼ぶことができる。さらに予備動作は一切なく、攻撃を受けているとき、ダウンしているとき、一部の技を使っているとき以外はサポートを利用でき、完全に2体2という状態を生み出している。それが攻めている側も安心できないという緊張感を生み、ゲームを奥深いものにしている。それと同時に難しさの原因、ひいては私の敗因でもあるのだが、可愛いキャラを見ていると、まぁ仕方ないか、と許してしまうのだ。


 こうしてすっかりとヴァンプリの魅力に取りつかれた私は、PC用の安いアケコンを探しだし、ヴァンプリにハマっていくのである。


 前項でアケコンはHORI、と言ったのは嘘ではない。ただ、私が購入したのはバッファロー製のアケコンだった。あまり操作性はよくないが値段はRAPの1/10。とりあえず最初はこれでいいだろう、と購入を決めた。結局ボタンの効きが悪く、すぐに自分で換装する羽目になったのだが、それでも値段は1/3以下で未だに愛用している。しかし性能の悪さかそれとも格ゲーのアケコン需要が想像以上に少なかったのか、PS4用のアケコンはバッファローからは発売されていないようである。


 アケコンを手に入れ、練習を積み、コンピュータにも勝てるようになった。さぁ、次は対人戦である。インターネット対戦の方法を調べ、私は意気揚々とネット対戦の波に挑んでいったのだ。その先が骨すら残らない地獄の入り口だと知らないままに。

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