閑話 女性陣の成果
とある森の中。
「師匠……私には才能がないのでしょうか?」
しょぼくれながら、茶髪の女性……セリアは言う。
「そんなことないよ。あんたは魔法使いの才能があると前から言ってるだろ? 急に弱音を吐くなんて、どうしたんだい?」
そんなセリアに対して、老婆はゆっくりとした口調で言葉をかける。
「……あの3人は……」
「なるほど。あんたの言おうとしてることは理解した。一応言っておくが、あの3人は異常なんだ。決して自分と比べるな。……と言っても比べてしまうだろうから、一つ助言をやろう」
老婆の次の言葉を、セリアは聞き逃すまいと耳を澄ます。
「明確な目標がある人間と、そうでない人間とでは、大きな差が生まれる」
「? 私には目標が無いと言いたいのですか?」
「そこまでは言わないよ。けれどあんたの目標を言ってごらん?」
「……できれば、大陸一の魔法使いになりたいです」
「それを目標だと思ってる時点でダメなのよ」
「どういうことですか?」
「大陸一じゃなく、世界一を目指せとは言わない。けれどね、できればなんて思ってる間は目標じゃない。ただの願望であり、夢でしかない。夢と目標では、まったくの別物なのさ。ただそうありたいと願うのと、そうあるために動くのとでは意味が違うのと同じように」
老婆の言葉を聞いたセリアは、理解したようなしてないような、そんな曖昧な反応をしていた。
それを見た老婆は、少し溜息をつきながら三つの場所を教える。
「今教えた場所に行ってみな。そうすればわかるさ」
「わかりました……」
セリアは老婆の言っていることがどういう意味なのかわかっていない顔をしながら、そう答えた。
ーーー
セリアは最初に教えてもらった場所にきて驚いていた。
「なんで……」
彼女の視線の先には、少し前まで一緒に魔法の訓練をしていた、マリーヌが居た。
だがただいた訳ではもちろんない。
マリーヌは、[火魔法]と[風魔法]の複合魔法である、ファイアーピラーを発動させていた。
それも三つも。
マリーヌより先に習得しているセリアであるが、複合魔法を複数発動するなどできない。
それどころか、やろうとしたことすらないだろう。
マリーヌは、四つ目を発動させようと詠唱をしている途中で、その場に倒れた。
それを見ていたセリアは、急いでマリーヌのもとに駆け寄る。
「大丈夫?」
「これは……お恥ずかしいところを見せてしまいました」
「大丈夫そうね。……それにしても今の魔法、凄いわ」
「……私なんてまだまだですよ……」
「そんなことないわよ!」
「いえ、まだまだなんです。まだ……まだこれでは足を引っ張ってしまうんです。……せめて自分の身は自分で守れるように」
マリーヌはそう言って自分の体を無理やり起こし、複合魔法を発動させた。
肩で息をしながら、それでもなお強くなろうとする。
そんなマリーヌの姿を見てセリアは、ようやく老婆の言っていた言葉の意味を理解できたような気がした。
ーーー
セリアはマリーヌのもとを離れ、二つ目に教えてもらった場所に来ていた。
「……」
そこには静香とホワイトが居た。
静香もマリーヌと同様に、複合魔法の訓練を行っていた。
ただ、マリーヌとは全く違う内容である。
静香はホワイトの放つ魔法を、全て防いでいたのだ。
より正確に言うならば、静香の周り覆っている結界が、ホワイトの魔法から静香を守っている。
ステータスではホワイトが全て勝っているというのに、だ。
その答えは、静香が使っている複合魔法にある。
名をリワイドバリアー。
[回復魔法]と[結界魔法]の複合魔法である。
効果はいたってシンプルで、結界を自動で修復するというもの。
けれどそれをセリアは知らない。
けれど静香がホワイトにステータスで劣っているのは知っていた。
そして静香も、この魔法を使えるのが片手で数えられる程しかいないことを知らない。
ーーー
セリアは、最後に教えてもらった場所に来ていた。
セリアの見つめる先には、ルーチェが居る。
ルーチェは何やら力を込めて、赤い玉を作り出した。
ルーチェが木を指さすと、赤い玉が、木に向かって飛んでいく。
赤い玉が木にぶつかったと同時に、木が勢いよく燃え上がった。
ルーチェはもう一度、赤い玉を作った。
そして赤い玉を、何もない正面に飛ばす。
赤い玉はまっすぐに進み、少ししてから爆発した。
赤い玉は砕け、いたる方向に飛んでいく。
ルーチェは[土魔法]で、かなり分厚い壁を作り、どうにか破片から身を守ることに成功した。
セリアは、場所的にルーチェの後ろだったので無事だった。
ルーチェが作り出していた赤い玉は、[火魔法]と[土魔法]で作った、マグマだ。
先ほど起きた爆発は、水蒸気爆発である。
ウォータボールを、水に当たらないように隙間を作りながら、マグマで覆って作った特殊な玉だったのだ。
遠距離かつ広範囲の攻撃。
それを見ていたセリアは、腰を抜かし、唖然とする以外の反応ができなかった。
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