第5話 訓練

 俺は今執務室に置いてあるような机の前に立っている。

 その机はとても豪華なものだ。

 そして椅子には国王が座っていて後ろには最初に国王に会った時にいた二人が立っている。

 神父のような服を来ていた人は、今日は茶色のローブを着ていた。

 俺の後ろにはセバスとルーチェが立っている。


 昨日ステータスを確認した後、話が終ったからマリーを呼んだら別の部屋に案内されて「この部屋を使ってください」といわれた。

 何でも人型の精霊や悪魔と契約できたら部屋を変えるらしい。

 その部屋は最初の部屋よりかなり広く左にはベッドが三つ、右は机と椅子、クローゼットまで置いてあった。

 

 その広い部屋に案内されて、真ん中のベッドでくつろいでいたら……朝だった。

 どうやらいろいろなことがありすぎて、気づかないうちに疲れていたらしい。

 俺より後に寝たはずのセバスとルーチェは俺より先に起きていた。

  二人に俺のステータスに関しては絶対に他の奴には言わないでとお願いし終わったあたりでマリーが呼びにきて今に至る。


「何の用でしょうか?」

「昨日言っていたであろう? 説明してくれると」

「すみません、何が聞きたいんでしたっけ?」

「もちろん君の後ろにいる二人が精霊と悪魔どちらかなのかと、何級なのか聞きたい」


 答えようと思ったらセバスから念話が飛んできた。


(主、何でしたら私の方で話をさせていただきましょうか?)

(いいのか? 正直めんどくさかったからまとめてくれるなら助かる)

(お任せください)


 話し合いは全てセバスに任せることにした。

 ルーチェが少し膨れているような気がしたが気のせいだろう。


「私達自身の話のようなので私から話させていただきます」


 セバスはそう言うと二歩前に出た。

 俺より前に出る形になっているのは意図してのことだろう。


「まず最初の質問は両方とお答えいたしましょう。私が悪魔で、そちらが精霊です」

「ありえない! 悪魔と精霊が同じ者と契約するなど今まで無かった!」

「確かに悪魔と精霊は同じ者と契約することは今までありませんでした。しかしそれを成し得るほど我が主は特別だということです。次の何級という質問ですが……私達は神級であるとお答えいたしましょう」

「な、何だと!?」

「ですから私達二人は、神級悪魔と神級精霊だと言っているのです。これは事実ですのでしっかりと受け入れてください」

「そんなことが……何ということだ……」

「後これは忠告になりますがあまり主の機嫌を損ねないように。もし主の機嫌を損ねたら……この国は私の手で滅びると思ってください」


 えらく物騒なこと言ってるな。

 別に止めないけど。

 多分脅しだろうしな。

 ……脅しだよね?

 何か国王と国王の後ろの二人物凄い汗出して震えてるんだけど?


「わ、わかった」


 物凄い勢いで頷いてるんだけど三人とも。

 俺は知らない。

 オレハナニモシテナイ。


「もう話が無いようでしたら主と私達は失礼させていただきますが?」

「ま、待ってくれ。この後の訓練は参加するのかね?」


 セバスがこっちを見て「どうしますか?」みたいな顔をしてきた。

 とりあえず頷いておこう。

 俺、能力は冒険の始まりから持っていたらおかしいぐらいの能力をかなり持ってるけど……使い方がね。


「はい、参加させていただきます」 

「そうなのか……訓練の場所は中庭となっている。場所はこの二人が案内してくれる。二人は王国騎士団の団長マルコと王国魔術師団の団長バールだ」


 どことなく残念そうな国王がそう紹介してくれた。

 団長ということは二人とも強いということだろうか?



名前 マルコ・ポートマン

性別 男


Lv 50

HP 435/435

MP 153/153

攻撃力 465

防御力 458

敏捷性 431

魔力 190

運 5


▼スキル

 [剣術 Lv5][盾術 Lv4][乗馬 Lv3][身体強化 Lv3]

 



名前 バール・ポイス

性別 男


Lv 48

HP 393/393

MP 474/474

攻撃力 341

防御力 310

敏捷性 302

魔力 493

運 8


▼スキル

 [火魔法 Lv4][土魔法 Lv3][乗馬 Lv3][身体強化 Lv3]



