第9話 ギルドのテンプレ
俺は全然反応が無い国王の前までやってきた。
と言うか田中とセバス達以外皆驚きで固まってしまっている。
セバス達はさも当然といた感じだ。
田中は俺を親の仇を見るような目で睨みつけてきている。
何なのコイツは?
わかるよ、俺があんまりにもチートだからむかつくとかそんな感じだろ?
でもそんな目で見るか普通?
まあいいけどさ、無視するから。
「こ、これは頼もしいな」
国王さんよ、声も震えてるし笑ってはいるんだろうけどかなりぎこちないぞ。
何? 怖いの? 自分達が勝手に召喚しといて?
俺としては異世界に来られたことは嬉しいんだけど、さすがにそんなこと思うのはあんまりだと思うんだよな。
「正門の兵士には言っておくからいつでも出て行って構わないぞ。他の者はまた明日模擬戦を行ってもらう。今日はいつもと同じようにダンジョンで訓練してくれ」
あれ? あっさりと出て行くことをみとめてくれるんだ。
なんだかんだ言ってこの国から出してくれないテンプレを考えてたんだけどな。
もしかしたらこの国はいい国なのかもしれない。模擬戦でのマルコの言葉がなければこの国に残っていたかもしれないな。
いやそれは無いか。勇者って立場のままだとどれだけ頑張っても何も貰えないだろうしな。褒美は欲しいです。貪欲なんで俺。
ーーー
「国王陛下から話は聞いています」
「あ、あの、よかったら握手してくれませんか?」
「おい、今は警備中だぞ! 私情は慎め!」
「で、ですが先輩。最後なんですよ? 今握手して貰っておかないともう今後無いかもしれないんですよ?」
「確かに一理ある。あのすみません、よかったら私も握手して貰っていいですか?」
なんだこの門番達は。
こんなのが正門の門番で大丈夫なのかよ?
は~~あ。今は自由に行動できるようになったから握手ぐらいいいけどさ。
俺は門番と握手してから正門を抜けた。
正門を抜けると目の前は町だった。
城下町ってやつだろう。
俺は模擬戦の後特に準備するものも無かったのでそのまま城を出た。
俺の後ろにはセバスとルーチェが居る。
静香とホワイトはまだ模擬戦をやっていないので一緒には来ていない。
静香は明日の模擬戦でおそらく自由の身になるだろうから旅に出るのは明日にしようと考えている。
それまではこの町に居ることにしよう。
居るのは良いのだが問題がある。
……お金が無い。
何をするにしても金が掛かるのに一銭も無いのだ。
明日まで城の中に居ればよかった。
今から戻るのもカッコ悪いから戻らないけどさ。
どうしたものか、別に俺は野宿してもいいがセバスとルーチェは違う。
二人にはちゃんと宿に泊まって欲しい、それに食事の問題もある。
異世界にきて初めて気づいた現実はとてもザンコクダ。
だがしかしここは異世界なのだ。
魔物が居て魔法が存在する世界。
俺の考えが正しければお金の問題は解決できるはずだ!
そうと決まればさっそく探さなければ。
「待ってください、耀様」
俺が町に向かって歩き出そうとしたとき後ろから聞き覚えのある声がした。
誰だったけな?
そんなことを考えながら俺は後ろを向いた。
そこに居たのは城に居たとき俺のメイドをしてくれていたマリーだった。
何で?
「呼び止めてしまってすみません。ですがお願いがあるのです」
「お願い?」
「はい」
マリーはそう言うと俺の前で正座のように座り両手を地面につき始めた。
おいおい、まさか……
「お願いします。私を旅に連れて行ってください。どんなことでもします。ですからお願いします」
「とりあえず顔を上げてどういうことか説明してくれるかな?」
「旅に連れて行ってくれると約束していただけるまで頭を上げる気はありません」
マリーは土下座しながらお願いしてきた。
訳がわからない。
どうなってる?
何、そんなフラグ立てた覚えないんだけど。
それとも国王からの命令か?
いくら国王でも自分の娘にこんなことさせるか?
もう訳がわからないよ~。
どうなってるんだよ~。
さっきから門番と町の人達の視線が凄まじく気になる。
そりゃ急に自分の国の姫様が土下座なんてしたら気になるよな。
普通しないぜどんな理由があっても……多分。
どうしたものかこのまま姫様を土下座させたままだと要らぬ誤解を招くよな、確実に…………もう考えるの面倒だ、えい。
あらま、成功しちゃった。
このスキルが成功するって事はそう言うことなのかな?
