突進する、という話

 三種の神器といえば、天照大神あまてらすおおみかみが授けた三種類の宝物で、それになぞらえて様々な三種類の便利なもの、使えるものをそう呼びならわしている。


 格闘ゲームにも三種の神器と呼ばれるものはある。


 波動拳、昇竜拳、竜巻旋風脚。


 格ゲー界で最も有名であろうストリートファイターの主人公、リュウの持ち技である。ここから派生して主に主人公タイプと呼ばれるスタンダードで扱いやすいキャラの技として飛び道具、無敵対空、突進技を三種の神器と呼ぶことがある。


 その他のゲームの主人公もだいたいこの構成になっていることが多い。遠中近でやることがなくならないので扱いやすい反面、はっきりとした強みがないのでプレイヤーの能力が試される技構成とも言える非常に奥深いものになっている。


 他にも1F投げ、対空投げ、移動投げ(または飛び道具無敵技)を投げキャラ三種の神器と言ったりするが、あまり聞くことはないだろう。


 さてその三つの内、今回は突進技について語ってみたい。


 私は安易で使いやすい突進技が好きだ。理由は単純で、インファイトにならないと格闘している気分にならないからだ。ガイルのような飛び道具が強い、いわゆる飛ばせて落とすタイプと対峙しているとしゃがみ歩きでじりじりと距離を詰めたり、こちらも飛び道具で相殺を狙ったりと難しくてやりがいはあるが地味な戦いになることが多い。


 その中で隙をついて突進技を繰り出せば、あっという間に間合いを詰めることができる。あわよくばそのままコンボにいけたりダウンをとったりすることもできるし、ガードされても不意打ち能力が高いので、以前話したぼったくりにいける場面も多くなる。


 なにより接近状態での殴り合いは読み合い勝負になるので、多少の運が絡んで勝ちを拾いやすくなる。


 そういうわけで、突進技は調整を丁寧にしないと猛威を振るってしまうことが多い。ガードさせて有利だったり、やたらと長い無敵がついていたり、発生が早いのに下段だったりすると、それを警戒するために他への対策が疎かになりやすい。


 突進技はその性質上中~遠距離で突然放たれる技なので、特に対の択として当たるとダメージが痛いジャンプへの警戒が薄れることも強さの一つだろう。


 そういうわけで適所でぶっぱなし気味に使っていくのが強い突進技だが、もちろんちゃんと考えて使った方がより強い技として使っていける。その作戦について考えてみたい。


 まず、使いやすいのは飛び道具対策だ。弾無敵やアーマーがあるならもちろん相手の飛び道具をぶち抜いて懐に飛び込んでいける。


 たとえ無敵がなかったとしても、飛び道具は弾を撃ち出してからも撃ったキャラは硬直が残っていることが多い。その硬直が長い場合は、前に歩いて少しでも早く弾をガードしてやれば硬直に突進技が刺さることもある。


 さらに距離調整のために前後に歩いているキャラに不意打ちで突進を当てに行けば、前に歩いたところに当てることができる。発生の早いものなら見てからガードするのは難しいので、相手をその場に居付かせることができる。


 相手が動かなければこちらの有利な距離を保ちやすくなったり、めくりがやりやすくなったりと攻めの幅が増えるので遠距離から固めるということができるのだ。


 また不意打ちの突進技には垂直ジャンプからの反撃が有効なため、相手の垂直を読んで距離を詰めたり、対空技や遅い飛び道具で狩る、といったこともできる。


 もう一つ特徴として、突進技はその性質上持続が長いものが多い。普通に当てると反確でも先端当てを狙ってやれば、微不利あるいは有利に持っていける。また持続が長いということは起き上がりに重ねやすいということでもあり、相手の暴れを抑制したり、起き上がりに持続部分を当てることで有利フレームをとったりすることもできる。


 また突進するということはリーチが長いということでもあり、すなわち相手のリーチのある技に反確がとりやすくなる。先端で当てれば不利だけど反確はない、と思っている相手に痛いおしおきをしてやることもできるのだ。


 有名なところでいえば3rdのケンや春麗はSCの発生が早く、突進系の技なので、多くの技に反確、場合によってはヒット時でさえ反確をとってくる。これも三強に数えられる強さを支えていると言えるだろう。


 突進技はその突発性と扱いやすさで、ともすると連発したくなるものだが、基本的にはわからん殺しやぼったくりといった相手の対応力に左右される技であることが多い。


 その特徴を生かして使いどころを見極めていけば、「突進技を持っている」ということだけでアドバンテージがとれる戦い方ができるはずだ。そのためにはとにかくたくさんの戦いを重ねて、経験を積んでいく。これもまた長く険しい格ゲー坂の一里塚なのだ。

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