 能力は運以外高い。

 それに当然だろうが今の俺達より断然強い。

 でもなあ……何かすぐに超えられそうな気がするんだよな。

 俺のスキルがチート過ぎるだけかもしれないけど。

 正直ガッカリした。

 スキルの数もかなり少ないし……魔術師隊の団長だっけ? 魔法二つだっけって、まだマリーの方が多いよ。

 もういいや、さっさと強くなってこの国でてこ。






 二人の団長についてきて中庭らしきところまで来た。

 すでに俺以外の全員が集まっていたらしい。

 俺を案内してくれた二人が全員の前で自己紹介している。


 それにしてもいろいろな生き物が居るな。

 人型は俺と担任しか居ないみたいだけど。

 犬やら猫、パンダみたいなのまで居るな。


「ーーーー訓練を始める前にステータスの確認と武器を選んでもらう。ステータスが確認できた者から武器を選び、選んだ武器にあった訓練を行う。ステータスはステータスオープンと念じてくれればみることができるので確認の者がきたら出すように」


 自己紹介も終ったようでバールがステータスと武器について言っていた。

 なるほど。ステータスだけだと自分にしか見えなくて、オープンを付け加えると他の者にも見えるようにできると。

 とりあえず【神(仮)】と[眷属化]と魔法は光魔法だけにして後オリジナルスキルは見えないようにしてっと、これで大丈夫だな。




「次の勇者様どうぞ」


 もう俺の番か早いな。

 まあそりゃ十人同時にやったら早いか。


「ステータスオープン」

「どれどれ……えっ」


 この騎士の人俺とステータスを交互にめちゃ見るんだけど。

 まさか[完璧偽装]がうまく発動してないのか!?


「あの……よかったら握手してください!」

「は?」

「いえ、神級の精霊と悪魔と契約してされているようなので!」

「握手ぐらいならいいから早く終らしてもらえますか?」

「はい!」


 そっちに驚いていたのね。

 全く人騒がせな兵士だ。

 握手したらしたで、「これで俺も契約が成功する!」とか言ってたし。

 そんなんで成功する訳無いだろ。

 でも俺のステータスを紙に書いてくれたみたいだから何も言わないけど。

 これでこの国は俺が使えないと思ってくれるだろう。


「ではあちらで武器を選んでください」

「わかりました」


 武器は地面に布をひいてその上に置いてあった。

 いろんな武器が……ってほとんど剣しかないじゃないか。

 まあ良いけど、とりあえず俺は最初から決めていた武器が無いか探すとしよう。

 ……あった。


「その武器を二つもらえますか?」

「この武器を二つですか!?」

「はい、二つです」

「……わかりました」


 俺は渡された武器をよく見る。

 間違いない……これはだ!

 刀がこの世界にあるか不安だったけど。

 やっぱり日本人なら刀しかないよな!

 なぜ二本も刀を選んだかって? 決まってる二刀流はロマンだ。

 でも二刀流ってスキルあるのかな?


<獲得するのは難しいですがエクストラスキルに存在します>


 あるんだね!

 頑張って獲るしかないな!

 楽しみになってきた。


「主、よかったですね。気に入る武器がありまして」

「ご主人様、嬉しそうです」

「ああ、欲しかった武器があったからね。あれ? 二人は武器を選ばないの?」

「私は武器を使用いたしませんので必要ないのです」

「私も必要ありません」

「そうなんだ」


 二人とも武器を使わないんだな。

 魔法で戦うってことかな?

 まあ二人は普通に強そうだから心配ないけど。

 さて俺は刀での戦い方を学ぼう!




 ……シュシュ

 ……シュシュシュ

 ……シュシュシュシュ


 俺は今一人で二本の刀を持って素振りしている。

 セバスとルーチェは俺が素振りしているのを見ている。

 俺を指導してくれる人はいない。

 刀の使い方を教えてくれる人はいた。

 けれど指導してくれる人はいなかった。

 何故か?

 それは、二刀流は人間の中では伝説に近いほど使い手がいないそうだ。

 最初聞いたときは「嘘だろ」と声に出して言ってしまったほどだ。

 メーティスの言っていた通り二刀流のスキルはかなり獲得が難しいそうだ。

 でも俺は絶対に諦めない。

 誰かに教えてもらえなくても……何としてでも二刀流を手に入れてやる。

 何故なら……カッコいいから!


 ……シュシュ

 ……シュシュシュ


 どれぐらい素振りをしていたかわからない。

 兵士の人が「次の訓練を行うのできて下さい」といいに来るまで真剣に素振りをしていた。

 刀を鞘に直したらセバスが受け取りに来た。

 俺は腰に差したかったけど制服じゃ差せないからセバスに渡すことにした。

 ルーチェは俺にタオルを持ってきてくれた。

 そのタオルで掻いた汗を拭いてまたルーチェに渡した。

 二人ともとても嬉しそうにしている。

 正直なんでここまでしてくれるかわからない。

 非常によくできた執事とメイドだ。

 誰が見ても悪魔と精霊には見えない。


 兎も角兵士さんについていってあげよう。

 完全に空気になりかけていたからな。


 兵士につれられてきたら、クラスメイト達と魔術師団団長のバールがいた。

 まさか!


