リバーサル、という話

 リバーサル、という言葉はおそらく格闘ゲーム以外ではなかなか聞かない単語だろう。定義すると硬直が終わった瞬間になんらかの行動をすぐにすること、ということになるのだが、普通リバーサルというときは起き上がりの行動を言うことが多い。


 ただ今回は広義のリバーサル、つまりガードや着地後の行動について少し考えてみようと思う。


 『確反をとる』のところで話した硬直差、というものを覚えているだろうか。攻撃をガードしたときに攻撃側とガード側のどちらが早く動き出せるか、というものだ。この値が大きくマイナス、つまりガード側が早く先に動き出せると攻撃側に一方的に攻撃できる、という話だった。


 では、確反以外の硬直差はどうでもいいのか、というとそうではない。一フレームでも差があればこのリバーサルの場面で大いに差が出てくるのだ。


 それはどういうことかというと、同じ発生の技をお互いがリバーサルで出したとき、硬直差で有利な方が勝つ、ということになる。密着状態で攻撃ガードした、硬直が解けた瞬間に暴れに小パンを振る。攻撃側も固め継続のために小パンを振る。さぁどっちが勝つのだろうか?


 キャラクターによって発生が変わることもあるのだが、発生が同じ場合、前の技で硬直差が有利だった方が一方的に勝つ、というのが答えである。この辺りが格闘ゲームを難しくしている原因でもある。


 硬直差有利不利の状態というのは相手の攻撃のデータを覚えていなければまずわからない。何度もやっていれば体感でなんとなく有利や不利はわかるものはあるのだが、それは差が大きいときだけだ。数フレームの差となるとデータを確認するしかない。だから格ゲーマーはフレームデータ表とにらめっこするのである。


 そして硬直差を理解した後、さらに問題が発生する。リバーサルのタイミングである。


 狭義のリバーサル、つまり起き上がりの瞬間に行動するのはそれほど難しくない。というのも格闘ゲームにおいて起き攻め、つまり起き上がりに攻撃をするというのは攻撃側が圧倒的に有利な状況であるため、システムが防御側に少し優しくなっている。


 具体的には倒れているうちに入力した行動を、それができるようになった瞬間に自動で出してくれるのだ。受付猶予は大小あるもののほとんどのゲームでこれが採用されている。それでも0.1秒ほどの時間しかないのだが。


 問題は広義のリバーサル、ただのガード後や攻撃後である。これは少し先行入力を受け付けているゲームもあるが、基本的には自分でタイミングを覚えてボタンを押す必要がある。


 起き上がりのときは一度倒れてから状況を判断して行動を決める時間があるのだが、激しい攻防の一瞬をついて攻撃に転じるのは思っている以上に難しい。特に相手の攻撃をガードしているときは中段や投げといった崩しが来るかもしれないことを頭に入れておかなければならないのでさらに難しくなる。


 そういうときにやっぱり行動は遅れ、勝てるはずの行動で負けてしまうわけだ。


 最近ブレイブルーにおける一場面でこの苦汁を何度も舐めさせられている。具体例ついでに少し紹介しておきたい。


 ノエルの突進技、アサルトスルーはガードさせると硬直差-4フレーム。つまり防御側が4フレーム(約0.07秒)早く動き出せる。ノエル、カルルの2Aはどちらも発生7フレームなのでお互いがリバーサルで出せばカルルが勝つ、ということになる。そのはずだ。


 それなのにどうしてかこれが負けてしまう。原因はわかっている私がボタンを押すタイミングが遅いのだ。さっき書いたように早く行動できると言ってもたった4フレーム。少しでも遅れれば負けるのはおかしなことではない。


 さらにアサルトスルーは敵キャラをすり抜けて背中から攻撃する、つまりめくり攻撃であり、これをガードするのにレバーを逆に入れなくてはいけない。こちらは慌ててガードしているのに対して、相手は攻撃のヒット確認をしながらじっくりと2Aのタイミングを見計らっていればいいのだから、4フレームの有利などないに等しいのだ。焦って行動が遅れた私の耳に今日もカウンターを告げるボイスが届くのである。


 今回は少し広い意味でのリバーサルについて話した。ただこれは序章で、この先に続く攻防を理解するための土台である。そして理解したところで今度は落ち着いて判断し行動するための練習と経験が要求されるのだ。上級者への道は長く険しいのである。

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