第6話 新たな眷属
この世界に来てから七日目になる。
あれから訓練は同じことを繰り返している。
魔法はMPが尽きたら休憩を挟んでMP回復を待ち、また魔法を使うというのを行ってきた。
それでもクラスメイト達は使っている武器のスキルはいまだ手に入っていない。魔法のレベルすら上がっていない。
担任は[剣術]と光魔法がLv2になっていた。
さすがは帝王級精霊と契約しただけのことはあるってことかな。
さて、そんな中で俺は異常だろう。
まず新たに獲得したスキルは……[剣術 Lv3]・[無詠唱]・[二刀流]
わかる。[二刀流]は獲得がかなり難しかったはずなのに手に入れている。
理由はとても簡単だった。
[スキル成長促進]
コイツはどうやら持っているスキルだけでなく獲ろうとしているスキルにも効果が及ぶらしい。
ごめんよ悪くいって。
俺のロマンを叶えるすばらしいスキルだったよ!
でだ、俺には[スキル成長促進]があったせいかやたら魔法のレベルが上がっている。
風魔法と光魔法以外全てLv3になっている。
部屋で少しずつ練習してただけでこれだよ……楽しすぎる!
風魔法はLv5、光魔法はLv6と他よりかなりレベルが高い。
何故かって?
訓練では光魔法しか使えないからな自然と他よりレベルが上がる。
風魔法は使っていても気づかれにくいから部屋以外でも練習してたからだろうな。
スキルのレベルが上がり始めて上限が気になりだして[メーティス]に聞いてみたところ、スキルのレベル上限は10らしい。
強さの分け方としてはLv1コツをつかんだ初心者、Lv2中級者、Lv3~4は上級者、Lv5は達人クラス、Lv5以上はどれぐらいの強さとかそんなものではあらわせない領域になるそうだ。しいて言うなら1レベ上がるごとにLv1~Lv5と同じぐらいの差ができるらしい。
光魔法は達人を超えた……人外ってことかな?
因みにステータスのレベル上限は無いそうだ。
これで無限に強くなれるね!
しかしかなりチートな俺にも弱点がある。
それはステータスの低さだ!
いくらスキルが強かろうとステータスが低ければ負ける。
なんたってLv1だしね!
こんなに強いスキルを持ってるLv1なんて居なかっただろうな。
だがそれも今日までだ!
何と今日の訓練はダンジョンで行う!
そのダンジョンは20階層まで敵が弱い上に1階層がかなりの広さであるらしく新兵等の訓練に使っている場所らしい。
ダンジョンの入り口は王城の地下にあった。
そこはサッカーコートぐらいの広さに下に続く階段だけがある部屋だった。
階段を下りた先がダンジョンらしい。
ワクワクしてきた!
「ではこれよりダンジョンでの実戦訓練を始めたいと思う。ダンジョンには2人一組で行ってもらう。当面は好きなものと組んでいいので組めたものからダンジョンに入ってもらう」
……待ってくれ! 困る!
俺が本気でスキルを使えないのもある。
あるんだが、それよりも困ることがある。
知り合いが居ない……
俺は中学の頃に少しいろいろあって、知り合いがほとんど居ない高校に進学した。
だから会話ぐらいはしたことあるが上辺だけの会話だ、そんな俺と組んでくれる奴なんて居るはずがない。
他の奴等はかなり早く誰かと組んでダンジョンに向かって行ってるな。
知り合いばかりって訳でもなさそうなのに何故だ?
? ……あ、そうか! 武器を使った訓練で同じグループの奴等か!
俺は二刀流を教えてくれる人も習得しようとする奴も居なかったからな。
他に誰か居ないのか一人の奴……居た! って田中じゃねーか!
田中の奴メッチャ俺のこと睨んでるんだけど! アイツと組むの?
無理だろう。他には……担任かなり人気だな。
6人ぐらいに囲まれてるよ。それも女子に。
うん、強い人と一緒の方が安全だもんなわかるぜ。
俺のところに来ないのは後ろの二人が睨みを利かせているからかな?
ええ、田中と組むしか無いの?
嫌だよ絶対、アイツ俺のことかなり嫌ってるもん。
頼むよ田中以外の誰か居てくれ…………居た!
田中の方をあまり見ないようにしていたから気づかなかったけど田中の奥に一人で立っている三つ編みでメガネをかけた子。
名前は確か……
でもなんで一人で……は無かった。
近くに一匹居るね。
それも白くかなりでかい猫。
俗に言うホワイトライオンって奴だな。
おそらく橘が契約した精霊か悪魔なんだろう。
えらくカッコイイのと契約できたな。
兎に角組んでくれるとも限らないが話しかけなきゃ始まらないよな。
「たちーーーーー」
「ひっ、すみません! すみません! すみません!」
全然会話にならなかった。
何? 俺ってそんなに怖い? 少しショックなんだけど。
俺、泣いちゃうぞ。
そんなことを考えていると橘と俺の間にホワイトライオンが入ってきた。
何か言いたそうな目で見てる気がするが、俺には動物と喋れる能力は残念ながら無い。
(なあ、二人って動物と話すことってできる?)