「ではこれから魔法の訓練を行う」


 きたああああああああああ!

 ついに魔法だ!

 セバスとルーチェにも[スキル・魔法コピー]を使ったからかなりの種類の魔法は使える。

 この国に居る間は光魔法しか使えないけど……使い方さえ知っていればいつでも練習できる!

 この話は真面目に聞こう!


「やっと魔法だあああああ」


 田中またお前か。

 わかる。魔法が使えるといわれれば興奮するだろう。

 だけど心の中だけにしとけ。

 バールもビックリしてるぞ。

 

「ゴホン、では魔法について説明する。君達が持っている魔法を使いたいと念じてみてくれ、そうすれば魔法を発動する呪文がわかるはずだ」

「……」

「……それだけ?」

「ああ、以上だが?」


 わかるぞ田中、多分皆同じことを思っていたことだろう。

 正直よく言ってくれた。

 でもそうか、いつでも使えたのね魔法。

 兎も角使ってみるか。

 光魔法……お、何か浮かんできた。


ライト

 自身の頭上に明かりを灯す魔法

呪文

 我 闇を払い 明かりを灯さん ライト


ホーリーボール

 光の玉を自分の手の平を向けた方に一直線に放つ

呪文

 魔を払いし聖なる力よ 魔を払う攻撃となれ ホーリーボール


 Lv1だからかな?

 かなり弱いよな。

 まあ、魔法は魔法だしとりあえず使ってみるか。


「我 闇を払い 明かりを灯さん ライト!」


 おお!

 俺の上にテニスボール大の大きさの白い玉が出て光を放っている。

 消費したMPは2か……今はまだ魔法は乱用できないな。

 でもラノベとかでよく言われている脱力感? みたいなのが無いんだが。

 無詠唱とかってどうやって手に入れればいいだ?

 教えて[メーティス]さん。


<魔法の呪文はイメージを補っているものなので発動を鮮明にイメージできれば無詠唱は獲得できます>


 ようは想像力ってことですね。

 俺そういうの得意だから簡単そうだ。




 俺にもそう思っていた時がありました。

 全くできないんだけど!

 何で!


<周囲の光景と魔法が発動したときの影響とが鮮明にイメージできていないからです>


 そんなの無理に決まってるじゃん!

 そんなことができたら目を瞑りながら歩けるよ!

 ようはライトの魔法を使ったとき周りに及ぼす影響を鮮明にイメージしろってことだろ。

 わかるわけねぇ、何人居ると思ってるんだよここに。しかも全員同じ反応するとは限らないだろうが!

 ああもう! 何かもっと簡単に手に入れる方法とか無いのかよ?


<あります。オリジナルスキル[メーティス]をイメージの補助にすれば発動することはできます>


 ……そんなこともできたのね。

 便利すぎるよ[メーティス]、今のところ一番使ってるよこのスキル。

 じゃあ[メーティス]イメージの補助頼める?


<かしこまりました。魔法発動時のイメージ補助……完了しました。以後魔法を発動する時は自動でイメージを補助いたします>


 ハハハハ……ホント何なのこのスキル?

 有能すぎでしょ!

 ただもっと早く教えてくれてもよかったかな……とは思うけど。

 兎も角使ってみるか。

 

「ライト」


 俺の大の大きさの白い玉が光っている。

 できてしまった。

 それも、いとも簡単に……[メーティス]様様だ。

 にしても手のひらの上に出せるとは……確かに俺が考えた通りの発動だ。

 しかしライトの魔法は頭上と制限があった。

 なのに手のひらの上に出せた。

 これは……イメージさえできればどんな魔法でも使える?


<いえ違います。正確には持っている属性の魔法に限定されます。それと[魔法創造]というスキルは無詠唱と全ての魔法が一つになったものと考えてください>


 うん、確かに言われてる途中で[魔法創造]のこと考えたよ。

 でもそうか、イメージさえできればどんな魔法でも使えるのか。

 あれ? 俺、魔法作りたい放題じゃない?

 俺が魔法を考えて、イメージを[メーティス]が補ってくれる。

 ……滅茶苦茶楽しそうなんだけど!

 そうと決まれば早くレベルアップしてMPを上げたいな。それと魔法は全種類制覇してやる!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る