格ゲー力、という話

 私は格闘ゲームが弱い、と言ってはばからないが、実際のところまったく勝てないか、というとそんなことはない。勝率は低いが、格上の相手にも運よく勝利をつかむこともある。では私がどうして格闘ゲームが弱いと思っているのか。それについてちょっと説明というか言い訳をしてみたい。


 タイトルに書いた格ゲーりょく、某アニメっぽく格ゲーぢからでもいいが、こんな言葉は恐らく用語としては存在しない。私が勝手に言っているだけだ。この言葉を定義するなら、『読み合いの前段階としての行動をきちんと行える力』、言い換えると『定石を体現できる力』ということになる。


 ややわかりにくいので例を挙げてみよう。中距離から相手がダッシュで近づいてきた。さてどうすればいいだろうか? 答えとしては前に強い攻撃や投げを置く(いわゆる置き)、ジャンプする(ダッシュ投げ回避)の二つになるだろう。


 気付けたタイミングでどれほど近づいてきているかということやキャラの特徴もあるが、だいたいこれが定石だろう。これを潰すためにすぐに止まったり、ダッシュから打点の高い技を出したり、空中投げをしたりといった読み合いに発展していく。


 同じように相手が飛び込んできたら対空技を振る。相手と密着状態になったら小技や投げを出す、といった状況に応じてもっとも勝ち目の太い選択肢をとることができる。それは私の考える格ゲー力、つまり格闘ゲームの基礎的な力なのである。


 もちろん最初に言ったようにこれがなくても勝てるときは勝てる。最終的に読み合いになることは間違いなく、意図せずとも相手の攻撃を潰したり、自分の攻撃が通ったりする。極論を言えばそういった定石を無視して昇竜を擦りまくって、昇竜とガード読み投げの二択を押しつければ、格ゲー力など完全にないものにすることも可能なのだ。


 これはリスクリターンがまったく合わないので普通のプレイヤーは試合中にずっとこれをやるということはありえないが、要所要所でこの読み合いを拒否した二択を押しつけることで基礎力以外の部分の戦いに持ち込むこともできる。


 ではどうしてこの格ゲー力が大事かというと先ほども述べたように、定石というのは場面ごとにもっとも勝ち目の太い、つまり多くの行動に対して有利な技である。完全にランダムに技を出してくる相手がいたとすれば、確率上とても有利に立ち回れるということである。


 そしてもう一つ、定石がわかっているということはその裏側。定石を潰す択に対しての反撃手段も用意しやすいということだ。きちんと自分の手札がわかっていれば、むやみやたらと行動することもなくなり、動きがスマートになってくる。そうすると動いていないときも相手にプレッシャーを与えられ、対戦を優位に進めることができるようになる。


 逆に格ゲー力のない行動を例に挙げてみると、これは一目瞭然だ。密着している相手にわざわざ大足払いを振っているプレイヤーがいたとしよう。確かに大足払いは下段技だし当たればダウンがとれるので、リターンも大きい。ゲームによるが立ち回りゲーなら一割近くの体力を奪える場合も多い。


 だが、発生が遅いせいでリーチの長さが生かせず、リーチはないものの発生の早い小技や投げに負ける(発生負け)。硬直が長い場合も多く確定反撃を受ける。といった問題が発生する。


 相手の行動によって勝ち負けを比較してみても、勝てる行動は立ちガードとジャンプ移行に当たるくらいで、弱攻撃、中攻撃、投げ、昇竜、しゃがみガード、バックステップといったよくある行動ほとんどに負けてしまうことになる。これを繰り返していれば当然体力はみるみる減っていき、こちらの負けがどんどんと近づいてくるということがわかるだろう。


 私の考える格闘ゲームが強い、というのは、この先の読み合いにおけるセンスの差だと思っている。つまりこの格ゲー力がない私は本来ならば強い弱いという言葉を使うのもおこがましいくらいの立場だ。

 ただ、一つ言えることはそれができなくても勝てることもあるし、なにより負けようとも格闘ゲームは楽しい、ということなのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る