(主、申し訳ございません。動物と話すことはさすがにできません)
(そうか。となるとどうするか? 橘は怯えて会話できないし。この何か言いたそうな奴とも会話できないとなると……)
(ご主人様はこのグラキエースレーベと会話したいのですか?)
(何それ! メッチャカッコイイ名前なんだけど)
(目の前に居る精霊の個体名ですよ)
(そのカッコイイ名前の奴が何か言いたそうだからさ、気になったんだ)
(では私が聞いてみましょうか?)
(ルーチェは動物と会話できるの?)
(動物は無理ですが精霊なら会話はできますよ)
(ホント、助かる。お願いしてもいいかな?)
(はい!)
嬉しそうに引き受けてくれたルーチェ。
俺はルーチェ達と念話してるとき橘を見ていた。
橘は今も両手で顔を守るように怯えている。
その手にあるいくつもの火傷が気になったのだ。
もしかしたら俺に怯えているって訳ではないかもしれないな。
(ご主人様、グラキエースは「主を攻撃するのはやめて欲しい」といっています)
「俺はお前の主人を攻撃はしない。それよりもどう言うことか少し説明してくれないか? お前の主人は今会話できる状態じゃないからな」
グラキエースは俯いて少し考えた後説明してくれた。
説明された内容は俺が予想した通りだった。
毎日訓練が終ってから城の人気が無い場所に連れてかれ、数人の女子に魔法の試し撃ちをされていたらしい。
魔法を撃っていた奴等は「最上級精霊と契約できたことを後悔するんだね」とか何とか言っていたらしい。
完全に嫉妬だな。
それを聞いて俺は思うところがあった。
別に俺は博愛主義って訳ではない。
イジメはどれだけ頑張ってもなくなることは無いと思っている人間だ。
人間なんて弱い生き物は結局自身のことしか考えられない。
自身を守るため、傷つかないために他者を見下して生きている。
他にも理由はあるだろうがな。
自分は違うという奴が居るかもしれないがその時点でそいつは他の奴を見下している。
それに他者とは何も人間だけでは無いのだし。
俺自身も自分のことしか考えられないからな。
こういう考え方になったのも中学でのいろいろのせいなんだが今は橘のことが先だな。
「おい橘」
「すみません! すみません! すみません!」
「おい!」
「っ……」
俺は橘の両肩を掴み叫んだ。
顔を守っている両手の間から俺を見ている橘を確認できた。
後ろのクラスメート達がこっちを見てる気がするが今は気にしない。
「俺が近くに居る間はお前のことを守ってやる」
「ほ、ホントに?」
「ああ、近くに居る間は絶対に守ってやる」
「……お願い……します。私を助けてください」
「ああ。任せろ」
相当堪えていたんだろうな。
彼女は泣きながら弱弱しくそう言うと、俺の胸元に頭をやって体重を預けてきた。
俺はそんな彼女を抱きしめた。
すると彼女はさっきより激しく泣き出した。
こういう時は誰か頼れて守ってくれる存在が絶対的に必要なんだ。
俺もここまでは酷くないがいろいろあったからな。
ほんの少しだけだが気持ちはわかる。
要するに同情したのだ。
それにここまで聞いて助けなかったら後で気になって気になって仕方なくなるだだろうしな。
そうなるとめんどくさいから助ける。
ただそれだけのことだ。
後で後悔するぐらいならやってから後悔する……言い言葉だよな。
「急にどうした? 何があった?」
「何でもないですよ」
「何でもないことは無いだろ。急に大声を出してその後橘は泣き出したんだ。何かあったんだろ?」
ホントめんどくさいなこの教師。
今まで橘の事なんて気にしてなかったくせに急に教師ぶってくるんだもんな。
橘の事は俺も気にしてなかったからあまり言えないが、本来俺よりも教師で担任のお前が先に気づくのが普通なんだぜ? 担任ならもう少し周りの奴等を気に掛けてやれよ。
「本当に何でもないですよ。何かあれば羽田先生に言いますから」
「そうか? 何かあったら言えよ、絶対にだぞ!」
「わかってますよ」
その言葉を聞くと嬉しそうに去っていった。
本当に何かあったら相談すると思っているのだろうな。
相談どころか話すらあまりしたくないんだけどな俺は。
橘の件を担任に話したところで解決はしないだろう。
それどころかあんな担任のことだ状況を悪化させる可能性の方が高い。
そんな奴に相談も何も無い。
もちろん俺が解決してもいいが俺の知らないところでまた橘がいじめられる可能性が出てくるからこれも無しだ。
俺は助けるが解決はしないといことだ。
解決は二度と同じことをされない為にも橘自身が行うのが一番いいだろう。
要はいじめてくるクラスメート達より圧倒的に強くなればいい。
そうすれば相手も怖がって手を出せない。