どこでそんなフラグ立てたのか全く身に覚えが無いが、俺に忠誠を誓っているってことなんだよな。
なら答えは決まったな。
「わかった。旅には連れて行くから頭を上げてくれ」
「ホントですか!」
「ああ、本当だ約束しよう」
「ありがとうございます!」
「わかったからとりあえず移動しよう」
「はい」
俺達はとりあえず町の方に向かって歩き出した。
門番が城の中に走っていったのが見えたが見なかったことにしよう。
かなり嫌な予感がするけど、今は考えないようにしよう。
もういいんだよ、眷属にしちゃったんだから面倒なことは考えない。
俺は歩きながらそれらしい建物が無いか見ている。
傍から見たら挙動不審の怪しい人って感じだろうな。
「何を探しているんですか?」
どうやら俺の行動をルーチェはわかってくれたようだ。
仲間からも不審者と思われたらショックで3日は立ち直ることができなくなっていただろう。
「ああ、コイツを売れそうなところを探してる」
俺は魔石を持ちながら言った。
これはダンジョンで倒した魔物がドロップしたものだ。
絶対に何かに使えると思って持てるだけ取っておいたのだ。
「それは魔石ですね。魔石ならどこのお店でも売ることはできますが、冒険者ギルドが一番高値で買い取ってくれるらしいですよ」
「やっぱりあるんだ、冒険者ギルド。思ってた通りだな。場所はわかる、マリー?」
「はい、一度行った事があるのでわかります」
「よっし、案内してくれる」
「もちろんです」
よかった、町の人に聞こうかと思ってたけどマリーが知ってるなら大丈夫そうだ。
俺達はマリーに案内されて冒険者ギルドの前まで来た。
冒険者ギルドは周りにある建物よりも二回りほど大きい二階建ての建物だった。
入り口は西部劇などでよく見る両開きのスイングドアになっている。
中が気になったので入ろうと入り口に近づいたら、中から物凄い勢いで剣が飛んできた。
俺はその剣の柄を左手で掴んだ。
別に避けても良かったのだが後ろにはマリーが居るからな。
絶対とは言えないがマリーでは避けるのは無理だろうと思ったから掴んだ。
それにしてもかなり物騒だな。
いきなり剣が飛んでくるとかヤバ過ぎだろ。
俺達じゃなかったらどうしたんだ? いやそれとも、この世界の人間はいきなり飛んできた剣を避けることができるのが普通なのか?
さすがにそれは無いか。
マリーがかなり驚いてるし。
どういう意図で剣が飛んできたのか聞かないといけないな。
理由しだいでは覚悟してもらおう。
耀は薄ら笑いを浮かべながらギルドの中へと入った。
中は左に5つのカウンターとカウンターの中に2階への階段があり、右には掲示板とカウンター、右のカウンターは1つしかないが後ろにいくつか大きな樽とジョッキが置いてあることから酒場なのだろう事は理解できる。
さて俺達に剣が飛んでくるような事になった原因と思われる、正面の武器を持った3人組と俺の足元で倒れている武器を持たない1人。
そして周りの机や椅子が壊れたり倒れたりしている事、ギルドの職員と思わしき人達が必死でやめるように叫んでいる事からこの4人の勝手な行動って事だろうな。
「すみません」
「ああ? 邪魔すんな今いいとこなんだよ」
「早くそこから逃げてください!」
声をかけただけなのに3人組のリーダーらしき男が倒れている人を指差しながら言ってきた。
それにギルドの職員だろう人も早く逃げろって言ってる。こんな奴等を放置してていいのかよ? 良くないだろ!
それにこいつ等倒れてる人にまだ何かする気だ、抵抗できない人を3人がかりでだ。
そんな奴等なら何しても言い返せないよな。
俺は倒れている人を3人組から守れるように倒れている人の前に立った。
「……なんだお前、邪魔すんなって言ったよな?」
「無抵抗な人がいたぶられるのをただ見ている趣味は無いんでね」
「何だと、てめえ喧嘩売ってんのか!」
「売ってんだよ、そんなのもわかんねえのか?」
「よっぽど俺達と遊びたいらしいな。お望み通り遊んでやるよ」
リーダー格の男はそう言うと持っている長剣を両手で握り耀に切りかかった。
(手を出さなくて大丈夫)
その行動に対していち早く動こうとしたセバスとルーチェに念話でそう伝えると耀は、今にも右肩を切り裂こうと近づいてくる長剣を、右手の人差し指と中指で受け止めた。真剣白刃取りの二本指版である。
「な! くっそ、動かねえ!」
「……ッフ」
「チッ。何しやがった貴様!」
「さあな? ただお前が弱いだけだろ。違うか?」
「どんな力を使ったか知らねえが調子に乗るのも大概にしとけよ」
「そっくりそのまま同じ言葉を返してやるよ」
「……お前等、殺れ」
今ので完全にキレたみたいだ。
後ろの二人も武器を持って襲ってきた。
一人は短剣を逆手に持って、一人は槍を両手で持って。
耀は押さえいた長剣を放す。長剣に全力を注いでいた男はいきなり放された事によって前に倒れるように体勢を崩した。耀は体勢を崩した男の鳩尾に蹴りを入れて、左に居る短剣を持った男のほうに蹴り飛ばした。さらに右の槍を持った男が状況を理解する前に男の懐に入って軸足を払い、体勢を崩したところに裏拳で床にたたきつける。
『……おおおおおおお!』
「スゲエ、何者だアイツ」
「速すぎて何をやったのか俺には見えなかったぜ!」
「俺もだよ!」
「今のが見えた奴は居ねえだろ!」
周りの奴等が五月蝿い。
ギルドの中には他にも人は居た。
居たのだが誰もが手を出さず、ただ見ているだけだった。
別にその人達が悪いとは言わない。
それが普通だから。
俺もただ助けた訳じゃない。
俺にメリットがあったからだ。
そのメリットを果たす為気を失っている3人の腰に付いている巾着袋を取っていく。巾着袋の中には合わせて銀色のメダルが5枚、赤茶色のメダルが35枚入っていた。これが多分この世界でのお金なんだろう。
いきなり剣が飛んできた事と剣で切りかかってきた事に対する慰謝料だ。
これで後俺が持ってる魔石を売れば宿に泊まれるだろう……多分。
耀はホクホク顔でセバス達のもとに戻った。
「「お疲れ様です」」
「ああ、ありがとう」
別に疲れてないけど俺を気遣ってくれてるのがわかったからお礼を言っておく。
マリーは俺の戦うとこは初めて見たんだっけか? 目を見開いて驚いてるよ。
倒れてる人は気を失ってるだけみたいだから大丈夫だろう。
それと飛んできた剣は倒れてる人のだろうから横に置いといてあげる。
「さてと、魔石を売って宿を探しますか」
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