格ゲーをはじめよう

 ではどのゲームをプレイするのがいいだろうか。


 これの答えは既に決まっていて、「自分が面白いと思ったものをやる」というのが絶対に正解である。試しにプレイして楽しかったものでもいいし、キャラクターのデザインが気に入ったものでもいい。前項ではプレイヤーのレベルが高く、大変だということを書いたが、このエッセイはタイトル通り負けてもいい、負けても楽しいが主題である。勝つ以外の楽しみを見つけてスタートした方がストレスもなく長続きする。そして長続きすれば自然と勝利もときどきは手に入るようになるだろう。


 しかし、まったく分からない状態で始めようとしても数多くあるタイトルの中から一つを選び出すのは難しい。そこで私の体験談とともに格ゲーのはじめかた、を考えていきたい。


 私が最初にプレイした格闘ゲームはスーパーファミコンの『スーパーストリートファイターⅡ』だった。しかし、この頃は格闘ゲームの奥深さなどまったく知るはずもなく、友人とガチャガチャとコントローラーを押していただけだった。当時はインターネットなどろくに普及しておらず、ゲームセンターで交流するか専門誌を読むくらいでしか情報を得ることはできず、プレイも雑で波動拳すらろくに出せないほどだった。


 それからずいぶんと時間が経ち、執筆という趣味を得てゲームを卒業するつもりはさらさらないが、まとまった時間を要するRPGやシミュレーションゲームに手が伸びないという時期になった。そのとき友人の一人が勧めてくれたのが格闘ゲームだった。友人もどちらかといえば下手の横好き、というところで、ゲームセンターで乱入されればほとんど勝てない、というくらいのものだった。ブームも過ぎ去り、対戦相手に困っていた友人の思惑もあっただろうが、私自身が格闘技をやっていたこともあって、ゲームならまだできるだろうということで始めたのだった。


 そのときに最初に始めたのが『スーパーストリートファイター4』であった。ちょうどニンテンドー3DS版が安売りされており、前述のとおり子どもの頃にプレイしていた記憶があった私は、格闘ゲームと言えばこれだろう、というくらいの気持ちで手にとったのだ。この頃には私もインターネットの波にどっぷりと浸かっており、少しプレイした後に、有志が作るwikiを探して中を読み始めた。


 一言でいえばちんぷんかんぷんだった。まず並ぶ専門用語がわからない。二十年以上の研鑽けんさんを積んで様々なテクニックが蓄積されたゲームではいきなり入ってもまったく理解ができなかった。そしてさらに理解したところでテクニックが実践できない。コンピュータ相手でそうなのだから実践することなど不可能に近い。私以外のプレイヤーは全員チーターなのではないかと疑いたくなるほどだった。


 また格闘ゲームというのはそもそもゲームセンターで専用の筐体を使ってプレイすることを想定したゲームである。ゲーム機本体についているコントローラーでは物理的に押すことが難しいボタン操作を要求するテクニックも多々存在する。ここに来て何故3DS版の『スパ4』が安売りされていたのかが理解できた。そもそも携帯ゲーム機では格闘ゲームはやりにくいのである。


 さて困ったことになった。懐ゲープレイヤーの私の持っているゲーム機でインター

ネットに繋がるのは3DSくらいのものだ。据え置きゲーム機は未だにPS2が現役で居座っている。新しくPS4を買うには小さくない出費だ。まだ続けるとも決めたわけではない格闘ゲームに本体を買うか、と考えると躊躇してしまったのは事実だ。さて、そこまで考えてふと目の前の画面に気がついた。ここにあるパソコンでも格ゲーはできるのではないか、と。


 結論から言うと市販のゲームは不可能だった。現在はPC版の格闘ゲームもたくさん販売されているが、要求スペックが高いのである。ちょっといいモデル、くらいのパソコンでは太刀打ちできない要求量で、これなら据え置きゲーム機を買った方が安く上がる。そしてもう一つ驚いたのがコントローラーの高さである。


 現在、ゲームのアーケードコントローラー(アケコン)と言えば、HORIと言われている。格闘ゲーム向けのアケコン『リアルアーケードプロ(RAP)』はその操作感の良さと引き換えに二万円ほどという初心者にはやや手の出にくい価格となっている。ゲーム機本体と合わせてざっと六万円。そこにソフト代も乗るとなるとぽんと気軽に出せるほど、私の財布の口は軽くないのである。


 なにかいいものはないか、そう思ってインターネットで検索していると、一つの作品に辿り着いた。私を格闘ゲームの沼に叩き落とした正真正銘の神ゲー、『ヴァンガードプリンセス』との出会いだった。

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