これが一番手っ取り早く楽な方法だ。
クラスメート達より早く強くなるための方法もあるが……それは橘が泣き止んでから提案してみよう。
橘が泣き止んだのはそれから5分ほどしてからだった。
もうこの部屋に残っているのは橘と俺だけだ。
因みに田中は担任と組んだ。
ほとんど担任が無理やり組んだ感じだったが。
兵士の人は気を利かせてダンジョンに入ってくれた。
俺は橘が落ち着くのを見てから俺の考えている解決への道を話した。
最後にクラスメート達より早く強くなる方法の説明も加えて。
それを聞いた橘は即答で「助けてくれるなら何だってします」と言ってきた。
かなり肉体的・精神的に追い詰められていたんだろう。
橘の許可が出たのでスキルを使ってみたところ、難なく成功した。
これで橘は他の勇者より早く強くなれる。
俺が橘に使ったスキルは[眷属化]だ。
これが成功したことで橘は俺の眷属になった。
そして称号の【眷属】はステータスの上昇値を五倍にする。
【勇者】は倍にしかならない。
これによって普通の状態より早く強くなれる。
それどころか1レベ上がっただけで差が生じるほどになった。
今からレベルを上げに行くし丁度良いだろう。
橘のスキルに興味深いものがあったからコピーしてみた為ステータスを確認してみる。
眷属になったことで橘も俺のステータスウィンドウに橘のステータスとホワイトのステータスが表示された。
因みにホワイトとは橘の契約精霊だ。
橘を眷属にしたときホワイト自ら眷族にして欲しいと願い出たのだ。
★
名前 朝野 耀
性別 男
Lv 1
HP 15/15
MP 12/12
攻撃力 10
防御力 15
敏捷性 15
魔力 14
運 13
称号
【異世界人】【勇者】【神(仮)】【神級精霊の契約者】【神級悪魔の契約者】
眷属
『セバス』『ルーチェ』『
▼スキル
[剣術 Lv3][火魔法 Lv3][水魔法 Lv3][氷魔法 Lv3]
[風魔法 Lv5][土魔法 Lv3][雷魔法 Lv3][闇魔法 Lv3]
[光魔法 Lv6][回復魔法 Lv1][結界魔法 Lv1]
▼固有スキル
[勇者][眷属化][咆哮][氷装]
▼エクストラスキル
[精霊魔法 神級][悪魔魔法 神級][無詠唱][二刀流]
▼オリジナルスキル
[完全鑑定][完璧偽装][スキル・魔法コピー][ステータス自乗]
[経験値自乗][メーティス][ステータス略奪][スキル成長促進]
★
★
名前 セバス
性別 男
Lv 1
HP 35/35
MP 38/38
攻撃力 40
防御力 40
敏捷性 39
魔力 38
運 100
称号
【神級悪魔】【眷属】
▼スキル
[火魔法 Lv2][水魔法 Lv2][氷魔法 Lv2][風魔法 Lv2][土魔法 Lv2][雷魔法 Lv2][闇魔法 Lv4]
▼エクストラスキル
[悪魔魔法 神級]
★
★
名前 ルーチェ
性別 女
Lv 1
HP 35/35
MP 40/40
攻撃力 38
防御力 38
敏捷性 40
魔力 40
運 100
称号
【神級精霊】【眷属】
▼スキル
[火魔法 Lv2][水魔法 Lv2][氷魔法 Lv2][風魔法 Lv2][土魔法 Lv2][雷魔法 Lv2][光魔法 Lv4]
▼エクストラスキル
[精霊魔法 神級]
★
★
名前 橘 静香 (たちばな しずか)
性別 女
Lv 1
HP 12/12
MP 15/15
攻撃力 11
防御力 12
敏捷性 14
魔力 15
運 26
称号
【異世界人】【勇者】【最上級精霊の契約者】【眷属】
▼スキル
[風魔法 Lv1][土魔法 Lv1][光魔法 Lv1][回復魔法 Lv1][結界魔法 Lv1]
▼固有スキル
[勇者]
▼エクストラスキル
[精霊魔法 最上級]
★
★
名前 ホワイト
種族 グラキエースレーベ
Lv 1
HP 28/28
MP 29/29
攻撃力 28
防御力 27
敏捷性 30
魔力 29
運 60
称号
【最上級精霊】【眷属】
▼スキル
[火魔法 Lv1][氷魔法 Lv2][雷魔法 Lv1][光魔法 Lv1]
▼固有スキル
[咆哮][氷装]
▼エクストラスキル
[精霊魔法 最上級]
★
【最上級精霊】
最上級精霊に与えられる称号。
ステータスの上昇値を三倍にする。
エクストラスキル[精霊魔法 最上級]を手に入れる。
[咆哮]
自身の声に魔力を乗せることができる
[氷装]
氷による鎧で身を守ることができる
他のスキルは大体字の通りの能力だった。
にしてもセバスとルーチェは俺の知らないところで魔法の練習をしているようでレベルが上がっていた。
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