第44話 オエステア大陸
オルカを倒したらそんな声と共に、このダンジョンに関する知識が頭の中に流れ込んできた。
「今は兎に角この場所から離れたい……」
同じ水の中だと考えると、いつ俺の居る場所までくるかわからない。
それどころか、薄れて見えないだけで既にきている可能性だってあるんだ
耀はそんなことを考えながら、アーシャ達の方を見る。
お兄さんもう限界です! 早く、早く!
そんな声が聞こえてきそうな表情をしているアーシャ。
レオさんはアーシャ姉と同じように嘔吐していた。
耀はそれを見て切実に、近くにいなくてよかったと思った。
「待ってろ、今助けてやるからもう少し我慢しろ」
耀はアーシャに向かってそう言うと、この空間に入ってきた入口に向かって[水魔法]をうまく使って移動する。
その後をアーシャ、アーシャ姉、レオさんの順で、[メーティス]水ゴーレムを使って続かせる。
もちろんしっかりと距離はあけて、だ。
そして耀を先頭にする形で、来た道を戻っていく。
ーーー
「やっと……やっと解放されたです」
「まー、なんだ……頑張ったと思うぞ」
木漏れ日の差し込む森の中で、耀は項垂れているアーシャに向かってそう言う。
耀の後ろでは、池に向かって嘔吐しているアーシャ姉とレオさんがいる。
「もう少し早く気づいて助けてほしかったです。それにお姉ちゃんが乗り物に弱いのは、前に教えたはずです」
「それは……」
忘れてたとは言いづらい。
そんなことを言えば、アーシャが怒るのは目に見えている。
それは非常にめんどくさい。
「いいです言わなくて、わかってるです。どうせグラムパスの洞穴についてしっかりと説明しなかったことの仕返しってところです。でも……」
なんで合ってるんだよ?
アーシャ姉とレオさんは想定外だったけど。
「ここまで酷い仕返しはもうしないでほしいです」
「いやいや、そこはこんなことはもうしないと約束するだろ普通」
「なんでそんな約束をしないといけないですか! そんなの全然楽しくないです!」
「楽しいとか楽しくないとかじゃないんだよ、お前達は命を狙われてるんだ。どこにどんな危険があるかわからないだろ?」
「それなら大丈夫です。覚醒もしてないのに【覚醒者】を同時に8人も相手にして勝ったお兄さんがついてるんです。アーシャの知ってる限り、お兄さんのそばより安全な場所なんて知らないです」
ある程度気づいてはいたが、アーシャの俺に対する信頼がかなり高いようだ。
一体どこにそんなフラグがあったのやら?
「それよりもお兄さん、ここどこですか?」
「……いいようにあしらおうとされてる気がするのは気のせいだろうか?」
「気のせいですよお兄さん」
いや、絶対にいいようにあしらおうとしている。
それはわかっている。
だが今回はうまくことが進んだから、あしらわれてやることにするか。
「そうか、気のせいか」
「そうです気のせいです。それで、結局ここはどこなんですか?」
「ここは、頑張って行こうとしてたオエステア大陸のどこか、だ」
「ど、どういう意味よ、それ」
必死に口を押えながら、絞りだすかのようにアーシャ姉が俺に向かって言ってきた。
「そのままの意味さ。今いるこの場所は、既にオエステア大陸ってこと」
「ちょっと待ってくださいです。アーシャ達はグラムパスの洞穴の中を、入った時と同じ道を通って出たはずです。なのに何故、違う場所に出てるですか?」
「それは、グラムパスの洞穴というダンジョンへの入り口が二つある、という特性が関係している」
「どう、いうことよ。もっとわかりやすく、説明しなさいよ」
「わかりやすく言うならダンジョンのボスであるオルカを倒すと、洞窟の中にあった入り口が、今いるこの場所に変わるってことだ。これは逆の場合でも可能だ」
といってもこの情報は、ついさっき頭の中に直接流れ込んできたものだけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます